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乳癌学会 2014/7/10-12に参加しました。 報告

大阪城大阪城■ 7月10日~7月12日 第22回日本乳癌学会学術総会開催 が大阪国際会議場で開催されました。

 

暑い大阪、数年前までの寂しく、小じんまりとした地味な学会を思い出しつつ、現在の「乳癌に対する関心の高さ」に時代の変遷を実感しました。

特に女性参加者が目立つのは、この疾患への女性の関心の高さを感じますし、乳腺外科も私の年代では男性医師が殆どでしたが、20代や30代では女性医師が増加していることも反映されているようです。

 

「次世代乳癌診療への挑戦」これが今学会のテーマでした。

■総じて「ガイドライン」を超える、実臨床にすぐにでも導入できるものはなく「臨床試験」の中間報告のようなものでした。

現代は、情報の共有化がすすみ、乳腺専門医であれば「日本の何処にいても」最前線の治療(エビデンスのしっかりした保険診療)が行えます。

大学病院や一部の病院でしか行われていない「最新医療」と称するものは「臨床試験の範囲内」でしかなく、日常診療のレベルを超えるものではありません。

一時メディアを賑わせた「鏡視下手術」や「ラジオ波熱凝固療法」「MRIガイド下収束超音波療法」「凍結療法」などのnon-surgical ablation2014大阪_edited-1は、今学会ではあまり注目されてはいませんでした。

 

■その中で私が注目したものは以下です。

[基礎研究]

・循環腫瘍ゲノム:circulating tumor genome ( CTG )に関する研究

・tripple negative breast cancer ( TN乳癌)の分子特性の解明と個別化医療へ向けた研究

●次世代診療へ期待が高まりますが、実臨床への応用には時間が必要なようです。

 

[分子診断法]

・95-gene classifier( 95GC )

●これは、従来からあるOncotype DXに対して優位性も期待される日本(大阪大学)で開発された「多重遺伝子診断法」です。

これら分子診断は保険適応でなく高額である点が普及の妨げとなっています。

 

[放射線治療]

・加速乳房部分照射accelerated partial-breast irradiation(APBI)が注目されています。

従来の全乳房照射が25回(5週間)に対して回数を減らす(術中照射の単回照射~組織内照射や外部照射の6回程度まで)ことがその目的としてあります。

●今回は3つの方法(組織内照射/術中照射/外部照射)それぞれの臨床試験の結果の報告がありましたが、今後標準治療となるためには越えなくてはならないハードルがどれも高そうに感じました。

暫くは全乳房照射もしくは寡分割照射となりそうです。

 

[腋窩郭清の省略]

・センチネルリンパ節生検陽性(macrometastasis)例での郭清省略の適応を広げるには、術後の放射線治療について照射野など大阪城の詳細な検討が必要である。との放射線科医からの示唆がありました。

# 乳癌診療ガイドライン2013で推奨度は低く(C2)、これも現時点では標準治療とは言えません。

 

[家族性乳癌]

・欧米に後れをとっていた家族性乳癌、これの大部分を占める遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)について

・変異保因者に対する検診プログラムや発症予防措置に関する実施体制、経済的支援体制が十分ではない現状があること

●これら我が国のHBOC診療の課題に取り組むべく、2012年11月に日本HBOCコンソーシアムが発足しました。

今後、データの集積に基づいたガイドライン作成や諸検査の保険収載などが進むことに期待します。