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浸潤性乳管癌の治療について

[管理番号:7380]
性別:女性
年齢:57歳
病名:左浸潤性乳管癌
症状:

はじめまして、質問させていただきます。

3月に浸潤性乳管癌と診断されました。

ER 強陽性
pgr 強陽性
Her2 2+ FISH法により陽性
ki67 50%
グレード3
大きさ 2.5cm
リンパ(-) ステージ2

4月より術前抗がん剤をはじめています。

weeklyパクリタキセル+ハーセプチンを12回の予定で、今は8回終了しています。
その後は、ACを4回予定しています。
術前抗がん剤をしていますが、全摘します。
全摘については、私も同意しております。
田澤先生のQ &Aを拝見してますと、術前抗がん剤は全摘する私にはどうなのかと疑問がでてきました。
それから、TCの方がACよりも効果があるように理解してますが、どうなのでしょうか?たまたま抗がん剤治療中に化学療法室の薬剤師に質問したところ、この病院ではweeklyパクリタキセル+ハーセプチンで治療した場合は次はACとなっているとききました。
治療に疑問がでてきたので、先生のご意見をお願いします。
もし先生の病院に移る場合はどのタイミングがいいでしょうか?

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

事実を整理してみましょう。
抗がん剤の適応は下記3原則となりますが、「術前に行う根拠」は下記2だけです。
(1も3も術前術後どちらでもいいのです)
1.抗がん剤は予後を改善させるために行う(術前に行っても、術後に行っても効果は同じ)
2.抗がん剤を術前に行うと(結果として)腫瘍が小さくなり「温存ができる可能性」がある。
3.HER2が陽性の場合の抗がん剤(trastuzumabと抗がん剤を組み合わせた抗HER2療法となります)は、効果が高いので安心して行える。

つまり
質問者は(HER2陽性なので)上記1及び3を満たしているので抗がん剤(この場合には抗HER2療法)をすること自体は正しい。
しかし、「全摘を希望」しているわけだから2を満たしていない。(つまり「術前に行う理由がない」のです)

★メール内容から推測すると、「何故、術前(抗がん剤)なのか?」を説明されることなく、安易に(上記1及び3を満たすからと言う理由で)術前抗がん剤を(当然のように)行われているようです。(1及び3は術前に行う根拠にはならない)

「Q &Aを拝見してますと、術前抗がん剤は全摘する私にはどうなのかと疑問」
→その通り。(上記参照)

「それから、TCの方がACよりも効果があるように理解してますが、どうなのでしょうか?」
→これは質問者の勘違いです。(QandAでも多いので「あるあるQ」に本日挙げました)
 つまりTC>ACという理解は正しいのですが、質問者が提案されている「weeklyPTX→AC」です。これは所謂「アンスラサイクリン+タキサン」であり、最強レジメンです。
 
 認識として アンスラサイクリン+タキサン > TC(タキサン単独レジメン)
 > AC(アンスラサイクリン単独レジメン)
 ♯ アンスラサイクリン+タキサン>TCは(直接対決が無いので)証明されてはいません。
   実際に証明されているのは①アンスラサイクリン+タキサン > AC(アンスラサイクリン単独)
               ②TC(タキサン単独) > AC(アンスラサイクリン単独)

   ただ、常識的に考えて(タキサン単独である)TCよりも(それにアンスラサイクリンを加えた)「アンスラサイクリン+タキサン」の方が強力と考えますよね?
   だから、あくまでもgold standardである「最強レジメン」の称号は「アンスラサイクリン+タキサン」となるのです。

 〇術前抗がん剤では、あくまでも「最強レジメン」である「アンスラサイクリン+タキサン」となります。(TCは術後補助療法でのみ行われます)
   術前抗がん剤は(腫瘍を残したまま行う=リスクのある治療なので)「最強レジメン」しか適応がないのです。

   

「もし先生の病院に移る場合はどのタイミングがいいでしょうか?」
→いつでも構いません。ご希望の場合には秘書メールを

 術前抗がん剤はいつ終了してもいいのです。(残りは「術後」に行えばいいのです)
 もう一つ言うと、質問者の場合には本来「アンスラサイクリンは必要なのか?」という問題があります。

★術前抗がん剤の場合は(上記で述べたように)最強レジメンの一択ですが、術後の場合には「非アンスラサイクリンレジメン=タキサン単独レジメン=(質問者の場合には)wPTX+HER(AC無)」も選択肢となるのです。

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