[管理番号:2281]
性別:女性
年齢:37歳
いつもQ&Aを拝見しています。
昨年末に乳房温存手術を終え、現在、最終的な病理検査の結果を待っております。
主治医からは現時点の病理検査結果から、放射線治療とタモキシフェンになるだろうとのお話しをいただきました。
ただ、腫瘍サイズが大きかったことから、生理を止める注射もプラスした方が良いが、その場合は妊娠ができなくなることから、よく考えて結論を出して下さいと言われました。
現時点でわかっている病理検査結果は次の通りです。
(ホルモン受容体は現在結果待ちであり、組織検査時の値を記載しています)
腫瘍径 / 29mm×14mm×17㎜
がんの種類 / 浸潤性乳管癌
切除断端 / 陰性(-)
リンパ管侵襲 / ly(+)レベルは不明
血管侵襲 / ⅴ(-)
ER / +88%
PgR /+70%
核グレード分類 / グレード1
リンパ節転移の有無 / 無
HER2 / 1+
Ki-67 / 7.8%
これらのことから、次の点についてご相談させて下さい。
1.抗がん剤は必用無いか
ホルモン受容体が高く、Ki-67の値が低いことから、抗がん剤は不要と考えますが、組織検査時のKi-67の値26%から急に数値が下がったことが少し気になっています。
これまで田澤先生がほかの質問者へ回答されているとおり、組織検査よりも病理検査の結果を信じるべきとは思っておりますが、手放しで7.8%という数値を信じ、抗がん剤をしない選択をして良いのかとの迷いがあります。
また、脈管侵襲が+というのも、不安に感じます。
なお、主治医はKi67の値が下がったことについて、手術までの一か月弱、タモキシフェンを服用した効果かもしれないと説明してくれました。
また、検査機関は同じところに依頼しているとのことでした。
2.ホルモン注射をした方が良いか
他の方への回答として、ホルモン注射は35歳未満に有効との説明があったと思いますが、副作用とのバランスも踏まえて検討した場合、ホルモン注射を上乗せすべきでしょうか。
蛇足かもしれませんが、子宮筋腫を患っており、1年前に半年間リュープリン注射を受けておりました。
現在も筋腫は残っているため、ホルモン注射を上乗せすることで、筋腫の治療にもなるのであれば、前向きに実施を考えるべきかと思っています。
3.次の治療方針を選択した場合の、それぞれの再発率と10年後生存率を教えて下さい。
(1)タモキシフェン+放射線の場合
(2)タモキシフェン+放射線+ホルモン注射の場合
(3)タモキシフェン+放射線+抗がん剤の場合+ホルモン注射の場合
いくつも質問して申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「腫瘍サイズが大きかったことから、生理を止める注射もプラスした方が良い」
⇒「LH-RHagonistの併用」に関しては「腫瘍サイズの問題」ではなく「質問者の年齢(37歳)」から考慮してもいいと思います。
「その場合は妊娠ができなくなる」
⇒実際には「LH-RHagonistによる卵巣機能抑制は(抗がん剤とは異なり)可逆性」なので、『殆どが、(投与終了すると)卵巣機能が回復して妊娠可能となる』ことが解っています。
pT2, pN0, luminal A
「主治医はKi67の値が下がったことについて、手術までの一か月弱、タモキシフェンを服用した効果かもしれないと説明」
⇒もしくは「手術時の標本処理の問題で染色性の低下」や「針生検で採取した組織がたまたま増殖が旺盛な部位であった」などの解釈があります。
「ホルモン受容体は現在結果待ちであり、組織検査時の値を記載」とあるので「その結果で染色性の低下の有無が判断」できそうです。
「ホルモン注射は35歳未満に有効との説明があったと思いますが、副作用とのバランスも踏まえて検討した場合、ホルモン注射を上乗せすべきでしょうか。」
⇒「37歳」という年齢からは行ってもいいと思います。
「それぞれの再発率と10年後生存率を教えて下さい。(1)タモキシフェン+放射線の場合(2)タモキシフェン+放射線+ホルモン注射の場合(3)タモキシフェン+放射線+抗がん剤の場合+ホルモン注射の場合」
⇒
タモキシフェン+放射線 | タモキシフェン+放射線+抗がん剤 | |
再発率 | 15% | 10% |
10年生存率 | 93% | 95% |
○残念ながら、「LH-RHagonist併用による数字は不明」です。