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今後の治療方法について悩んでいます

[管理番号:1695]
性別:女性
年齢:51歳
こんにちは、はじめまして。このような場を設けていただきましてありがとうございます。
術前の色々な検査で、浸潤性乳管癌 ステージ1 ホルモン感受性
ER→95% PR→0% her2→陰性 腫瘍の大きさ5ミリ未満
ということがわかり、乳房部分切除、そのあと放射線とホルモン剤で治療しましょうということで、10月上旬に乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検をいたしました。
術後しばらくしてからの受診で病理診断結果を聞きました。
センチネルリンパ節に1.5㎜ 1つの転移あり。ステージ2a
脈管浸潤→0 ki-67→5% グレード1 ルミナルA ということでした。
センチネルリンパ節に転移があったことで今後の治療を悩んでいます。
①放射線+ホルモン剤 ②抗がん剤(経口)+放射線+ホルモン剤 
③抗がん剤(点滴)+放射線+ホルモン剤 
④腋窩リンパ節郭清をしてリにいくつ転移しているか確認の上、治療方法を決める。
センチネルリンパ節に小さな転移があっても放射線とホルモン治療をすれば大丈夫なものでしょうか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1a, pN1mi(1.5mm), luminal A
全く問題ありません。
luminalAで化学療法を(ホルモン療法に加えて)上乗せする条件は「リンパ節転移4個以上」と考えます(St.Gallen 2015 voting結果より)
質問者はpN1mi(1.5mm)です。
全く「化学療法の適応外」と思います。

回答

「センチネルリンパ節に転移があったことで今後の治療を悩んでいます」
⇒私には悩む理由が見当たりません。
 当然①です。(luminal Aで化学療法を上乗せする条件はリンパ節転移4個以上です)
 ②経口抗ガン剤は「そもそも標準治療から外れる」し、③は「リンパ節転移4個以上」が適応となります。
 ④については不要です。(以下にセンチネルリンパ節生検の取り扱について記載します)
  質問者は②に該当します。
現時点での「センチネルリンパ節生検」と「腋窩郭清」の考え方について整理していきましょう。
①SLN(センチネルリンパ節)に転移を認めない場合には「腋窩郭清は省略」する
  これについては「疑問の余地」はありません。
  世界のスタンダードと考えていただいて結構です。
  もしもいまだに「日本の地方のどこかで(ひっそりと)明らかなN0症例に対して、センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清をしている(一般)外科医が居るとしたら、非難されるべき時代」と言えます。
②SLNに微小転移(2mm以下)を認めた場合★
  これについても「腋窩郭清は省略する」でほぼ意思統一されている。と考えて結構です。
  IBCSG 23-01(臨床試験)で934症例での「微小転移症例の非郭清と郭清群との比較」で「生存率も再発率も差がない」ことが証明されています。
  これを受けて「乳癌診療ガイドライン」でも「腋窩郭清の省略が勧められる」乳癌ガイドライン推奨グレードBとなっています。
  ♯Bとはなっていますが、内容的にはAと思います。
③SLNに肉眼的転移(>2mm)を認めた場合
  ここが、正に「議論の多い」ところです。
  ・SLN転移陽性患者の約半数は非SLN転移を有していない
  ・ACOSOG Z0011(臨床試験)では、以下の条件
     「腫瘍径5cm以下で画像上リンパ節転移を疑わない」「SLN転移2個以下」
「温存手術(術後照射を行う)」「術後薬物療法あり」を満たす場合には「郭清の有無で生存率も再発率も差がない」との結果
  ・2014のASCOガイドラインでは「照射を行う温存手術」であれば「2個までの転移」であれば、腋窩郭清を省略すべき
  これらの中で「適切な基準に基づいて腋窩郭清省略を考慮しても良い」乳癌ガイドライン推奨グレードC1となっています。
  この「適切な基準」というのが各施設で様々なのが現状です。
 
「センチネルリンパ節に小さな転移があっても放射線とホルモン治療をすれば大丈夫なものでしょうか?」
⇒解っていただけたでしょうか?
 本来「担当医が、そこまで説明すべき」と思いますが…
 ★「微小転移(2mm以下)」では「追加郭清しない」し「ルミナールAでは化学療法の追加の対象とはならない」のです。