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全摘後の局所再発について

[管理番号:6555]
性別:女性
年齢:58歳
妻(58歳、主婦)のことで相談させてください。
【相談のポイント】
TNBCステージⅠ、術前化学療法後、全摘。
1年9か月後に局所再発。
現在検査結果待ちですが、不安が強く、田澤先生のご助言をいただければ助かります。
<質問>
1.なぜ再発したのか?
2.治療方針はこれで良いのか?
3.根治の可能性はあるのか?
【原発の診断~治療の経緯】
・ 2年3か月前、左胸外側にしこりを感じ、受診。
・ 細胞診の結果、悪性と判断。
組織診、マンモMRI、マンモPET、全身PET-CT実施。
   場所は左乳房外側ぎりぎり、1.0cm大、リンパ節転移なし
   ER(-)、PgR(-)、HER-2 Score 1+、Ki-67:82%
   浸潤性乳管癌(充実腺管癌)TNBC、ステージ1、核グレード3、と診断。
・ 乳房切除術(全摘)を希望したが、手術が2か月待ちと言われ、術前化学療法を選択。
   術前化学療法:タキソテール4回+FEC 4回
   術前化学療法後のマンモMRI、マンモPETの結果、癌腫消失
・ 当初診断時から6か月後に左乳房切除術(全摘)実施。
   組織診結果:癌腫消失、センチネルリンパ節に癌腫転移なし。
    ⇒ 組織学的治療効果判定Grade3(pCR)
・ 再建のためのティッシュエキスパンダー挿入、6か月後に再建術実施。
・ 術後、3か月毎にエコー検査を実施。
【再発の状況】
・ 今月(術後1年9か月後)のエコー検査で、原発部位近傍に5.5㎜大のしこりあり、
・ 細胞診の結果、悪性と診断。
組織診、マンモMRI、マンモPET、全身PET-CT実施。
・ 現在、それらの結果待ち。
・ 主治医(乳腺外科)の説明、話し合いの内容:
  - 原発癌から放射状に癌腫が飛んでおり、切除範囲外の皮膚や筋肉に残っていた可能性あり。
  - 検査結果を見ないと最終的には判断できないが、局所再発と診断。
  - サブタイプはトリプルネガティブから変わってはいないと推測。
  - 治療方針:
     インプラントを取り出して、皮膚や筋肉等できる限りの範囲を切除(できるだけ早期に)
     リンパ節レベル1まで郭清
     その後、放射線治療
     5.5㎜だと化学療法の適用外なので化学療法はしない。
【現在の本人の状況】
・ できる限りの治療で結果もよかったので、再発と聞いて非常にショックを受けている。
・ 「がんサポート」によるとpCR後の局所再発は1.2%の確率。
   なぜ再発した?何が悪かったのか。
・ 最初の治療に疑念と後悔:
   最初の生検時に場所のマーキング写真を撮っておらず、
   術前化学療法で消失し、場所がわからなくなり、切除範囲がずれたのではないか。
   (肝心なところを注意深く取れなかった?)
   術前化学療法選択が悪かったのではないか。
・ 根治の可能性に希望が持てない。
以上が経緯と状況です。
検査結果が出ないと何とも言えないかもしれませんが、最善の判断をするため、さらに
本人の不安を払拭して、がんと闘う気力を再度取り戻すために、是非田澤先生のご意見
を賜りたく相談させていただきました。
お忙しい中お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えましょう。
「局所再発」に再発率など存在しません。(遠隔転移再発とは異なり、手術操作そのものにより全く違ってくるからです。その意味では「術者の技量」によって「遠隔転移再発は影響は受けない」が「局所再発はまともに影響を受ける」ということです)
「1.なぜ再発したのか?」
→質問者の認識は正しいと思います。
 本来、全摘で局所再発(特に胸壁再発)は起こりえないのですが、「術前化学療法により腫瘍を見失ってしまった」分、(腫瘍が存在していた:一見画像上消失していたが細胞レベルで癌細胞が生き残っていた)『その部位の切除が疎かになっていた』と考えます。
 ☆「左乳房外側ぎりぎり」という位置にあったことが(質問者が危惧しているように)災いしたようです。
「2.治療方針はこれで良いのか?」
→リンパ節郭清は不要です。(画像上腫大を認めなければ)
 純粋に胸壁切除でいいでしょう。
 エコーで見つけたということは「皮膚側」にあるようです。(インプラントの裏であればエコーで見えないからです)
 そうなると、(インプラントよりも上の)胸壁切除だけでいいのでは?
 
 放射線照射は(病理学的にも)広がりが狭ければ「必須」ではありません。
「原発癌から放射状に癌腫が飛んでおり、切除範囲外の皮膚や筋肉に残っていた可能性あり」
→単純に…
 (インプラントより上であれば)「皮膚側に残してしまった」だけでしょう。(筋肉に残っていると考える理由がありません)
「3.根治の可能性はあるのか?」
→勿論!
 ただの「取り残し(局所再発)」ですから。
 ご安心を。