[管理番号:4101]
性別:女性
年齢:47歳
田澤先生、こんにちは。
初めて相談致します。
日頃から、こちらのQAを読ませて頂いて、大変お世話になっております。
このような場所がある事や、お忙しい中にも関わらず患者の不安を取り除く為の先生の努力に、本当に有り難く感謝しています。
早速ですが、ご相談させて頂きます。
今年10月初めに乳癌がわかってから、手術を決断する際も、こちらで先生のご返答や皆さんの勉強熱心な内容を読みながら、たくさん励まされ、参考にさせて頂きました。
私は若い頃から両乳房に、線維腺腫があり、1年毎の定期検診の中で今回小葉癌がわかりました。
主治医からは、最初から全摘を勧められていましたが、部分切除も可能という事で、私自身も色々情報を得て勉強し納得した上で、右乳房全摘を決断し、11月半ばに手術を終えたところです。
私の主治医も、田澤先生のように心あたたかく人間味があり、質問しやすく、医師としての見解をきっぱり返答して下さる先生なので、信頼して治療に臨み病気に向き合えています。
先日、術後の病理結果が出ましたが、術前(ホルモン陽性10%、HER2陰性だったので、ホルモン療法予定でした)とは違う結果になり、正直戸惑っています。
ポジティブに思えば‥よく先生が書いていらっしゃるように、再発しない限りはトリプルネガテイブの心配はせずに、
私の場合は早期小葉癌でリンパ転移も無く、癌の種類も増殖性も大人しく、トリプルネガテイブなので効果が無い治療を副作用を不安に思いながらするよりも、日常の運動や食後の健康管理に気をつけて、明るく生活したら良いのかなと思うのですが‥
やはり小葉癌なので、対側乳房の発症や腹腔内の転移の確率の高さを思うと、無治療で大丈夫かな?と不安になったりもします。
主治医の先生も色々考え迷っておられる感じで、対側乳房の予防としての治療も考えられるが副作用もある事を考えると、
私の意思を尊重して下さってるような状況で、私も少し考えてみますと治療方針を保留しているところです。
お忙しい中で恐縮ですが、田澤先生のご意見を聞かせて頂けたら、本当に有難いです。
質問は下記の通りです。
よろしくお願いします。
①今後の治療は、定期検診だけで無治療でも大丈夫でしょうか?もし左乳房の予防を考えると、どんな治療がいいでしょうか?
また、定期検診はどんな検診が良いでしょうか。
②小葉癌なので、もし左乳房に新たな癌が発生した場合も同じ様な癌の性質(トリプルネガテイブ)が出来る可能が高いのでしょうか?
③今の時点で、トリプルネガテイブなので、遺伝子の検査をしておいた方が良いのでしょうか?
近親者に乳癌、子宮癌経験者はいません。
検査するとしたら、どんな検査が良いでしょうか。
よろしくお願いします。
(病理組織結果)
Invasive lobular carcinoma with intra-lobular/ductal componemts,
(B,33×20×8mm)
(multiple invasive lesions:9mm,6mm,3mm in maximal diameter),f
,ly0, y0 , Histological grading: Grade1 (2+2+1=5),margin:- ,base:-
,ER:-(0%, Score 0) ,PgR:-(0%, Score 0), HER2:0, Ki-67 LI:<3%),
Non-invasive lobular carcinoma, (C,35×15×5mm, g, ly0, v0, margin:-),
FIbroadenoma, right, mastectomy
Lymph node:
No metastasis, (sentinel lymph node:0/4, その他:0/5),resected
Skin:
No Involvement of carcinoma, CNB皮膚,resected
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1b(9mm), pN0, pStage1
完璧な早期乳癌です。
「やはり小葉癌なので、対側乳房の発症や腹腔内の転移の確率の高さを思うと、無治療で大丈夫かな?と不安になったりもします。」
⇒「対側乳房の予防」という目的で治療すべきではありません。
術後補助療法とは、あくまでも「再発予防目的」で行われるべきものです。
「腹腔内転移」は非常に稀です。
♯ネットででてくるような「少数例(1/1000?) 」を念頭にしてビクビクすることは、「毎日、地球を滅亡させるほどの隕石が降ってくるのでは?」とビクビクして過ごすようなものです。
「対側乳房の予防としての治療も考えられる」
⇒この「考え方」は絶対に誤りです。
「①今後の治療は、定期検診だけで無治療でも大丈夫でしょうか?」
⇒無治療に賛成です。
トリプルネガティブではありますが、非常に大人しく(Ki67=3%というのは核分裂していないようなものです)抗癌剤は無意味と考えるべきです。
「浸潤径が小さい」ことも安心材料の一つです。
「もし左乳房の予防を考えると、どんな治療がいいでしょうか?」
「また、定期検診はどんな検診が良いでしょうか。」
⇒「対側乳癌の予防を目的」とした治療はすべきではありません。
○もしも「対側乳癌を心配」するのであれば、「3カ月毎」に担当医自身に超音波でチェックしてもらうようにしましょう。
「②小葉癌なので、もし左乳房に新たな癌が発生した場合も同じ様な癌の性質(トリプルネガテイブ)が出来る可能が高いのでしょうか?」
⇒サブタイプは不明ですが…
小葉癌ができる可能性はあります。
「③今の時点で、トリプルネガテイブなので、遺伝子の検査をしておいた方が良いのでしょうか?」
⇒不要です。
遺伝性乳癌を疑わせるものではありません。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、こんにちは。
先日は、ご回答頂いて有難うございました。
先生の言葉に、納得したり安心したりして、今後も前向きに病気に向き合っていく気持ちになれて、相談してよかったです。
ところが、昨夕、主治医から病理結果に修正がある旨の電話がきました。
先日の病理結果でトリプルネガディブと説明したが、今回ダブルチェックしたら、ホルモンの陽性反応が60%あったので、今後の治療はホルモン療法の内服と注射を考えているとの事でした。
今週末に先生方でも話し合われて、来週初めの術後1ヶ月検診で、改めて説明されるそうです。
病理結果が変更になった理由を問うと、病理がバタバタしていた事、いつもダブルチェックしていたので、再確認したらしっかり色が染まっていたとのことでした。
病理の説明後にホルモン陽性反応が0%から60%に変わってしまい、正直不信感が出てきてしまいました。
それから、前回の質問の際は乳癌の事で頭がいっぱいで、持病がある事を田澤先生に伝えていませんでしたが‥
私は12年前に出産後、関節リウマチを発病しました。
乳癌とは別の整形外科病院で診てもらっていますが、幸い5年程前から症状もほとんど無く、検査結果も標準値で、週一回メサトトレキサート錠2mgと、フォリアミン錠5mg?を服用している状態です。
昨朝(病理の結果修正の連絡がある前)リウマチの定期検診の際に、手術や病理の報告をしたところ、メサトトレキサートは抗がん剤でもあるから、それを服用していたらそれだけでもいいのかも?と言われました。
勿論、抗がん剤は何種類か合わせて服用したりするから、他の抗がん剤を使う事になっても大丈夫とも言われました。
そこで、病理修正になったので再度、田澤先生のご意見をお聞きしたく相談します。
①田澤先生だったら、私の場合だと今後どのような治療をされますか?
主治医からは、ホルモン療法をするのとしないのでは、今後がすごく変わってくると言われました。
術前の予定では、5年~10年の治療予定でした。
もう無治療は考えられないでしょうか?
②リウマトレックスとホルモン療法を併用治療した際、注意する副作用がありますか?
③閉経前なのですが、ホルモン療法をしていたら、いつ閉経したかわからない気がします。
閉経後の治療薬が変わる事もあるようですが、どのタイミングで変えるのでしょうか?
④今回みたいに、今後も病理の結果は変わる事はあるのでしょうか?
0%から60%になるのは極端な気がするのですが‥
色々前向きに思えていたのですが、不信感も出てきて(術前も、組織や細胞の病理結果の説明後に、良性かもと言われ一喜一憂した事があります)今後の治療が不安になっています。
勉強不足で、トンチンカンな質問してるかもしれません。
お忙しい中、何度も申し訳ありませんが、再度先生のご回答、よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
もともと「Ki-67 LI:<3%」だったのですから、トリプルネガティブよりはルミナールタイプの方がしっくりくることは間違いありません。
(典型的な大人しいタイプの小葉癌だということです)
「①田澤先生だったら、私の場合だと今後どのような治療をされますか?」
⇒ホルモン療法(この場合は当然、タモキシフェン単独)を勧めます。(標準療法です)
「術前の予定では、5年~10年の治療予定でした。もう無治療は考えられないでしょうか?」
⇒10年は不要です。(タモキシフェンの10年投与の優位性が証明されたからと言っても、低リスクでは5年とすべきでしょう)
ただし、閉経したらアロマターゼインヒビターで5年間(タモキシフェンの投与期間とは無関係に)とすべきです。
「②リウマトレックスとホルモン療法を併用治療した際、注意する副作用がありますか?」
⇒ありません。
「③閉経前なのですが、ホルモン療法をしていたら、いつ閉経したかわからない気がします。
閉経後の治療薬が変わる事もあるようですが、どのタイミングで変えるのでしょうか?」
⇒(LH-RHagonistとは異なり)タモキシフェンには「直接卵巣に働きかけて、生理を止める作用」はありません。
最終月経から1年経過した時点で血中エストラジオール濃度を測定して確認します。
「④今回みたいに、今後も病理の結果は変わる事はあるのでしょうか?
0%から60%になるのは極端な気がするのですが‥」
⇒ありえません。
○やるべき治療をすべきです。
物事はシンプルに考えましょう。