[管理番号:4655]
性別:女性
年齢:58歳
田澤先生
乳癌の手術をしてからずっと、このサイトを読むことを日課とし、勉強させていただいております。
心よりお礼申し上げます。
ステージ1、ルミナルAで、術後9カ月となります。
温存でしたので放射線25回の治療を経て、現在はレトロゾールを服用しております。
このサイトのおかげで自分の状況も良く理解出来、明るく前向きに毎日を過ごしております。
今回はちょっと気になることがありまして、質問させていただきます。
10日前から術側の耳の前が腫れ、痛みを感じました。
丁度花粉症の薬を
頂きに耳鼻科に参りましたので、先生に伺ったところ、リンパが腫れていると耳の穴に薬を噴霧して下さいました。
これで様子を見て下さいとのことでしたが、それから1週間たちますが腫れも痛みもおさまりません。
リンパの腫れと言われ、術側であることもあり、不安になってきてしまいましたが、これは乳癌とは関係ないでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
乳癌が関連して腫大するリンパ節は「場所が決まっている」ので、余計な心配をしなくてすむように、ここでコメントさせてもらいます。
○乳癌からの「リンパ節転移」には「流れ(順番)」があります。
「腋窩」⇒「鎖骨上」⇒「頚部」です。
♯「胸骨傍」や「縦隔」への流れもありますが、これを「自覚」することはありません(画像でしかわかりません)
①(術側)腋窩
当然、気にするわけですが、(皆さんが思っている程)「腋窩再発」は多くはありません。
因みに「対側腋窩」が腫れることは皆無です。(左右は「天と地」ほどに離れているのです。)
♯対側腋窩に転移するケースの殆どが、「皮膚に広範な潰瘍を形成する局所進行乳癌」であり、(この場合には)「皮膚のリンパ管ごしに、(直接)対側腋窩や乳腺に転移が成立」します。
②鎖骨上
ここが、一番注意するところです。
特に(術側)鎖骨上にリンパ節が腫大した場合には、(緊急ではないですが)担当医に診てもらいましょう。
③頚部
これは②が(そのまま)進展して起こる部位です。
(逆に言うと)腋窩や鎖骨上を通り越して、「いきなり、頚部リンパ節転移が成立する」ことは無いのです。
但し、(腋窩郭清した後に)鎖骨上リンパ節に「術後照射」をしてたりすると、
(鎖骨上は放射線の効果があるので)「いきなり頚部に出る」ことはあります。
④その他
殆どありません。
気にしない様にしましょう。
「ウイルス性感染で後頚部リンパ節が腫大」「耳下腺炎で耳下腺リンパ節が腫大」
「虫歯で顎下リンパ節が腫大」など、そういうことです。
「術側の耳の前が腫れ、痛みを感じました」
⇒この部位に「転移」など100%ないことです。
しかも「痛み」があることは、(それが転移ではなく)むしろ感染によるものである『動かぬ証拠』といえます。
「これは乳癌とは関係ないでしょうか?」
⇒絶対に無関係です。
冒頭のコメント通り…
そんな部位に転移などしないのです。
耳下腺の炎症により「痛くなり、(反応性に)リンパ節も腫れる」そういうことでしょう。