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Aさん術後3部作, 第3部(最終章) 「Aさん 放射線治療する。 そして卒業」

Edogawa_Hospital_2舞台は、E病院 放射線治療室

Aさんは、今月初めより放射線治療を開始しています。

今日は、週に1度の放射線科H医師の診察日です。

 

放射線科、H医師

「それではAさん。 本日で放射線治療15回目、ちょうど予定の半分となります。

変わりはないですか?」

 

Aさん

「えーと、特に具合悪いところはありません。ご飯も美味しいし。おかげで2kgも太っちゃいました。 放射線のせいでは無いですよね(笑)」

 

真面目なH医師はきちんと答えます。

「放射線には、太る作用はありません。バランスの良い食事と運動をお勧めします。

放射線治療というと皆さん構えてしまって、体を大事にしすぎる傾向があります。抗癌剤とは違って、日常生活に制限はありませんからどんどん活動なさってください。

あ、ただ皮膚への影響を考えて照射中は温泉だけは避けてください。」

 

Aさん

「解りました。あんまり調子がいいので、つい太っちゃいました。

照射している場所も赤くはありません。ただ少し痒いかしら? 左に比べて乾燥している感じはあります。」

 

H医師

「それは、照射によって皮膚の分泌低下が起こっているからです。照射している場所は汗もかかなくなりますし、どうしても乾燥して痒くなりがちです。

それでは、かゆみ止めの軟膏リン○ロン出しますね。」

 

Aさん

「ありがとうございます。また来週もよろしくお願いします。」

 

その後も順調に放射線治療はすすみ無事30回終了しました。

 

 

家その日、自宅で

親子4人で食卓を囲んでいます。

Aさん

「今日は御馳走よ。パパとママはステーキね。C太とD美は大好きなハンバーグよ。人参も可愛いお花の形にしておいたから、ちゃんと食べるのよ。ちゃんと食べたら、デザートの特大プリンあるからね。」

 

夫Bさん

「凄い、御馳走だね。こんな厚いステーキは初めて見るよ。いつもは皿が透けて模様が見える位だったもんな。 来週の健康診断の血液検査も気になるけど、今日はワインも飲むぞー!」

 

C太

「わーい、ハンバーグだ! でも大人っていいな。

パパ、そのステーキ、少しだけ頂戴。いい? いいでしょ?」

 

D美

「D美もステーチ食べる。 お兄ちゃんと一緒。」

まだ3歳で、うまく発音できません。

 

夫Bさん (子供たちをみて微笑みながら)

「勿論、いいぞ。いつもと違って今日のステーキは厚いからな。みんな早く大きくなって、パパを楽にしてくれよ。」

家族が笑いに包まれます。

 

Aさん(少し、あらたまって)

「ママは今日で放射線治療が終わりました。皆協力ありがとう。

C太は、きちんとD美の世話を見てくれたし、D美も行儀よくしてくれたよね。ありがとう。

そしてパパ、支えてくれてありがとう。あなたと結婚して良かったわ。」

 

ここで、C太とD美が「卒業証書」と書かれた画用紙を持ってきました。

C太

「卒業証書だよ。ママ放射線治療頑張ったね。おめでとう!」

D美

「D美からもおめでとう。」

 

Aさん(涙ぐみながら)

「ありがとう。みんなのおかげで頑張れたわ。ママみんなの事を誇りに思うわ。」

 

夕食の後片付けを夫Bさんが手伝っています。

夫Bさん(Aさんにむかって)

「おめでとう。良く頑張った。C太とD美も随分成長したよ。いい子たちだ。

この子たちのためにも、これからも一緒に頑張ろうな。」

 

Aさん(感きわまり、号泣しながら)

「家族のおかげで頑張れるし、家族のためだから頑張れるわ。あなた、これからもよろしくね。」

 

夫Bさん(おどけて、お腹をポーンとたたいてみせながら)

「この太っ腹に、どーんと任せなさい。」

プルプル揺れるお腹も、この時ばかりは誇らしげです。

 

 

Edogawa_Hospital_2時は流れて5年後

T医師

「今日は、術後5年目の検査でしたね。マンモグラフィーも採血検査も異常なしです。

それでは、これから超音波検査しますね。」

 

Aさん

「お願いします。何もなければいいけれど。」

 

T医師は、モニター画面を見ながら、まずは左側(乳腺~腋窩~鎖骨下~鎖骨上)そして術側である右側を丁寧に超音波で見ていきます。そして、

「Aさん。異常ありません。OKです。」

 

Aさん ふー、と息を吹きながら明るい顔で

「良かった。これで薬物療法は終了ですよね。」

 

T医師

「タモキシフェンは5年経ったので終了です。おめでとうございます。ただ乳癌は、おとなしい分10年経っても15年経っても注意は必要ですから定期的に通院は必要です。」

 

Aさん

「これからも、診てくれるんですね?」

 

T医師

「もちろんです。薬は終了したので、乳癌治療は「卒業」です。これからは3か月毎の通院は不要となります。ただ、定期検診として通ってもらいます。例えて言えば「卒業」後に「OB]としてかかわってもらう感じです。具体的に言うと、半年毎に採血(腫瘍マーカー)と診察、超音波、そして1年毎にマンモグラフィーを撮ります。10年目からは、1年に1回の定期検診ですよ。」

 

Aさん

「これからもよろしくおねがいします。」

 

T医師

「こちらこそ、よろしくお願いします。素敵な御主人や可愛いお子さんたちの為にも頑張って通ってくださいね。」

 

 

これで、「Aさん術後3部作」終了です。

皆さん、ありがとうございました。

次作の構想を練っているところです。

また、よろしくお願いします。

 

江戸川病院 乳腺センター センター長 田澤篤