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手術について

[管理番号:2554]
性別:女性
年齢:45歳
ご質問失礼いたします。
妻(45歳)が先月上旬、市の乳がん検診に引っかかり、専門医で受診したところ、以下のとおりの検査結果を提示されました。
・ステージ2B~3A
・腫瘍の大きさ 7.2cm(CT検査)※MRI検査では5cm大
・リンパ節転移あり N1
・他臓器への転移なし
・サブタイプ Luminal A
 上記結果に伴い、専門医からは以下のとおりの提案を受けました。
①乳房全摘及びリンパ節摘出後、抗がん剤治療
②抗がん剤治療後、乳房全摘もしくは一部摘出及びリンパ節摘出※但し、ホルモン剤は有効であるが抗がん剤の効果は弱いとのことでした。
①については、腫瘍全摘後のため、抗がん剤の効果がわからないとのこと
②については、どの抗がん剤が有効であるか確認できるが、抗がん剤投与により手術は半年後以降になるとのこと。
 妻としては、早く体から悪いものを取りたいので早期に手術を希望ですが、
効果が不明な抗がん剤を術後に投与する意味があるのか疑問です。
もちろん転移の可能性を、少しで抑えるための全身治療の意味合いもあるかと思います。
専門医から標準治療で一定の投与はあるとの説明がありましたが、あまり腑に落ちません。
それでしたら術前に抗がん剤治療を行い、どの抗がん剤が有効か確認した方がいいのではないかと
考えるところですが、抗がん剤の効きが弱いと言われましたので・・・
専門医もどちらを選択しても確率は同じ、どちらでも正解とのことでした。
ちなみに妻は、乳房温存は考えておりません。
上記の状況を踏まえたうえで、先生のご意見をご教示頂けないでしょうか。
ご多忙中、誠に申し訳ありませんが、ご回答よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
このメールをみて、最も強調したい点があります。
○術前術後に適応のある抗がん剤は決まっている。
 非常に大事な点です。
 ここを理解していないと「誤った選択」をしてしまう原因となります。
 
 抗ガン剤は沢山種類があります。
 ①アンスラサイクリン系(EC,AC,FECなど)
 ②タキサン系(PTX,DTX)
 ③タキサン系だけど、術前術後に適応がない薬剤(アブラキサン)
 ④ビノレルビン
 ⑤カペシタビン
 ⑥ベバシズマブ(アバスチン)
 ⑦TS-1
 ⑧エリブリン
  などなど
○術前術後に適応のある抗がん剤は①と②だけなのです。
 だから、「どの抗がん剤が有効かわかる」必要はありますか??
 術前術後に適応の有る抗がん剤である①と②をやるしかないのです。
 (術前に、①と②をやってみて)「効果がないなー、じゃあ、③をやろう④にしようか?」みたいな事はできないのです。
 
 
☆☆☆今回、担当医は「術前に行えば、どの抗がん剤が有効であるか確認できる」と言っていますが、その考え方は『愚の骨頂です』
 「選択の余地がない」以上、術前抗がん剤を行って「効果が解っても」何の意味も無いのです。
 本来は「効果があるか、ないかは不明だけど」術後に「やるべき事をやる」と言う事なのです。
 
「②については、どの抗がん剤が有効であるか確認できる」
⇒全く無意味です。
 冒頭でコメントした通り、「術前術後に投与できる抗がん剤は決まっており」『どの抗がん剤が有効であるか確認しても全く無意味』です。
 ○そのような「どの抗がん剤が有効であるか確認できる」などという「無意味な理由」で術前抗がん剤を行ってはいけません。
 あくまでも術前抗がん剤の目的は「小さくして温存のみ」なのです。
 
「妻としては、早く体から悪いものを取りたいので早期に手術を希望ですが、効果が不明な抗がん剤を術後に投与する意味があるのか疑問です。」
⇒絶対に効果があると解っている治療など、存在しません。
 もともと抗ガン剤は「再発予防のために行う」ものであり、それは「目にみえない」のが当然なのです。
 あくまでも「再発率を10%程度低下させる」というためのものなのです。
 
「もちろん転移の可能性を少しで抑えるための全身治療の意味合いもあるかと思います。」
⇒これはどういう意味でしょうか?
 「これ」こそが「抗がん剤の存在意義そのもの」です。
 「転移の可能性を少しでもおさえるため」に抗がん剤は存在しているのです。(腫瘍を小さくするためではありません)
 
「それでしたら術前に抗がん剤治療を行い、どの抗がん剤が有効か確認した方がいいのではないかと考える」
⇒何故でしょう?
 「どの抗がん剤が有効か確認」したところで、何の意味もありません。
 術前術後に行う抗がん剤は決まっているのです。
 「あっ、この抗ガン剤が効かないから、あれにしよう」とか「この抗ガン剤が効くから、これをもう少しやろう」などは『決してできない』のです。
 
「専門医もどちらを選択しても確率は同じ、どちらでも正解」
⇒抗がん剤は「術前に行っても、術後に行っても」予後は同じなのです。
 
「妻は、乳房温存は考えておりません。」
⇒術前抗がん剤の適応は『全く』ありません。