[管理番号:4875]
性別:女性
年齢:69歳
田澤先生
先日、69さい母が乳がんと診断され、先生
のQ&Aにたどり着き日々勉強させていただいております。
このような場をいただき、
感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます。
まだまだ、わからないことばかりですが、ご質問させていただきます。
母の病状
【組織診】
診断 右乳房浸潤性乳管がん
硬がん
所見 右左乳腺腫がんからの生検組織、11㎜長まで3個線維性間質のなかに小胞巣状または索状公園をもって浸潤するCが見られる。
Nuclear atyopical score2 +
Nuclear mitotic score1 =
Gradel1(3)
malignancy!!
追加
診断 Additional report :
Breast carcinoma,ER(-)&PgR(-1)
HER2(score0) 【negative】
所見 ER:陰性
PgR:陰性
HER2タンパク過剰発現の
判定基準
標本の腫瘍細胞の中でHER2陽性細胞が見られないscore0
本条例:score0
【細胞診】
所見 成分量 赤血球(2+)
リンパ球(2+)
好中球(±)
組織球(±)
臨床所見 上記診断 液かLN転移疑い。
FNA検査です。
精査お願いします。
以来材料
乳房 液か 右液か
※細胞診の詳しいもので結果を、得られていない。
今のところリンパには転移はなさそうだが、手術してみないとわからない。
(センチネル)
先生にお聞きしたいこと。
1 サブタイプはトリプルネガティブでしょうか。
また、ステージでいうとどの値でしょうか。
2 まずは温存手術、センチネルセリンパ節生検をし、一回な部分切除で乳房浸潤度合いが広ければ、術中二回目の切除をし、術後病理検査で二回目の切除部分に更に浸潤が見られれば再手術。
センチネルリンパ節生検でリンパに転移が見られれば、カクセイをしドレーンを入れる。
リンパに転移ありなしにかかわらず、術後二週間は何も処置はなく、二週間後から放射線治療開始。
+の抗がん剤は年齢のこともあり、ご家族の意思のもと決めていく。
今回全摘ではなく、部分切除であることに不安であり、手術前から外来担当医の「再発してからまた考えていく」というご意見に不安があります。
浸潤がんで部分切除でも、根治の可能性がは十分あるのでしょうか。
3 69さいと高齢ですが、トリプルネガティブですし、抗がん剤はしたほうが、良いでしょうか。
また、すれとなればどのタイプの抗がん剤の使用が望ましいでしょうか。
4 田澤先生でしたら、母の病状からどんな治療をなさってくださいますでしょうか。
担当医は2011年大学卒業の助手先生でして、手術は3人で行うそうです。
執刀医がわからないままですし、不安ばかりです。
先生のご意見を伺えるとこころ強いです。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「1 サブタイプはトリプルネガティブでしょうか。」
⇒その通りです。
「また、ステージでいうとどの値でしょうか。」
⇒腫瘍径の記載が無いので不明です。
針生検のレポートの中で「11mm長」という記載がありますが、あくまでも「標本の長さ」なので「腫瘍径を示している訳ではない」ことにご注意を。
「まずは温存手術」「今回全摘ではなく、部分切除であることに不安」
⇒それであれば、「最初から、全摘」としてもいいでしょう。
術式の選択に、きちんと「患者さんご自身及び、ご家族の意思」が反映されていないのですか??
「乳房温存」はあくまでも患者さんご本人の「できれば、乳房を残したい」という希望で成り立つ術式です。(決して、若い執刀医にとっては全摘は荷が重く、できれば温存手術にしたいという都合で決めるべきではありません)
「浸潤がんで部分切除でも、根治の可能性がは十分あるのでしょうか。」
⇒当然です。
術式に「浸潤癌も非浸潤癌も」ありません。
物事はシンプルに考えましょう。
術式は(進行度とは全く無関係に)、純粋に「癌の拡がり診断」を基に決めます。
つまり「拡がりが広範囲=安全に部分切除しようとすると整容性が保てない⇒全摘しか選択肢が無い」となります。(これは浸潤癌でも非浸潤癌でも全く同様です)
♯ただし、逆に「拡がりが狭い=安全に部分切除できそう」となったとしても「できれば乳房を残したい」という感情よりも「術後照射は避けたい」とか「万が一の乳房内再発は避けたい」という気持ちの方が強い場合には「全摘で何ら問題ない」のです。
「3 69さいと高齢ですが、トリプルネガティブですし、抗がん剤はしたほうが、良いでしょうか。」
⇒これは微妙ですね。
70歳以上では術後化学療法の有効性は証明されていないので、70歳なら迷いませんが…
実際は、病理結果をみてから判断します。(ステージ1なら勧めないでしょう)
「また、すれとなればどのタイプの抗がん剤の使用が望ましいでしょうか。」
⇒やるとすればTCですね。(トリプルネガティブの標準化学療法はアンスラ+タキサンですが、さすがにそれは選択しません)
「4 田澤先生でしたら、母の病状からどんな治療をなさってくださいますでしょうか。」
⇒勿論「手術先行」です。
術式は(上記でコメントしたように)拡がり診断で決めます。
拡がりが狭ければ「温存術+術後照射」となりますし、広ければ(無理せず)「全摘術(この場合術後照射なし)」とします。
勿論センチネルリンパ節生検を行いますが、追加郭清したからと言ってもドレーンは入れません。(不要です)
術後の全身療法は「化学療法をすべきか?」が焦点となりますが、「術後病理を見て(早期なら、無治療)」となります。
「担当医は2011年大学卒業の助手先生でして、手術は3人で行うそうです。執刀医がわからないままですし、不安ばかり」
⇒どこの世界でもそうですが、
最初から「上手い」天才は存在しません。
だから、必ず若い頃は(ある意味)患者さんに迷惑をかけながら「成長」させてもらうわけです。(私自身も卒後6年の時期には大学病院にいましたが、それは酷い腕前でした)
☆ ○研とか○んセンター、大学病院などは「大病院好き」の患者さんから「素敵な大きな病院で治療をしてもらっている」という(ブランド的)安心感?から支持されているわけですが、それらの人達は(その満足の代償として)「若い医師を育てている」わけです。
(私自身を含めて)あらゆる医師は、その道を通っているので、それらの「大病院志向の患者さん達」に感謝の念に堪えません。(この人達がいなくなると、医師の教育は崩壊してしまいます)
ただし、「大病院志向がない」方に、それらの病院を勧めることは(倫理的に)私には決してできないことなのです。
質問者様から 【質問2】
田澤篤先生
前回4875 乳がん
お世話になります。
先日もお忙しい中、メールに目を通していただきありがとうございました。
先生からのご返答をただいてからすぐに、
母の右乳房部分切除、センチネルリンパ節
生検手術が行われました。
診断
浸潤性乳管がん(充完せん管がん)
サイズ
1.7×1.7×1.3cm
場所
乳房上外側
Grade2 顔つき1~3うち2
リンパ侵襲-
血管侵襲-
脂肪内浸潤のみ+
断端(がんが取りきれているか)
はみ出し-
取りきれています。
乳がんのタイプ
女性ホルモンにも関係なし
分子標的薬も使わない
トリプルネガティブ乳がん
→抗がん剤治療推奨(標準治療)
以上が術後いただいた結果です。
前回のメールでは、今回の乳がんに対してのみご質問させていただきましたが、
母は2015年8月に大腸がんステージ1にて、大腸がん腹腔鏡手術をしております。
術後は無治療で定期検診をしておりました。
今回の乳がんは遠隔転移ではないそうです。
先生にご質問させていただきます。
1.術後の結果もトリプルネガティブタイプであるため、担当医からは、70歳以上でも、十分に効果が認められているので、69歳であっても標準治療の抗がん剤治療をすすめられています。。
アンスラ+タキサンを量を調節しながら治療をすすめていくとのこと。
その後、放射線治療。
しかし、抗がん剤治療の副作用や骨への影響も大きいため放射線のみの選択も本人家族の意向で可能と言われています。
田澤先生でしたら、術後治療はどのようになさいますでしょうか。
2.抗がん剤治療をした時としなかった時では、再発率はした時が10%で、しなかった時が20%ということですが、田澤先生の見解も同じでしょうか。
トリプルネガティブタイプの乳がん再発は、予後があまり良くないものなのでしょうか。
3.術後、右乳房が少し腫れがあり、水がたまっているのですが時間がたてば水はひいていくので、心配ないとのこと。
傷口は少しただれがあり現在抗生物質を処方されています。
この点は、心配ないことなのでしょうか。
4.放射線治療は、従来の放射線治療より、
トモセラピーが導入されているのでそちらのほうが効果がより期待されるのでしょうか。
5.母の仕事の関係上、まわりが喫煙のある場に身をおかなくてはならないのですが、
ふくりゅう煙が大変気になります。
やはり、避けたほうが今後のためにもよいのでしょうか。
田澤先生には、お会いしたことがないのですが、こちらで勉強させていただくと心が落ちつきます。
本当にありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
pT1c(17mm), pN0
トリプルネガティブなので前回の回答通り
(以下、前回のコピー)
70歳以上では術後化学療法の有効性は証明されていないので、70歳なら迷いませんが…
実際は、病理結果をみてから判断します。(ステージ1なら勧めないでしょう)
「また、すれとなればどのタイプの抗がん剤の使用が望ましいでしょうか。」
⇒やるとすればTCですね。(トリプルネガティブの標準化学療法はアンスラ+タキサンですが、さすがにそれは選択しません)
「田澤先生でしたら、術後治療はどのようになさいますでしょうか。」
⇒前回の回答どおりです。
以下前回の抜粋
『実際は、病理結果をみてから判断します。(ステージ1なら勧めないでしょう)』
「2.抗がん剤治療をした時としなかった時では、再発率はした時が10%で、しなかった時が20%ということですが、田澤先生の見解も同じでしょうか。」
⇒それ程の「上乗せ」はありません。
私の感覚では
無治療 再発率13%
抗癌剤 再発率10%(せいぜい3%程度でしょう)
「トリプルネガティブタイプの乳がん再発は、予後があまり良くないものなのでしょうか。」
⇒再発後の治療が限られるということです。
「この点は、心配ないことなのでしょうか。」
⇒それは執刀医でないとわからないことです。
ただ、乳癌の傷は感染することは極めて稀なので心配ないとは思います。
「4.放射線治療は、従来の放射線治療より、トモセラピーが導入されているのでそちらのほうが効果がより期待されるのでしょうか。」
⇒おそらく、通常の温存乳房照射では効果には変化なし、有害事象の点で有利(放射線肺臓炎の頻度は低いと実感しています)
「5.母の仕事の関係上、まわりが喫煙のある場に身をおかなくてはならないのですが、ふくりゅう煙が大変気になります。やはり、避けたほうが今後のためにもよいのでしょうか。」
⇒それにこしたことはありません(健康に)