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粘液癌

[管理番号:1854]
性別:女性
年齢:53歳
田澤先生、
初めて質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
10月に、それまでセルフチェックでは確認していなかった左胸のしこりに気づきました。
生理前でしたので終わるのを待ちましたが状態に変化がなく、11月6日にかかりつけの乳腺外科クリニックを受診。
先生はエコー画像を見てすぐに「針生検で確定診断しましょう」と仰り、11月10日に針生検を受けました。
動揺しつつも、覚悟をするとともにある程度の知識も得ておかねばと考え検索した結果、すぐにこのサイトを知ることができたのは幸運でした。
告知を受けた11月24日までの間、勉強したり気持ちを落ち着けたりすることができました。
質問を寄せる方々への田澤先生のご回答は、的確なコメントに加えてご誠実さとやさしさに溢れていて、感謝の気持ちでいっぱいになります。
 
質問内容までが長くなり、申し訳ありません。
診断名:粘液癌
病期: Ⅰ期(大きさ2cm未満、リンパ節転移なし、手術の結果によっ
    てⅡ期と判断される可能性あり)
サブタイプ、その他詳細な検査結果が出るのは12月2日とのこと。
主治医の先生は、これらを紙に書きながら説明してくださいました。
①粘液癌は「基本的に大人しいがん」とのことですが、もしサブタイプ
 がHer2陰性の場合「悪いがん」でハーセプチンと抗がん剤治療が必
 要。このサブタイプである確率は1割。この情報について、田澤先生
 の御見解をいただけますか。
 
②これまでQ&Aで読んだ先生の回答を思い出すと、この段階で他の臓器 への転移の心配は不要かもと考えますが、浸潤がんということに大き な不安を感じますので質問させてください。
 針生検の日にマンモも撮影したところ、問題なしとなった2月の検診時の画像(良性の石灰化が広範囲にポツポツ)とそっくりでした。
 田澤先生による「石灰化」の解説には「がん細胞が乳管内で増える前に浸潤を始めるとしこりと
 なって現れ石灰化は起きない」という内容の記述があり、
 私のがんはその記述にあてはまるものだったのでしょうか。
 2月の検診から10月までに1~1.5cmのしこりができたのであれば、これからの進行も早
 いのではと主治医の先生に聞いたところ「2月の時点でゼロではな かったと思う」「脂肪などと見分けづらく、小さいものが脂肪に隠れ ていた可能性もある」「今回もエコー画像の下の部分ががん特有の真っ黒ではなく白くなっていて、良性の可能性も考えていた」などの コメントがありました。
 私に動揺がありましたので記憶が不正確かも
 しれませんが、進行速度や転移の可能性について田澤先生からコメントをいただけるとありがたく思います。
乳腺症と嚢胞の経過観察を兼ねた、信頼できる専門医による検診を長年欠かさず行い、もし乳がんが見つかっても早期で治すことができると考えていたのは単純すぎたのかもしれませんが、今はまだ現実を受け止めきれていません。
本来はサブタイプなどの詳細が判明してからと考えていましたが、サブタイプが悪かったらと考えると不安に押しつぶされそうになり、今わかっている範囲で質問させていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「サブタイプ がHer2陰性の場合「悪いがん」でハーセプチンと抗がん剤治療が必要」
⇒HER2陽性の場合は「抗HER2療法(ハーセプチン+抗がん剤)」が必要となります。
 
「このサブタイプである確率は1割」
⇒一般的には「2割」近くあると思います。
 ただ、「粘液癌ではluminal typeが多い」印象がありますので「1割」かもしれません。
 
「私のがんはその記述にあてはまるものだったのでしょうか」
⇒そうです。
 しかも「石灰化を起こす癌の代表格」は「乳頭腺管癌」です。
 
「進行速度や転移の可能性について」
⇒「脂肪などと見分けづらく、小さいものが脂肪に隠れていた可能性もある」という担当医のコメント通りだと思います。
 粘液癌は「脂肪と区別しずらい」癌の代表格なのです。
⇒(遠隔)転移の可能性は全くありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生。
以前、粘液がんについて質問させていただいた者です。
お忙しいところ、迅速なご回答をいただき、ありがとうございました。
今回質問させていただく、術前(針生検)の病理組織診断報告書の内容です。
よろしくお願いいたします。
<一次報告書>
病理診断:MMT-CNB: Malignant(mucinous carcinoma)
所見:乳腺マンモトーム(Elite)生検:豊富な粘液塊内に、比較的少量の異型上皮が充実性、索状などの胞巣を形成して増殖しています。
粘液癌の像です。
核異型は軽度~中等度、波及度は少なくともf、です。
<最終報告書>
ER陽性(95%,J-Score3b,PS5+IS2=TS7)、PR陽性
(100%,J-score3b,PS5+IS2=TS7)、HER2陰性(スコア1+)
HER2タンパク過剰発現:無し、スコア1+
質問①
最終結果は術後の病理検査だと理解していますが、術前検査の結果がこのように「軽度~中等度」「少なくとも」など幅のある所見となるのは一般的なことでしょうか。
軽度と中等度は全く違うのではと思ったり、少なくともfならどこまで波及しているんだろう?と、どうしても悪いほうへと考えてしまい、不安です。
質問②
この報告書を受け取る時にサブタイプがわかると聞いていたのですが、ki67を追加オーダーしたので、数値が高ければホルモン療法+化学療法になると聞きました。
ki67はルミナールAかBかを決める重要なものでしょうか。
私の乳がんは「今年2月の検診時にゼロではなかった」と推測されていますが、手術の結果次第ではⅡ期になるかもと言われています。
比較的近い時期にできていたら増殖速度も速いのではと不安です。
質問③
胸のしこりについて。
針生検からしばらくして恐る恐る触ってみると、はっきりとしこりを確認できず現在も同じ状態です。
担当医に聞いてみると、「針生検の時に組織をたくさん吸い取ったから、小さくなったかもしれない」とのことでした。
私にはなんとなくわかりづらいのですが、田澤先生はどのようにお考えになりますか。
質問④
乳がんの疑いと言われた11月頃から時々左胸の奥が痛みます。
走った後に特に強く痛む気がするのですが、これは精神的なものでしょうか。
落ち着いた気持ちで過ごせる時もあれば、不安に耐えるのが難しい気持ちになることもあり、このように貴重なお時間をいただき質問させていただけることに感謝いたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
粘液癌ですね。

回答

「質問①最終結果は術後の病理検査だと理解していますが、術前検査の結果がこのように「軽度~中等度」「少なくとも」など幅のある所見となるのは一般的なことでしょうか。軽度と中等度は全く違うのではと思ったり」
⇒これは「通常」のことです。
 病変全体をみないと解らないのです。
 
「少なくともfならどこまで波及しているんだろう?と、どうしても悪いほうへと考えてしまい、不安です。」
⇒これは単純な話です。
 針生検では「皮膚(s)」や「大胸筋(p)」を取ってはいないので、「sやpの情報が全くない」から「そのような表現となる」のです。
 一般的な表現です。
 
「質問②この報告書を受け取る時にサブタイプがわかると聞いていたのですが、ki67を追加オーダーしたので、数値が高ければホルモン療法+化学療法になると聞きました。ki67はルミナールAかBかを決める重要なものでしょうか。」
⇒正確には「サブタイプは遺伝子検査(マイクロアレイ)を行っての分類」なのですが、勿論一般診療では到底使えないので「luminal A like」とか「luminal B like」という表現を用います。
 その際、「luminal AかBかを決める基準」が現時点では「Ki67 labeling index(細胞分裂期に有る細胞の割合を示す値)」なのです。
 
『質問③「針生検の時に組織をたくさん吸い取ったから、小さくなったかもしれない」とのことでした。私にはなんとなくわかりづらいのですが、田澤先生はどのようにお考えになりますか。』
⇒全く私も同意見です。
 マンモトームエリートですね。私も全く同じものを使用しています。
 かなりの組織量が採取できるので「小さな腫瘍では1/3位削れて」しまいます。
 私も良く患者さんに「組織をかなり削ったので、触知し難くなりますよ」と言います。
 
「質問④乳がんの疑いと言われた11月頃から時々左胸の奥が痛みます。走った後に特に強く痛む気がするのですが、これは精神的なものでしょうか。」
⇒少なくとも「遠隔転移や腫瘍がらみの症状ではありません」
 精神的なものもあるでしょうが、実際に「女性ホルモンが正常乳腺を刺激している」面もあると思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

貴重な質問枠を使わせていただき、ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
組織分類:mucinous carcinoma
核異型スコア2,核分裂スコア1(4/10HPF),核グレード1
ER(8), PgR(8), HER2(0), Ki-67(13.0%)
波及度:g
前回質問させていただいた後、術前の検査と執刀医の診察を受け、乳房温存術の方針が決まりました。
質問①
腫瘍径、浸潤径などが書かれたレポートは私の手元にはありません。
執刀医の説明の中に「3.9cm×2.3cm」「1.6cm」という数字が出たのですが、あまりに早口でよく聞き取れず「1.6cm」が浸潤径であるらしい
ことだけは聞き直して確認できたように思います。
「3.9cm×2.3cm」
について「もやもや」という表現を聞きました。
また「非浸潤部分がどれくらいかわからない」と言われたような記憶があります。
あいまいですみません。
針生検時には、しこりが約1cm,周りのぼんやりした部分を含めると約1.5cmと聞いていました。
あくまでも術前の情報だと理解していますが、がんの大きさや拡がりについて先生がお考えになることを教えていただけますか。
また、腫瘍径・浸潤径・拡がりについてQ&A内で調べたのですが理解力不足でよくわかりませんでした。
説明をお願いできますか。
基本的なことを質問してしまい、すみません。
質問②
Ki67について、術後には測定しないと言われました。
田澤先生の方針と逆だと思うのですが、術後の測定も頼むべきでしょうか。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
pT1c(16mm), pN0, luminalAですね。
「質問①腫瘍径、浸潤径などが書かれたレポートは私の手元にはありません。」
⇒術前に「最大浸潤径が解らない」ことは当然のことです。
 「手術標本でなくては最大浸潤径は解らない」のです。
 あくまでも「実際に腫瘍全体を顕微鏡で評価しなくては解らない」のですから…
 
「がんの大きさや拡がりについて先生がお考えになることを教えていただけますか。」
⇒超音波とMRIでの診断です。
 正確な数字が出せないのが当然なのです。
 
「腫瘍径・浸潤径・拡がりについて」
⇒「浸潤径」は「手術標本全体を顕微鏡で見て、浸潤癌の範囲を測定」したものです。
 これに対して「拡がり」とは「非浸潤癌も含めた」病変全体の範囲です。
 「腫瘍径」は一般に「画像上の腫瘍の範囲」を指します。
 
「Ki67について、術後には測定しないと言われました。田澤先生の方針と逆だと思うのですが、術後の測定も頼むべきでしょうか。」
⇒そう思います。
 Ki67は「病変全体を代表する値であるべき」なのです。