[管理番号:3440]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生、
いつも、こちらのサイトにて、励まされながら色々と勉強させて頂いております。
6月頭に全摘手術を受け、オンコタイプDXの結果(=22)を待って、術後の治療方針が、抗がん剤無し・ホルモン療法のみ(タモキシフェン5年もしくは10年)ということになりました。
浸潤癌 2.2cm / ステージ2a
リンパ節移転: なし
核グレード: 1
ER/Pgr: 共に(8/8)
HER2: (+1)
Ki67: 24%
上記病理結果・術後治療方針を元に、ホルモン治療を延期し第二子の妊娠が可能がどうか主治医に聞いた所、ホルモン治療を1~2年据え置くことにリスクがあり賛成出来ないとのことでした。
以前、こちらのサイトで、術後の妊娠の可能性について質問されている
ものを幾つか拝見させて頂きましたが、田澤先生のほうでは、先に妊娠で、それからホルモン療法で構わない~といった内容だったと思います
(もし勘違い・読み違いしているようであれば、申し訳ありません)
(質問1)私の場合、第一子でなく、第二子希望であるということ(年齢も充分に高齢です)、また上記の病理結果からして、ホルモン治療を
1-2年遅らせるというのは、大変リスクのあることなのでしょうか?
(質問 2) 田澤先生の見解として、ホルモン療法を遅らせることに問題が
無い場合においてですが・・・なぜ、病院や先生方によって、考え方が
大きく異なってくるのでしょうか?(何かガイドライン等があるのでしょうか?)
(質問 3) また、ホルモン治療に関してですが、ASCOの新しいガイドラインにおいても、私のケースの場合はタモキシフェン単独でいいのでしょうか?
(質問 4) タモキシフェンを5年服用した場合、生理が止まり(止まらない方もいらっしゃいますか?)そのまま閉経となる可能性は高いのでしょうか?
色々お伺いして申し訳ありませんが、お教え頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
Ki67=24%は実際にはルミナールAとなることが多いわけですが、質問者もそのことが
(OncotypeDXで証明されて)良かったです。
「以前、こちらのサイトで、術後の妊娠の可能性について質問されているものを幾つか拝見させて頂きましたが、田澤先生のほうでは、先に妊娠で、それからホルモン療法で構わない~といった内容だったと思います」
⇒その通りです。
現段階でのエビデンスでは「妊娠、出産によるリスク上昇」はありません。
「質問1)私の場合、第一子でなく、第二子希望であるということ(年齢も充分に高齢です)、また上記の病理結果からして、ホルモン治療を1-2年遅らせるというのは、大変リスクのあることなのでしょうか?」
⇒全く問題ありません。
私であれば「妊娠出産を先行」させ、出産授乳後にホルモン療法を開始します。
「なぜ、病院や先生方によって、考え方が大きく異なってくるのでしょうか?(何かガイドライン等があるのでしょうか?)」
⇒逆に「ガイドラインがない」からです。
現時点で解っているエビデンスでは「妊娠出産が予後に影響しない」ことや、「不妊治療も影響しない」ことが解っているのですが、「ガイドラインがない」から(よく知らない医師は)不安にかられるのでしょう。
「(質問 3) また、ホルモン治療に関してですが、ASCOの新しいガイドラインにおいても、私のケースの場合はタモキシフェン単独でいいのでしょうか?」
⇒単独でOKです。(細かい規定はないのですが、明らかに低リスクと判断できます)
「(質問 4) タモキシフェンを5年服用した場合、生理が止まり(止まらない方もいらっしゃいますか?)そのまま閉経となる可能性は高いのでしょうか?」
⇒タモキシフェンは直接は「卵巣抑性作用」はありません。
年齢的に「40歳代後半となると」きっかけとして閉経に傾くことはあります。
質問者の場合5年経つと48歳なので「それまでには止まる可能性」はあります。
(凄く高いわけでは有りません)
質問者様から 【質問2】
田澤先生、
早速、ご回答頂き、本当にありがとうございました。
度々お伺いして大変申し訳ないのですが、次の決断までに余り時間がないため、再度ご意見をお聞かせ下さい。
”妊娠・出産によるリスク”(再発リスクということでいいのでしょうか?)はなく、予後に影響しない、という部分はよく理解できたのですが、ホルモン治療を今から”2年遅らせる”ということにより、再発率が上がる可能性は無いのでしょうか?
(2年程、無治療でいることにより、再発率を上げる、もしくは早めるリスクはあるのでしょうか?)
5年(もしくは10年)の治療が標準治療とのことで、妊娠を希望している一方、ここ2年治療を遅らせる(無治療でいる)ことに、不安も感じております。
また、ガイドラインが特に無いとのお話でしたが、先生のご判断は、先生のご経験・臨床経験によるものでいらっしゃるのでしょうか?
色々とお伺いして、大変申し訳ありませんが、何卒宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「ホルモン治療を今から”2年遅らせる”ということにより、再発率が上がる可能性は無いのでしょうか?」
⇒そこまで詳しく検討されているわけではありません。
ただし、結果的に「妊娠出産する=ホルモン療法が遅れる」場合に予後は悪化していないということです。
「先生のご判断は、先生のご経験・臨床経験によるものでいらっしゃるのでしょうか?」
⇒それもありますが、「妊娠、出産(それに伴うホルモン療法の遅れ)が予後に影響しない」エビデンスがあるのです。(ガイドラインにのっていないだけで)
質問者様から 【質問3】
田澤先生、
お忙しい中、ご回答頂き、本当にありがとうございます。
度々の質問で、大変申し訳ないのですが、あと少しだけお教え下さい。
(1)『妊娠出産する=ホルモン療法が遅れる』=予後は悪化しない、
とありますが、これは、ステージやサブタイプ等によって異なってくるものなのでしょうか?(それとも、どのステージ・サブタイプ等においても、予後は悪化しないのでしょうか?)
(2)最初の5年に再発率が高いと聞きますが、
『結果的に予後は悪化していない』とのことですが、これは、そのような経験・治験(妊娠・出産でホルモン療法を遅らせた)をされた方々が、5年後・10年後に結果として予後に変化・悪化が無かったというエビデンスがあるという理解でいいのでしょうか?
また、『予後に悪化がない』というのは、再発しなかったとということなのでしょうか?(もしくは、生存率に変化が無かったということでしょうか?その場合、生存率には再発者も含みますか?)
色々とお伺いし、大変申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
基本的には、前回までの内容と変わり無い回答とはなります。
皆さんが勘違いされていることに、「あらゆるケースにおいて、事細かく臨床試験が組まれ、エビデンスがある」と考えてらっしゃる節があるということです。
例えを出すと「乳房切除後の放射線照射はリンパ節転移4個以上の場合、予後を改善する」といエビデンスですが…
ここで、「術後にTCをしても、放射線は有効か?」とか「グレード1なのだけど?」みたいに細分化されたものではないのです。
エビデンスとは「臨床試験で設定するには限界がある」ので、ザックリとしたものしかないのです。
「ステージやサブタイプ等によって異なってくるものなのでしょうか?(それとも、どのステージ・サブタイプ等においても、予後は悪化しないのでしょうか?)」
⇒上記コメントどおりです。
そのように「細胞化された評価がある」わけではないのです。
複数の臨床試験で(ザックリと)「妊娠出産した群」と「対照群」を比較して「有意差がなかった」というだけのことです。(ステージ別とか、サブタイプ別などという細かい評価はないのです。)
「その5年のうちの最初の2年を妊娠・出産等で遅らせることにより、再発等のリスクが高まることはないのでしょうか?」
⇒上記で回答になっていませんか?
「5年後・10年後に結果として予後に変化・悪化が無かったというエビデンスがあるという理解でいいのでしょうか?」
⇒上記で回答になっていますか?
そのような細かいエビデンスではなく、「生存率に差がなかった」ということです。(5年後とか10年後とか、そんなに細かく設定できるものではありません)