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補助治療について

[管理番号:2184]
性別:女性
年齢:37歳
田澤先生
はじめまして。
妊娠後期に乳がんの告知を受け、現在は手術まで完了しております。
(11月初旬:乳がん告知、12月初旬:出産、中旬:温存手術を行いました。)
今後の補助治療についてアドバイス頂ければ幸いです。
手術を行った総合病院と、セカンドオピニオンを受けた診療所(内科治療のみ)の提案が異なっており、自分なりに調べていますが判断が出来ずにいます。
1、先生が使用されているソフトでは、私の場合どんな数値となるか
(無治療再発率、抗がん剤 3ヶ月と6ヶ月の上乗せ率、ホルモン治療の上乗せ率)
2、そして先生に治療をお願いした場合、どんな治療内容になるか
ご意見をお聞かせ頂けないでしょうか。
現在の先生からは具体的な数値を聞く事が出来ず、選択することが出来ずにいます。
再発転移や生存率などはあくまでも統計であり、結果的には0か100かでしかないのは承知していますが自分のリスクがどのくらいで、抗がん剤やホルモン剤がどの程度きくのか具体的な数値を知った上で治療に挑みたいと考えております。
病理所見
2.5×2.3 浸潤性乳管癌、硬癌(+乳頭線管癌)、f(+)、ly3、v0、
ductal spread(-)
EIC(-), comedo(-), tubule2, variation2, mitosis2(18/10HPF), H-grade2 sentinel 0/2, 断端陰性
ER:75%, PgR:36%, HER2:2+(FISH法で陰性), MIB:27%, p53:4% T2N0M0,Stage2A,T
提案1 AC×4→放射線治療→TAM±LH-RHagonist
提案2 AC×4→T×4→放射線治療→TAM±LH-RHagonist
先生の過去のQ&Aを拝見して、私の場合はTC×4を選択するべきなのかと考えていましたが「やれるべき事は全てやる」という提案2の抗がん剤6ヶ月のコースを選ぶべきなのか判断できずにいます。
今回、妊娠中だったこともあり、告知から出産、手術まで大変悩みここまで進めてまいりました。
幸いにも出産も手術も無事にすみ、親になる事もできた今
今後の治療も、副作用があろうがなんだろうが、出来るかぎりのことをしたいと考えております。
大変お忙しいかと存じますが、アドバイスを頂けますようよろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
妊娠期乳癌ですね。
妊娠後期であったことが幸いだったとしても大変だったと思います。
pT2(25mm), pN0, pStage2A,luminal type(Ki67=27%), NG2, HG2
提案1 AC×4→放射線治療→TAM±LH-RHagonist
提案2 AC×4→T×4→放射線治療→TAM±LH-RHagonist
「1、先生が使用されているソフトでは、私の場合どんな数値となるか  (無治療再発率、抗がん剤 3ヶ月と6ヶ月の上乗せ率、ホルモン治療の上乗せ率)」

再発率
無治療 34%
ホルモン療法 22%(上乗せ12%)
ホルモン療法+ACx4 15%(上乗せ 7%)
ホルモン療法+ACx4⇒Tx4 12%(上乗せ 10%)

 
「2、そして先生に治療をお願いした場合、どんな治療内容になるか」
⇒ルミナールAなのか、Bなのか微妙だとは思います。(化学療法による上乗せの数字を示したうえで)化学療法を(無理には)お勧めしません。
そして、もしも「化学療法を希望するのであれば」TCとします。
AC < TCであることは解っていますが、『ACx4⇒Tx4 vs TCの(信頼できる)データは存在しません。』
一般常識として「アンスラサイクリン+タキサン > タキサン」だと思っていますが、数字としての評価は道なのです。
つまり、上の表でいうと「TCは上乗せ8-9%」となるでしょう。
 
『先生の過去のQ&Aを拝見して、私の場合はTC×4を選択するべきなのかと考えていましたが「やれるべき事は全てやる」という提案2の抗がん剤6ヶ月のコースを選ぶべきなのか判断できずにいます。』
⇒抗がん剤を「もしも、やるなら」TCでいいと思います。
副作用や晩期の有害事象などを考えると「僅か1-2%」の差で「アンスラサイクリン+タキサン」を選択する必要は無いと思います。(過剰投与とも言えます)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
先日はお忙しい中、アドバイスを頂きありがとうございました。
抗がん剤を行う場合は、田澤先生に勧められたTC療法で進める方向で考えが固まりました。
治療方針が決まり次第、抗がん剤を早くにスタートさせる気でおりましたが
田澤先生のアドバイス(抗がん剤は絶対ではない。)と主治医からの提案もあり現在、オンコタイプDXの検査依頼をかけ結果待ちの状態です。
当初は1%の上乗せ効果だとしても抗がん剤を行うつもりでいましたが抗がん剤の重篤な副作用なども踏まえると、やればやっただけ良いというのではだめだと考えが変わり、
オンコタイプDXで低リスクとでたら抗がん剤ではなくホルモン治療で進めようと思い直しました。
ただ現在、やはり抗がん剤を行うべきではないかと迷いが出ております。
理由ですが、
今までの資料等見返していたところ、病理結果のLY3が気になり色々調べているうちに
・高度の脈管侵襲はリンパ節転移と同等の予後因子ととらえる。
・LY3は遠隔転移する可能性が高い。
といった情報を目にし、現在の主治医からは『最近は脈管侵襲はあまり気にしてないから』
といった説明だったのですが、急に不安になってしまいました。
再度、主治医へLY3を気にしなくて良いのか質問をしましたが
はっきりとした回答は得られませんでした。
田澤先生は脈管侵襲をどの程度の治療の方針に反映させますでしょうか?
高度脈管侵襲の場合、予後は悪いと考えた方が良いのでしょうか。
オンコタイプDXでは、あくまでも遺伝子情報であって現在の病気の進行状況などは反映されないという認識です。
その場合、低リスクと出ても私のような高度脈管侵襲の場合は抗がん剤を行った方が良いのでしょうか?
田澤先生のご意見、お聞かせ頂ければ幸いです。
 

田澤先生から 【回答2】

今日は。田澤です。
「田澤先生は脈管侵襲をどの程度の治療の方針に反映させますでしょうか?」
⇒ほとんど気にしていません。
 遠隔転移の指標にする必要はありません。
 
 ○ただし、「高度のlyは局所因子」として捉えています。
 つまり「乳腺内もしくは皮下のリンパ管が要注意」として
 「全摘でも放射線照射を考慮」します。
 温存術の場合には「必ず放射線が入る」ので、それほど気にしていません。(温存乳房内再発の高いリスクとはなりません)
 
「高度脈管侵襲の場合、予後は悪いと考えた方が良いのでしょうか。」
⇒考え過ぎです。
 今まで、いろいろな「臨床的」「病理学的」因子と予後との関係が検討されてきました。
 そして結論として「関係が有る因子として」結局残ったのが、「腫瘍径(浸潤径)」と「リンパ節転移(個数)」なのです。
 だからステージは「それら2つ」で決まるのです。
 「脈管侵襲」も「核異型度」も「サブタイプ」もネットの世界では「悪者にされている」ようですが、「(ステージを決める因子である)腫瘍径やリンパ節とは格が違う」のです。
 
「オンコタイプDXでは、あくまでも遺伝子情報であって現在の病気の進行状況などは反映されないという認識です。その場合、低リスクと出ても私のような高度脈管侵襲の場合は抗がん剤を行った方が良いのでしょうか?」
⇒考え過ぎです。
 「リンパ管侵襲」からは離れましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生
お忙しい中、ご回答頂きましてありがとうございます。
先生のご意見を参考に、来週から抗がん剤(TC)をスタートする予定で進めております。
先日、オンコタイプDXの結果が出まして、残念ながら高リスク(スコア31)となり抗がん剤で治療する意思が固まりました。
ただ、
・高リスク(スコア31)*ホルモン剤単独の場合、再発率20%とあります。
・PR Negative(5.2)*術後の病理結果では36%でした。
以上の結果から、TCで良いのかご意見を頂きたくメールいたしました。
他の質問者さんへの回答で、ハイリスクの場合アンスラタキサンを勧めるというご意見を拝見しました。
(オンコタイプDXのことか、病状に対してのハイリスクか分からなかったのですが、、、)
アンスラタキサンとはAC+Tの事でしょうか?
それから、以前出して頂いた再発率はPR陽性の場合の数値だったかと思いますが陰性になった事で、どれくらい再発率が変わるのでしょうか?
数値ばかりにとらわれてはいけないと思いつつ、
現状を把握し、再発率が上がる(抗がん剤の上乗せ率も上がる)のであればより強い治療を選ぶべきなのかという思いでいます。
お忙しいかと存じますが、どうぞご意見頂けますようお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「・高リスク(スコア31)*ホルモン剤単独の場合、再発率20%とあります。」
⇒これは、New Adjuvant.comのデータとほぼ一致しますね。
 
「他の質問者さんへの回答で、ハイリスクの場合アンスラタキサンを勧める」
⇒このハイリスクとは(オンコタイプDXでのハイリスクではなく)「浸潤径とかリンパ節個数とかでのハイリスク」のことです。
 
「アンスラタキサンとはAC+Tの事でしょうか?」
⇒その通りです。
 他にはEC+Tもありますが(アンスラサイクリンはA:アドリアマイシン E:エピルビシン)
 
「それから、以前出して頂いた再発率はPR陽性の場合の数値だったかと思いますが陰性になった事で、どれくらい再発率が変わるのでしょうか?」
⇒変わりません。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生
いつもお世話になっております。
ホルモン治療とTCの副作用について、ご相談させて下さい。
先生に頂いたアドバイスにより、TC療法を選択する事ができ無事4クール終わらせる事ができました。
明日より放射線治療が始まります。
平行して、主治医よりタモキシフェンの処方がありホルモン治療もスタートしました。
先生のコラムを読み、LH-RHagonistを併用するべきか判断できずにいます。
他の質問者さんの内容も拝見したのですが、自分が当てはまるか判断できずアドバイス頂ければと思います。
・年齢(現在38歳)
・pT2,pN0,Stage2A,ルミナールB
・オンコタイプDX スコア31(PGRがネガティブになりました。)
・TC1クール目に最終生理(3週間続く)それ以降なし
①私の場合、LH-RHagonistの併用が当てはまりますか?
それともPGRがネガティブの場合、また違った治療の選択肢があるのでしょうか、、、
②出産直後の初回の生理が、最終生理となりましたが(12月出産・手術、2~4月TC療法)
3週間続いたのもあり、はたして本当に生理だったのかも分かりません。
まだホルモンバランスも不安定なのかとも、、、
何で閉経を判断するのでしょうか?閉経後は薬を変えるべきでしょうか?
血液検査であれば、どの頻度で行うべきでしょうか?
『TCの副作用について』
③TC4クールが終わったあたりから、右の下腹部に鈍痛があります。
疲れた時など、痛みが強くなります。
TCの副作用でしょうか?
④TC4クール目から、身体が固くなりました。
(関節の強張りというのでしょうか?)
毎日ストレッチをしているのですが、日に日に曲げ辛くなりました。
TCの副作用、それとも生理が止まった事による更年期障害の症状でしょうか?
現在ホルモン治療が始まっていますが、症状が納まる事はないのでしょうか?
その他の副作用は軽かったため考えが甘かったのかせっかく治療が終わっても、思うように身体が動かせず辛いです。
なにか方法はあるのでしょうか?
お忙しいかと存じますが、どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
LH-RHagonistの適応 ASCO(2016)では「低リスクで化学療法を考慮することはないものには使用すべきではない」と解釈できます。
 逆にいうと「化学療法の使用を考慮するもの、実際に化学療法をした場合」には適応があると言えます。
 更にいうとSOFT試験では「化学療法閉経後に月経が再開した群では効果が確認されている」ので「化学療法後には投与すべき」でしょう。
 ただし、その開始時期については
 ①化学療法閉経後に、月経再開を確認した後に投与開始
 ②化学療法閉経から月経再開を確認する前に予め投与開始
 2つの考えがあると思います。
 ①の場合には「少し、後手にまわる」という危惧を持って②でも間違いではないでしょう。
 ♯この辺りは「年齢も考慮すべき」です。
 30歳代や40歳代前半であれば、「より再開する可能性を考えるべき」だし、40歳代後半は「そのまま閉経する可能性も高い」とは思います。
 その意味では「38歳という年齢」であれば②でもいいのではないかと思います。
 
「①私の場合、LH-RHagonistの併用が当てはまりますか?」
⇒あてはまります。
 上記コメントの通りです。
 
「何で閉経を判断するのでしょうか?」
⇒閉経とは「最終月経から1年間」が必要です。
 特に化学療法閉経で「アロマターゼインヒビターは禁忌」と考えてください。
 これにより「月経が再開し予後が悪化する」というデータがあります。
 
 
「閉経後は薬を変えるべきでしょうか?」
⇒上記コメント通りです。
 
「血液検査であれば、どの頻度で行うべきでしょうか?」
⇒これは血中エストラジオールのことですか?
 最低でも「1年間は測定しても無意味」です。
 
「③TC4クールが終わったあたりから、右の下腹部に鈍痛があります。疲れた時など、痛みが強くなります。TCの副作用でしょうか?」
⇒その通りです。
 
「④TC4クール目から、身体が固くなりました。(関節の強張り)TCの副作用、それとも生理が止まった事による更年期障害の症状でしょうか?」
⇒「生理が止まったことによる更年期障害」と言う表現は正しくはありません。
 TCによる「卵巣毒性により卵巣からのエストロゲン分泌の低下」が、①「子宮内膜への増殖作用が停止(結果として生理が止まる)」や②「関節痛」③「その他更年期症状」などを引き起こすのです。
 
「現在ホルモン治療が始まっていますが、症状が納まる事はないのでしょうか?」
⇒慣れてくるとは思います。
 
「なにか方法はあるのでしょうか?」
⇒経過をみるしかありません。
 
 

 

質問者様から 【質問5】

田澤先生
主治医にLH-RHagonistをお願いする事ができました。
ありがとうござい
ました。
前回の回答と、主治医からの提案内容でいくつか
相談させて下さい。

「何で閉経を判断するのでしょうか?」?⇒閉経とは「最終月経から1年
間」が必要です。
 特に化学療法閉経で「アロマターゼインヒビターは禁忌」と考えてく
ださい。
? これにより「月経が再開し予後が悪化する」というデータが
あります。
↑主治医より、LH-RHagonistを併用するのなら
AI+LH-RHagonistの方が治療効果が高いと勧められました。
(BMI<25の
場合)
A田澤先生は禁忌と仰っていたましたので、主治医に「閉経後の薬で
は?」と尋ねたのですが、若干だけど効果が高くこちらの病院では使用
する事があるとの回答でした。
LH-RHagonist併用、BMIなどの条件によって変わるのでしょうか?
田澤先生のお考えをお聞かせください。
???
② ?「閉経後は薬を変えるべきでしょうか?」?⇒上記コメント通りで
す。
??
「血液検査であれば、どの頻度で行うべきでしょうか?」?⇒これは血中
エストラジオールのことですか?
 最低でも「1年間は測定しても無意味」です。

化学療法閉経の場合、エストラジオールの値は1年はあてにならないと
いう意味でしょうか?
??主治医からは血液検査でホルモンの経過をみて、数年後にタモキシフェ
ンからAIに切り替えても良いと言われました。
A)
1年間はタモキシフェンとLH-RHagonist
?
1年以降に生理が再開しなかった場合AIとLH-RHagonistに変更
(5~10年)
B)
タモキシフェンとLH-RHagonist(5~10年)
どちらで進めれば良いのでしょうか。
自分なりに調べましたが、情報が多すぎて判断できず
アドバイスをお願い致します。
 

田澤先生から 【回答5】

今日は。田澤です。
「LH-RHagonist併用、BMIなどの条件によって変わるのでしょうか?田澤先生のお考えをお聞かせください。」
⇒LH-RHagonist+アロマターゼインヒビター(エキセメスタン)が有効であることは「海外の臨床試験」で出ています。
 このことを担当医は言っているのです。
 ただし、これは「あくまでも海外」であり、『日本ではLH-RHagonistの併用があろ
うが、無かろうが閉経前でのアロマターゼインヒビターは適応外』です。
 私は絶対に「適応外診療」はしません。
 
「化学療法閉経の場合、エストラジオールの値は1年はあてにならないという意味でしょうか?」
⇒その通りです。
 化学療法による「一時的な低下の可能性がある」からです。
 そもそも「最終月経から1年間は閉経」とは言わないことからも、「1年間は、その値が高くても低くても、閉経では無い」のです。
 
「A)1年間はタモキシフェンとLH-RHagonist 1年以降に生理が再開しなかった場合AIとLH-RHagonistに変更(5~10年)」
「B)タモキシフェンとLH-RHagonist(5~10年)」

⇒年齢的に考えたらBでしょう。
 もしくは「5年間のタモキシフェン+LH-RHagonistの併用」⇒1年間はタモキシフェン単剤として(この間に月経再開が無ければ)「1年後にエストラジオール測定」⇒(低値=閉経後)を確認してAI5年という方法もあります。
 そもそもLH-RHagonistを使用中は「月経再開はありません」
 ⇒LH-RHagonist投与終了して1年後に「月経再開が無ければ、その時点でエストラジオール測定」となります。
 ○「閉経前でしか適応がないLH-RHagonistと閉経後でしか適応がないAIの併用」は(ここ日本では)「適応外診療」です。