[管理番号:5518]
性別:女性
年齢:34歳
田澤先生、初めまして。
東北在住で、10月(下旬)日に○○病院にて手術を控えている者です。
術式は、前回のMRIの結果で2個目のしこりらしきものが見つかり、エコーでやや確認されたので針生検してその結果で温存か全摘が次回の診察で決まります。
術前の診断では、ホルモン陽性、HER2陰性(+1)、しこりなら大きさは最初に見つかったものは7㎜(最初のクリニックでは9㎜)とカルテで見えました。
ステージ1の可能性が充分高いと言われました。
田澤先生に質問が3つほどあります。
①万が一、2個目のしこりが良性だった場合は温存手術を勧められました。
再発率を前回見せられたのですが全摘と大きく違いました。
この場合、再発率を下げたいが為に全摘を選択する事は可能なのでしょうか。
病院によって違いはあるのでしょうか?やはり、温存手術だと再発率が気になります。
②しこりを見つけて受診した最初のクリニックでは、ホルモン治療は若いから10年やった方が良いだろうと言われましたが、○○病院の主治医には5年と前回言われました。
この違いも、病院や先生の方針の違いなのでしょうか?5年でホルモン治療は終えて効果はあるのでしょうか?
③手術まで日にちがあるので、子ども達と温泉にでも行こうかと考えていたのですが、よく調べると禁忌症に悪性腫瘍とありました。
まだ術前だと腫瘍があるので控えるべきなのでしょうか?
ネットで検索すると、
血流が良くなるから腫瘍が活発になるとか、色々書いておりまして、でも運動はがん患者にとても良いと言われておりますので身体温まるのでは‥と思ってしまったり‥治療等と関係なくくだらない質問で申し訳ありません。
田澤先生はお忙しい中、いつも的確な回答をされていて不安になったらこちらを見ておりました。
宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えなくてはいけません。
最も重要なのは「局所」と「全身」を明確にわけることです。
治療もそうですし、「再発率」も同様です。
一般に「再発率」というと(全身臓器への)「遠隔転移再発率」のことを言います。
これは、局所療法として「温存+放射線」を選択しても「全摘」を選択しても全く同一です。
これとは全く別に「局所(温存乳房や腋窩リンパ節)再発率」というものがあります。
これは、温存手術では(術後照射で1/3になるとはいえ)10年で5%程度はあります。それに対して全摘では「ほぼゼロ」となります。(乳腺が無いのだから乳房内再発が起こりようがないからです)
☆お解りでしょうか??
術式選択は「局所再発率」には明らかな違いがあるが、所謂「再発率(遠隔転移再発率)」は同一なのです。
「再発率を下げたいが為に全摘を選択する事は可能なのでしょうか。」
⇒冒頭のコメントを理解していただけましたか??
ここでいう「再発率」が「局所再発率」なら、正しいが、所謂「再発率(遠隔転移再発率)」のことだとしたら、誤りです。
●しつこいようですが、 全摘をすれば「局所再発率」は下げられる(ほぼゼロとできる)が、「遠隔転移再発率」は温存手術と全く変わりません。
「最初のクリニックでは、ホルモン治療は若いから10年やった方が良いだろうと言われましたが、公済病院の主治医には5年と前回言われました。」
⇒「Long Term」試験の結果を受けてタモキシフェンの(5年投与に対して)10年投与の有用性が証明されました。
ただ、あくまでも現時点での標準治療は「ホルモン療法は5年」なのです。
「医療財政」の問題もあるし、全員に勧めるわけにはいかないでしょう。(5年経ってから考えましょう)
「この違いも、病院や先生の方針の違いなのでしょうか?」
⇒上記通りです。
どちらも間違いではありませんが、そんな先の話は「5年後に」再度考えればいいのです。(それまでにガイドラインも整備されるでしょう)
「5年でホルモン治療は終えて効果はあるのでしょうか?」
⇒勿論です。(だから、標準治療なのです)
ただ、更に5年継続すると(5年で中止した群に比べて)更に効果があったということなのです(Long-term試験 無治療に対し、5年投与で9%低減、10年投与で12%低減)
「まだ術前だと腫瘍があるので控えるべきなのでしょうか?」
⇒無関係です。
放射線照射を開始すると、暫くは入れなくなるので今のうち入るといいでしょう。
(マッサージなどはしてはいけません)