[管理番号:4538]
性別:女性
年齢:35歳
いつも真摯でご丁寧なご意見を拝読させていただいております。
35歳閉経前、浸潤乳癌 硬がん、左乳房全摘術施行後3年間ホルモン療法中に左鎖骨上リンパ節への転移を認めた若年性乳がん患者です(ステージⅢC)。
質問は、鎖骨上リンパ節、及び腋窩リンパ節への放射線治療について臨床上の効果(意義)について、ご教授賜りたく存じます。
(患者はリンパ節への放射線治療はリンパ節郭清と同等であると考えており、トモセラピーによる照射を希望しています)。
なお、セカンドオピニオンでは、以下を提案されています。
① 延命目的とし、AC等の化学療法⇒ホルモン療法
② 患者が若いのであくまで領域再発と考え、根治を目的とした化学療法後効果があれば⇒リンパ節郭清⇒ホルモン療法(50%確率)
本人は、化学療法とリンパ節郭清は望んでおらず、ホルモン療法+放射線治療を考えていますが、このような鎖骨上リンパ節転移再発患者に対しての放射線治療が効果があるのか、
そのメリット、デメリットについてご教授御願い致します。
以下経緯となります。
・ 2014年2月頃 確定診断
・Type of Breast: 浸潤乳癌 硬がん
・Size:左乳房全体に径約7mm大 多数
・Hormonal status:ER(+),PR(+),Her2(-)⇒ ルミナルA
・核グレード:2
・Ki67値:15%
・センチネルリンパ節生検結果 転移有:1個/2個中
・2014年3月左乳房全摘手術:術後放射線治療なし。
腋窩
リンパ節郭清なし。
術後治療内容:タモキシフェン(ノルバテックスTab20㎎)~現在継続、
リュープリン3カ月製剤を2016年3月まで併用。
2015年:
乳房再建術:
・2017年2月:左腋下リンパ節、切除生検にて転移を確認、鎖骨上リンパ節転移有、CT画像(頸部~腰椎付近)および超音波検査実施にて他臓器への遠隔転移なし(肺、肝、骨)、胸骨傍リンパ節転移なし、脳MRI未実施。
ER:Score3b、PgR:Score 0、Her2:陰性。
(細胞性質変化が認められた)
・ 担当医師は、3年前の全摘時期より腫瘍の性質に少し変化がみられ、抗がん剤が効きにくい印象を持っている、また、
他への浸潤への可能性も否定できず、今後の治療方針について化学療法をすべきか、局所再発なので手術を選択すできか判断に迷っています。
化学療法ならAC又はCEFを考えており、鎖骨上リンパ節にはRT想定しています。
若年性乳がんは
進行が速いと聞いており、手術なら、1カ月以内での実施を
勧められており、早急に方針を決める必要がありますが、悩んでいます。
【質問】:
Q-1)鎖骨上リンパ節再発でも、放射線治療は臨床上効果(転移予防)がありますでしょうか?
Q-2)照射は範囲は、鎖骨上リンパ節と腋窩リンパ節は全て(レベルⅠ~Ⅲ)が良いでしょうか?
大変お忙しいとは存じますが、なにとぞご教授賜りますようよろしくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
問題点
1.そもそも手術時に「センチネルリンパ節転移陽性」で「腋窩郭清を省略」していたことが「腋窩+鎖骨下再発」の要因である。
2.その後も3カ月毎にホルモン療法で通院していたわけだから、「その際に、きちんと局所を超音波」していれば、「いきなりの腋窩~鎖骨下の再発」とはならなかったでしょう。
治療の原則
1.腋窩はきちんと郭清すべき(放射線で代用は勧めません)♯放射線照射では「効果が確実ではない」ことと、(きちんとした手術より)むしろ「患肢浮腫などのリスク」は高いと思います。
2.鎖骨上リンパ節は(腋窩郭清の後に)照射(この場合にはトモセラピーがいいでしょう)すべき
3.抗癌剤は(やるとしても)「局所療法(手術や放射線照射)の後」であり、あくまでも「局所療法が重要」である。
「Q-1)鎖骨上リンパ節再発でも、放射線治療は臨床上効果(転移予防)がありますでしょうか?」
⇒効果はあります。
ただし「腋窩は手術すべき」です。
「Q-2)照射は範囲は、鎖骨上リンパ節と腋窩リンパ節は全て(レベルⅠ~Ⅲ)が良いでしょうか?」
⇒腋窩は手術すべき
腋窩郭清+鎖骨上照射⇒(そののち)ご本人と相談して「化学療法をすべきか?」となります。
♯私個人としては、ある一定期間(この際は効果と副作用のバランスが最大であるbevacizumab + paclitaxel 3か月)を選択します。
質問者様から 【質問2 】
胸水貯留について
性別:女性
年齢:38歳
病名:乳がん
症状:胸水貯留、体重減少、悪液質様、呼吸苦。食欲不振
投稿日:2020年1月28日
いつも拝読させていただいております。
3年前に娘の左鎖骨上リンパ節転移巣に対す治療では、ご教授頂き誠にありがとうございました。
本人の希望で抗がん剤治療を行わず、その後、貴院で
のトモセラピー治療や、ホルモン療法、温熱療法等を実施しておりましたが、昨年11月、肝臓に3か所(腫瘍径が20mm~30㎜)の転移が確認されました。
昨年末から急激に状態が悪化し、微熱と咳が続き、今月6日に胸部レントゲンで左肺に胸水貯留が確認されました。
今年1月20日の画像診断で
は肺の60-70%が真っ白な状況となっており、呼吸が困難となり時々酸素吸入を行い在宅治療を受けております。
食事も十分取れない為体重が減少し、体力も急激に低下してきており、悪液質の状態のように見えます。
何とか胸水を抜いて体力を維持向上を図り少しでも延命させてやりたいと強く望んでおります。
在宅治療の医師に胸水を抜くことをお願いしていますが、急に胸水を抜くと状況を悪化させることになるとのことで、現在、漢方薬や注射で胸水を減らす治療が行われていますが、状況改善には至っていません。
栄養補給の点滴もも行われておらず、このままでは体力もなくなり、ますます悪液質状態となり生命を脅かす状況に陥ってしまうことを危惧しています。
ご教授頂きたいのは、
質問1:このような状況で延命処置としてどのような治療方法がございますでしょうか?
質問2:本当に胸水抜くことは危険なのでしょうか?
質問3:在宅療法では治療も限定されるため、入院治療をさせたいのですが、入院条件に制限等はありますでしょうか?
緊急対応が必要と考えておりますので、何卒ご教授頂けますようお願い申し上上げます。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「左鎖骨上リンパ節転移巣に対す治療では、ご教授頂き誠にありがとうございました。」
→4538を見返してみましたが…
(前回の私の回答)
腋窩は手術すべき
腋窩郭清+鎖骨上照射⇒(そののち)ご本人と相談して「化学療法をすべきか?」となります。
♯私個人としては、ある一定期間(この際は効果と副作用のバランスが最大であるbevacizumab + paclitaxel 3か月)を選択します。
上記は選択されなかったのですね。
「質問1:このような状況で延命処置としてどのような治療方法がございますでしょうか? 」
→現在の状況が化学療法を受け入れられる状態なのか不明なので、回答困難です。
そもそもご自分の意志で化学療法を選択されずにきているようなので、今更受け入れられないのかもしれないし、(そもそも)全身状態がそれを許す状況なのかも判断つきかねます。
主治医と相談しましょう。
「質問2:本当に胸水抜くことは危険なのでしょうか?」
→ゆっくり抜けば大丈夫なように思いますが、「原因に対する治療(癌性胸膜炎)」をしない限りは「見合うだけの効果がない(抜いても、すぐ貯留してしまう)」ことも予想されます。
「質問3:在宅療法では治療も限定されるため、入院治療をさせたいのですが、入院条件に制限等はありますでしょうか?」
→どういう経緯で在宅診療になっているのかが不明なので回答困難です。
主治医と相談して受け入れられる治療の選択肢として(在宅診療を)選択されたのだと思います。
入院診療が必要だと在宅診療医が判断すれば、その相談となると思います