[管理番号:4742]
性別:女性
年齢:43歳
多発浸潤がん(センチネルリンパ転移2/2)の術後治療について
今年2月に自分でしこりを見つけてから、こちらのQ&Aで様々な知識をつけ、担当の先生とも建設的な話ができており大変助かっています。
どのQ&Aを拝見しても乳がん罹患者の心情を汲んで真摯にお応えされている様子に感銘を受けております。
これまでこちらでの情報収集のみで充分でしたが、術後の治療決定に当たって私にとっては難しい選択を迫られており、田澤先生にご教示いただきたくお願いいたします。
現在43歳、4月末に左乳頭乳輪温存術と同時にシリコンインプラント再建を受けました。
以下病理検査の結果です(海外在住のため英文、必要箇所を抜粋編集しています)。
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pT1c , pN1a , M0 , Stage IIA
センチネルリンパ節生検 2/2 で転移あり
リンパ節1:11 x 8 x 7mm 腫瘍径 5.2mm
リンパ節2:13 x 9 x 4mm 腫瘍径 2.6mm
乳頭直下の組織検査では病変は見られず
ER+ 100 / IS 3+
PgR+ 100 / IS 3+
Ki67 : 21%
HER2 : Negative by the IHC method. Hercept score 0. HER2 non amplified
(diploid)
MACROSCOPIC DESCRIPTION :
Lesion 1 : 4 o’clock / 21 x 18 x 12 mm
Lesion 2 : 3 o’clock / 8 x 7 x 6 mm
MICROSCOPIC DESCRIPTION :
Multifocal (x3) Invasive Carcinoma of No Special Type, 12mm, 3mm and 1mm arising within 50mm area of intermediate nuclear grade DCIS, and clear of all margin.
DCIS Grade : Intermediate / Comedo Necrosis : Present Histological Grade 1 (Nuclear Grade 2 / Tubule Formation 2 / Mitoses Score / 1, (1 per 10 HPF)) Lymphovascular Invasion: Absent
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Microscopic Descriptionでは、50mmの範囲に非浸潤がん(面疱型?)が広がっていてその中に悪性腫瘍が3つ(12mm, 3mm, 1mm)あるのだと解釈していますが、Macroscopicにある二つの腫瘍とサイズも数も違うので混乱しています。
? 触れてわかるしこりのサイズは21mmでも、病理学上のがん腫瘍は12mm, 3mm, 1mmの三ヵ所なので、ステージはIIBではなくIIAになるのでしょうか?
? 浸潤がんとDCISの他に乳頭の両側広範囲に渡って石灰化が見られたのですが、これは今後の治療を決定する上で影響がある要素なのでしょうか?
術前は全摘すればホルモン療法のみで済むだろうということでしたが、浸潤がんとDCISが広がっていたのと予想外のリンパ節転移があったため、腋窩リンパ節郭清と放射線治療を勧められました。
化学療法については担当の先生も決めかねているようです。
ちなみに術前の超音波検査ではリンパ節以上なし 、CTでも異常なしでした。
この結果を踏まえて今後の治療について下記の選択肢を提案されました。
□ するべき治療として腋窩リンパ節郭清、放射線治療とホルモン療法
□ 選択肢としてEndoPredictで遺伝子検査をして化学療法の効果があるか知り、それによって
○ 化学療法なし+腋窩郭清
○ 化学療法+腋窩郭清する or しない
EndoPredictについては、ホルモン受容体高陽性に加えKi67が21%で、そこまで化学療法の上乗せ効果があるのか、腋窩郭清してこれ以上転移がなければ化学療法の有効性は低いのではなど、高額な費用を払うほどの決定要因になるのだろうかと迷っています。
何より小さな子供が3人いるため、いずれにせよ化学療法は避けたい思いです。
放射線については皮膜拘縮やインプラント逸脱等の恐れがあるということで、これもできることなら避けたいです。
腋窩郭清も副作用を
考えると腰が引けますが、再発防止の有効な手段であればやむを得ないと思っています。
今後の治療を決める上でクリアにしたいのが、
? センチネルリンパ節が 2/2 の陽性で腋窩郭清をしないという選択肢はありか。
? 腋窩郭清して放射線治療をしない場合、予後に大きな差はあるのか。
? 乳頭乳輪温存術と同時にシリコンインプライントを挿入した乳房部に放射線を当てる意味があるのか、腋窩だけに当てるという選択肢はあるか。
? リンパ節郭清後にあと2つ転移(ステージIIIA?)が見つかれば、その腫瘍がどんなに小さくても放射線と化学療法適用になるのか。
私の第一希望は「ホルモン療法のみ+腋窩のみ放射線照射(腋窩郭清、化学療法なし)」と「再発早期発見のため超音波検査を頻繁にする」です。
ぜひこれらについて田澤先生のご意見をお伺いしたく、大変お忙しいとは存じますがアドバイスいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「 ? 触れてわかるしこりのサイズは21mmでも、病理学上のがん腫瘍は12mm,3mm, 1mmの三ヵ所なので、ステージはIIBではなくIIAになるのでしょうか?」
⇒その通りです。
「 ? 浸潤がんとDCISの他に乳頭の両側広範囲に渡って石灰化が見られたのですが、これは今後の治療を決定する上で影響がある要素なのでしょうか?」
⇒全摘しているのだから、「無関係」です。
「? センチネルリンパ節が 2/2 の陽性で腋窩郭清をしないという選択肢はありか。」
⇒郭清すべきです。
1.腋窩郭清
2.放射線
3.化学療法
これらの内、「2,3は必須ではない」と思いますが、「1は必須」と考えます。
「 ? 腋窩郭清して放射線治療をしない場合、予後に大きな差はあるのか。」
⇒「放射線治療」は殆ど影響しないと思います。
「 ? 乳頭乳輪温存術と同時にシリコンインプライントを挿入した乳房部に放射線を当てる意味があるのか、腋窩だけに当てるという選択肢はあるか。」
⇒この場合の照射は…
「腋窩郭清をしない代わりに腋窩照射」という選択は…
外科医である私にはありません(放射線科医の考えはまた別なのかもしれませんが…)
「きれいな郭清」よりは「腋窩照射」の方が患肢浮腫のリスクを上げるのではないかと思っています。
「 ? リンパ節郭清後にあと2つ転移(ステージIIIA?)が見つかれば、その腫瘍がどんなに小さくても放射線と化学療法適用になるのか。」
⇒リンパ節転移4個だけで、化学療法の適応とは(今は)考えていません。
「転移があれば、(何はともあれ)化学療法!」という考えは古いと思います。
「私の第一希望は「ホルモン療法のみ+腋窩のみ放射線照射(腋窩郭清、化学療法なし)」と「再発早期発見のため超音波検査を頻繁にする」です。」
⇒上記コメントのように…
唯一必要なのが「腋窩郭清」です。