[管理番号:2105]
性別:女性
年齢:38歳
初めてメールさせて頂きます。
お忙しいとは思いますが宜しくお願いします。
10月の終わりに自分で左胸のシコリを見つけ細胞診で乳がんと言われました。
エコーでシコリの大きさは8ミリくらいでした。
検査で転移などはありませんでした。
12月10日に温存手術をしてリンパに微小転移があったそうですが郭清はせずに済みました。
病理検査の結果が出ました。
lnvasive ductal carcionma solid-tubular type
pt1b g NG3 ly0 v0 EIC(-) SN(0/3)
異型細胞が充実性増生を示す病変で、癌胞巣周辺に筋上皮は認めません。
充実腺管癌の像と考えます。
病変は乳腺内に留まっています。
病変の最大径はおよそ6㎜です。
切除断端陰性です。
ER(+60-70%) PgR(- <1%) HER2(- score0)
ki67 71.9%
病変検査が出たのですがリンパに微小転移があったのでステージは上がりますか?病理検査の結果が良く解らないので解説して頂けると有り難いです。
主治医からは、ルミナールBだと言われ6㎜と小さいが年齢も若いので今後の事を考えると抗ガン剤(TC4回)をした方が良いと言われました。
TC4回→放射線→ホルモン療法10年
抗ガン剤をするかは、自分で決めてもらってもらって良いと言われましたが先生のご意見をお聞かせ頂きたいと思いメールさせて頂きました。
宜しくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「lnvasive ductal carcionma solid-tubular type pt1b g NG3 ly0 v0
EIC(-) SN(0/3)異型細胞が充実性増生を示す病変で、癌胞巣周辺に筋上皮は認めません。
充実腺管癌の像と考えます。病変は乳腺内に留まっています。病変の最大径はおよそ6㎜です。
切除断端陰性です。ER(+60-70%) PgR(- <1%) HER2(-
score0) ki67 71.9% 病変検査が出たのですがリンパに微小転移があったのでステージは上がりますか?
病理検査の結果が良く解らないので解説して頂けると有り難いです。」
⇒pT1b(6mm), pN1mi, pStage2Aとなります。
ただ、「通常の2A期よりも」実際は「1期に近い」というよりも、「腫瘍径20mm
の1期よりも、余程予後はいい」と思います。
「lnvasive ductal carcionma solid-tubular type」
⇒浸潤性乳管癌は通常型の乳癌ですが、(これは更に「乳頭腺管癌」「硬癌」「充実腺管癌」に分けられますが)この中の 充実腺管癌と言うタイプだということです。
「pt1b g NG3 ly0 v0 EIC(-) SN(0/3)」
⇒pT1b(5mm<病理学的浸潤径≦10mm)であり、
g(浸潤度が乳腺までということ) NG3は核グレードが(1~3までの中で)3だということです。Ly0(リンパ管侵襲無し)v0(血管侵襲無し)EIC:extensive intraductal component(乳管内進展所見)に乏しいSLN(センチネルリンパ節が3個提出された内、転移を認めなかった)
♯微小転移の記載がないようですね。
○総括すると…
浸潤性乳管癌(充実腺管癌)が「乳腺内に留まり、その浸潤径が6mm」脈管侵襲(リンパ管、血管)も無く、
「乳管内進展(乳管内病変としての拡がり)」も無いという「非常に早期」の状態と言えます。
その一方で「核グレードは高い(グレード3)」、Ki67(細胞分裂期にある癌細胞の割合)は71.9%というのは、「癌細胞の性質としては、やや増殖性の高いタイプ」◎
「主治医からは、ルミナールBだと言われ6㎜と小さいが年齢も若いので今後の事を考えると抗ガン剤(TC4回)をした方が良いと言われました。」
⇒超早期と言えますが、上記◎の部分が気になるということです。
「 TC4回→放射線→ホルモン療法10年 抗ガン剤をするかは、自分で決めてもらってもらって良いと言われましたが先生のご意見をお聞かせ頂きたいと思いメールさせて頂きました」
⇒私であればpT1bでは「核グレードやKi67]にかかわらず、(積極的には)化学療法は勧めません。
質問者様から 【質問2】
田澤先生、こんばんは。
詳しく回答して頂き有難うございました。
気になる事があるので再度、質問させて頂きます。
充実腺管癌は、転移しやすいタイプだと目にして気になっております。
グレートも高く、増殖率も高いので再発率が高くなるのでしょうか?
微小転移ですが、主治医からの病理検査の説明の時にITC?でしたと言ってました。
それと、自分の再発率と生存率を教えて頂きたいです。
抗ガン剤の上乗せはどれくらいでしょうか?
小学生の子供も2人いる事、主治医からの抗ガン剤の説明も納得する事が出来たので副作用の心配はありますが、頑張って受けようと思っております。
お忙しいと思いますが宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「乳頭腺管癌」とか「核グレード」とか「Ki67」とか、ネットの情報を見ても無意味です。
大事なことは「pT1b=6mm」という事実です。
「腫瘍の小ささ」こそ、最大の武器なのです。
「微小転移ですが、主治医からの病理検査の説明の時にITC?でしたと言ってました」
⇒これは「微小転移」ではありません。
ITC:Isolated tumour cell clustersといい、「0.2mm以下」のものをいいます。
そして、pN0に分類されます。
よってステージについては前回の回答を訂正させてもらいます。
pT1b, pN0, pStage1となります。「1期」です。
「それと、自分の再発率と生存率を教えて頂きたいです」
再発率 | 10年生存率 | |
ホルモン療法単独 | 12% | 96% |
ホルモン療法+化学療法 | 8% | 97% |
「抗ガン剤の上乗せはどれくらいでしょうか?」
⇒再発に対しては、4%です。(生存率では僅か1%となります)
質問者様から 【質問3】
田澤先生、こんばんは。
年末の回答ありがとうございました。
先生の浸潤径6㎜が最大の武器の言葉に勇気を頂きました。
自分の乳がんに対して勉強不足が恥ずかしく今までのQ&Aを読ませて頂きました。
他の方の質問の中で硬癌より充実腺管癌の方が手ごわいとお答えになられてたのを拝見しました。
やはり自分は、グレートも高く増殖率も高いのでステージ1の中でも予後不良で低リスクでは無いので抗ガン剤を勧められてるのでしょうか?
5㎜であれば抗ガン剤を考えなくても良かったと思うと早く検診に行かなかった自分に腹立たしく思います。
ただ自分が乳がんになってから周りの人たちに検診を勧め検診で問題なかった事を聞くと本当に嬉しいです。
少し話がそれてしまいすみません。
先生は、今まで沢山の患者さんを診てこられたと思いますが自分のようなタイプで再発転移された方は、おられますか?
抗ガン剤を受けよう決めましたが、やはり副作用を考えると怖いです。
ただQ&Aでたくさんの方が頑張って抗ガン剤をされてるのを拝見して自分も頑張ろうと思えました。
自分は本当に抗ガン剤を受けた方が良いのでしょうか?
決めるのは自分だと解っていますが、宜しくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「グレートも高く増殖率も高いのでステージ1の中でも予後不良で低リスクでは無いので抗ガン剤を勧められてるのでしょうか?」
⇒担当医が何故「抗がん剤を勧めているのか」は不明ですが、私であれば「6mm」でluminal typeに抗がん剤は勧めません。(上乗せ効果は、前回の回答通り僅か4%です)
「先生は、今まで沢山の患者さんを診てこられたと思いますが自分のようなタイプで再発転移された方は、おられますか?」
⇒いらっしゃいません。
私も全ての患者さんを覚えている訳では勿論ありませんが、「腫瘍径が小さい事は再発しない最大の武器」だと経験的に感じています。
「自分は本当に抗ガン剤を受けた方が良いのでしょうか?」
⇒私は勧めません。
それよりは「タモキシフェンを10年継続」の方が余程意味があると思います。