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術前化学療法を進められました。

[管理番号:2347]
性別:女性
年齢:45歳
こんにちは。
よろしくお願いいたします。
先日の○曜日,「右乳癌」(浸潤性乳管癌)と診断されたものです。
まだ、ホルモン感受性、HER2蛋白の発現の有無については結果がでておらず最終治療方針はお話し頂いてはおりません。
右乳房下側に2cm大の腫瘍があり、早期の乳癌だといわれました。
コロッとしたような癌なので転移はしにくいともいわれました。
今のところ、乳房温存手術で術前化学療法を行った後、手術。
術後、治療を決定するやり方がいいのではないかと思われると言われました。
私は抗がん剤治療はなるべく避けたいと思っているのですが、乳房全切除の手術を行う場合も術前化学療法は必要になるのでしょうか?
術前化学療法を避けられたとしても、術後抗がん剤治療は必ず必要になってくるものなのでしょうか。
今のところは、リンパに転移はみられません。
抗がん剤治療治療が恐怖で不安でいっぱいです。
まだ手元にデータがあまりなく申し訳ないのですがアドバイスを頂けたらと思っています。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
術前化学療法を勧められている様ですが私には「全く賛成できない」診療です。
術前化学療法の目的は「小さくして温存」です。
「2cmの腫瘍」であれば、(当然)そのまま「温存可能」なのです。
「2cm大の腫瘍があり、早期の乳癌」
⇒これで「術前化学療法を勧める」意図が不明です。
 
「今のところ、乳房温存手術で術前化学療法を行った後、手術。」
⇒「術前化学療法を勧める根拠が不明」です。
 
「私は抗がん剤治療はなるべく避けたいと思っている」
⇒それであれば、尚の事「術前化学療法を勧める」のが『大変、奇異』に感じます。
 
「乳房全切除の手術を行う場合も術前化学療法は必要になるのでしょうか?」
⇒不要です。
 それどころか、「2cmであれば、乳房温存でも術前化学療法は不要」です。
 
「術前化学療法を避けられたとしても、術後抗がん剤治療は必ず必要になってくるものなのでしょうか。」
⇒「必ず」ではありません。
 術後の治療は「サブタイプ」によって決まります。(この結果はでていないようですね)
 下記に示すサブタイプの内「ルミナールAであれば抗がん剤は不要」となります。
 
 ◎サブタイプとは?
組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
 エストロゲンレセプターの発現(ER)
 プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
 HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
 ⇒これらの組み合わせで
 ●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
 ♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
 ● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
 ●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
 ●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
 ※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
 ○サブタイプがどうあれ、「術前化学療法は不要」であり、手術(この場合には温存でも全切除でも両方可能なようです)後に(サブタイプに応じた)治療をすべきです。