Site Overlay

手術後の補助療法について HER2陽性

[管理番号:2678]
性別:女性
年齢:42歳
田澤先生
病気がわかってから、毎日拝見し勉強させていただいたいました。
今月初め、左乳房全摘術を終え、先日病理結果がわかりました。
乳頭腺管ガン(多発)
①1×0.9cm
②0.5×0.4cm
③0.4×0.4cm(DCIS)
①胞巣状 癒合腺管 櫛状構造の浸潤性増殖からなり、
papilltubular carcinomaに相当するinvasive
ductal carcinomaの所見で、
波及度 g(+) f(+) EIC(-)
リンパ管侵襲(-) 静脈侵襲(-)
②不正な腺管状の浸潤性増殖からなり、papilltubular
carcinomaに相当するinvasive ductal carcinomaの所見で、
波及度 g(+) EIC(-)
リンパ侵襲(-) 静脈侵襲(-)
リンパ節には、sn(-) 0/2 と転移認めず
グレード分類
①3点+3点 Grade3
②3点+2点 Grade3
①のみでしか測定はしていませんが、
ER (97%)
PgR (65%)
HER2 (3+)
Ki-67 74.69%
以上が病理結果です。
ルミナールB HAR2陽性タイプと思いますが、
主治医からは、抗がん剤をするなら、
TC×4回 その後ハーセプチン×1年間 タモキシフェン5~
7年のスケジュールとのことです。
ステージ1で、癌も取り切れているので、やらなくても良いか・・・
ただ、Grade3、Ki-67も高値 年齢も若いからやったほうが良いか・・・
という感じで、自分で決めなくてはなりません。
私の家系は 祖母(40歳) 母(70歳)時にそれぞれ乳がんになっています。
これらのことから、先生のご意見をお聞かせいただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
①先生であれば化学療法はおこないますか?
するとすれば同じくTC療法でしょうか?
また、行った上での上乗せ効果はどれくらいになりますか?
②先生から見て、予後、再発転移 生存率などどう感じられますか。
③一つの腫瘍からしかER・PgRやHER2を測定していないみたいですが、測定していない腫瘍のが別のタイプで、ホルモン剤の効果ないということは無いのでしょうか。
④今回、③(DCIS)の腫瘍はエコーでは見つけられず、MRIでわかりました。
右乳房も今後は注意が必要といわれました。
左側術後のフォローも含め、先生ならどれくらいの間隔で、どの検査で経過を見ていく予定でしょうか。
いつも、先生のブログや、Q&Aを見て、励みとしております。
ご多忙中のところ、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「ルミナールB HER2陽性タイプと思いますが、主治医からは、抗がん剤をするなら、TC×4回 その後ハーセプチン×1年間 タモキシフェン5~7年のスケジュールとのことです。]
⇒pT1bなので「抗HER2療法をやるべきか」迷うところです。
 
「①先生であれば化学療法はおこないますか?」
⇒pT1bですが、やはり「勧めます」
 
「するとすれば同じくTC療法でしょうか?」
⇒そうです。
 通院の問題がなければ(毎週来れるなら)weekly PTXもいいです。
 
「また、行った上での上乗せ効果はどれくらいになりますか?」
⇒抗HER2療法は「再発率を半分」にします。
 そこから導き出すと「上乗せ効果は8%程度」と考えられます。
 
「②先生から見て、予後、再発転移 生存率などどう感じられますか。」
⇒「予後」はもちろん「良好」です。
 「再発率」は
無治療    27%
ホルモン療法単独  17%
ホルモン+抗HER2療法 9%
 「生存率」は
無治療        91%
ホルモン療法単独 93%
ホルモン+抗HER2療法 95%
 
「③一つの腫瘍からしかER・PgRやHER2を測定していないみたいですが、測定していない腫瘍のが別のタイプで、ホルモン剤の効果ないということは無いのでしょうか。」
⇒その可能性はありますが、「5mm以下」だから気にする必要はありません。
 
「左側術後のフォローも含め、先生ならどれくらいの間隔で、どの検査で経過を見ていく予定でしょうか。」
⇒左は全摘しているので、(対側を含めても)「半年で十分」だとは思います。
 ただし、ホルモン療法で「どうせ、3カ月毎に受診」するのだから「3カ月毎」でもいいとは思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、先日は私の質問にご回答くださり、本当にありがとうございまた。
その後、再度今後の治療について相談してきました。
主治医からは、
腫瘍径が1cmなので、ハーセプチン(1年間)+ホルモン療法でも良いのではないかとすすめられました。
主人も抗がん剤による、副作用の後遺症で、これから先の生活にどのような支障が出るのかわからないし心配だ・・
なので、TC療法無しでどうかと話しております。
私は、子ども達の為にも、できる限りの治療を受け、完治したいのでTC療法を受けた方が良いと思っています。
ただ、主人が言うように、副作用で自分の身体がどうなってしまうのか、
不安が大きく気持ちが揺らいでいるのも事実です。
①ハーセプチン+タモキシフェン(現在内服中です)
②TC療法+ハーセプチン+タモキシフェン
①と②の治療ですと前回教えてくださった再発率・生存率に差がありますでしょうか?
また、TC療法の副作用の後遺症で、治療が終わった後も日常生活に支障をきたすことがあるのでしょうか?
(たとえば、しびれや関節痛による苦痛症状がとれない・・など)
できるだけ副作用症状が軽くなるように、治療前からできることがあれば教えていただきたいです。
また、TC療法の副作用が強く、ハーセプチンの治療ができなくなってしまうことは無いのでしょうか。
ご多忙中のところよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
抗HER2療法は「ハーセプチン単剤の有効性」の証明はありません。
従って、「早期だから…」等の理由で(化学療法無しの)「ハーセプチン単剤」は
私は決して許容しません(適応外診療です)
「主治医からは、腫瘍径が1cmなので、ハーセプチン(1年間)+ホルモン療法でも良いのではないかとすすめられました。」
⇒私には受け入れられません。
 このように「自らの感覚だけ」で「適応外診療を行う」ことは「厳に慎むべき」です。
 
「副作用で自分の身体がどうなってしまうのか不安が大きく気持ちが揺らいでいるのも事実」
⇒乳癌術後の抗ガン剤治療は「何も特別なもの」ではありません。
 ○術後の抗ガン剤治療自体は、乳癌術後の方の3割程度は行っていると思います。
 何も「特別な忍耐力」や「強靭な肉体」が必要な治療ではないのです。
 
「①ハーセプチン+タモキシフェン(現在内服中です)
②TC療法+ハーセプチン+タモキシフェン
①と②の治療ですと前回教えてくださった再発率・生存率に差がありますでしょうか?」
⇒差は当然あります。
 そもそも①のエビデンスはありません。
 その意味では①は「タモキシエン単独」治療と同等と考えるべきです。
 
「また、TC療法の副作用の後遺症で、治療が終わった後も日常生活に支障をきたすことがあるのでしょうか?」
⇒絶対に無いとは言えませんが…(治療は全てそうです。その意味ではタモキシフェンも同様だし、そもそも手術自体がそういうものです)
 
「(たとえば、しびれや関節痛による苦痛症状がとれない・・など)」
⇒痺れは「有る程度、時間がかかり」ます。
 ただ、完全に(ゼロまで)消失するかは個人差の範囲内です。(その意味では手術そのものに寄る痛みや違和感も同様です)
 
「できるだけ副作用症状が軽くなるように、治療前からできることがあれば教えていただきたいです。」
⇒特にありません。
 
「また、TC療法の副作用が強く、ハーセプチンの治療ができなくなってしまうことは無いのでしょうか。」
⇒ありません。
 そのようなケースは私自身、想像できません。(実際ありません)