Site Overlay

トリプルネガティブ乳癌の術後再発率

[管理番号:2074]
性別:女性
年齢:37歳
田澤先生
いつもサイトを熱心に拝見しています。
専門知識をわかりやすく、患者の視点で答えてください先生の姿勢に感銘を受けています。
このたび、乳癌の手術が終了しました。
内容は、
●右乳房全摘 リンパ郭清
●腫瘍浸潤径 2.7×2.5cm
●リンパ転移 センチネル1/2、脇リンパ0/21
●脈管侵襲 軽度リンパ、脂肪
●グレード3
●ホルモン陰性、HER陰性(トリプルネガティブ)
センチネルリンパは2mm以下の微小転移で、大事をとってリンパ郭清したものの、脇はすべて転移なしとのことでした。
①この場合、一般的には私のステージは2Aとなるのでしょうか。
それともやはり2Bでしょうか。
②先生が使われているサイトで、私の5年、10年生存率を算出していただけますか。
③脈管侵襲がセンチネルまでのリンパと脂肪に少しでしたが、どのような影響があるのでしょうか。
④これから化学療法(AC+T)を控えていますが、トリプルネガティブはその後無治療となり、大きな不安を抱えています。
再発予防として何かできることはないのでしょうか。
たとえば、種類の違う薬プラチナ製剤(カルポプラチン?)も追加するなど。
⑤放射線について、リンパ転移3以上が放射線治療対象というのが病院のガイドラインなのですが、リンパ郭清されたら、0も3も同じのような気がするのですが…。
私は不要で、転移3の方が放射線をする理由はなんでしょうか。
質問が多くて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(27mm), pN1mi, pStage2B, triple negativeですね。
「①この場合、一般的には私のステージは2Aとなるのでしょうか。それともやはり2Bでしょうか。」
⇒2Bです。
 
「②先生が使われているサイトで、私の5年、10年生存率を算出していただけますか。」
⇒5年生存率は不明ですが、10年生存率は68-81%となります。
 これは「微小転移」であるので、このような幅となります。
 
「③脈管侵襲がセンチネルまでのリンパと脂肪に少しでしたが、どのような影響があるのでしょうか。」
⇒「リンパ管侵襲軽度」と「脂肪織浸潤+」という意味だと思いますが、全く普通のことです。
 
「④これから化学療法(AC+T)を控えていますが、トリプルネガティブはその後無治療となり、大きな不安を抱えています。再発予防として何かできることはないのでしょうか。たとえば、種類の違う薬プラチナ製剤(カルポプラチン?)も追加するなど。」
⇒それはできません。
 使用できる薬剤には「適応」が厳密に規定されています。
 「カルボプラチン」は乳癌では唯一「HER2陽性でTCH療法をする場合のみ」に適応があります。
 トリプルネガティブには適応外となります。(アンスラサイクリン+タキサンしかないのです)
 
「⑤放射線について、リンパ転移3以上が放射線治療対象というのが病院のガイドラインなのですが、リンパ郭清されたら、0も3も同じのような気がするのですが…。私は不要で、転移3の方が放射線をする理由はなんでしょうか。」
⇒そもそも、「リンパ節再発」などの局所再発を減らすためではなく(もともと郭清すれば局所再発などは殆どないのです)、あくまでも「生存率上昇」を狙っての放射線治療です。
 乳房切除後照射の適応は「臨床試験の結果」から導き出されています。
 つまり「リンパ節転移の無い人」には無効であり、「1~3個では限定的」「4個以上では有効」という臨床試験の結果を基に決められているのです。
 ♯どういう機序で、それが「生存率向上」に結び付くのかを厳密に説明する事は困難なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
以前、【管理番号2074】で丁寧にご回答いただきありがとうございました。
現在術後抗がん剤治療中ですが、いつも先生のQ&Aやコラムを心の支えにしています。
辛いときでも、患者目線でとても優しく温かく、かつ冷静で「ブレない」先生の姿勢に勇気づけられます。
今更ながら術後の病理結果、とくにリンパ転移についての疑問が出てきたのですが、
主治医の診察がかなり先なので、質問させてください。
病理結果は、T2N1M0、腫瘍径27mm、ER-、HER-、NG3(トリプルネガティブ)ですが、術中センチネルリンパ節生検が陽性(1/2)だったため、レベル2まで腋窩郭清となりましたが、結果n+(1/22)でした。
①術前のエコーとMRTでは、腋リンパに2カ所腫れがあり、リンパ転移を疑うとの診断でした。
細胞診は2回行いましたが陰性でした。
腫れの部分はいわゆる腋の下だったのですが、ここはレベル2にあたる部分で、だからレベル2まで郭清になったのでしょうか。
②結局この腫れは癌とは関係なかったということでしょうか。
もしそうだとしたら、よくあることなのでしょうか。
③病理説明のときリンパ転移のサイズを尋ねたところ、「オスナ法で250倍にしているので、2mmないと思います。
このやり方だから転移がわかったのです」と言われたので、勝手に微小転移なのかと判断していました。
しかし今更ながら「ないと思います」といわれたことが気になっています。
オスナ法?という方式なら、転移巣のサイズがはっきりとはわからないものなのでしょうか。
また、250倍の意味がよくわからないのですが、本当に微小転移と考えていいのでしょうか。
④結果論ですが、私のようなケースは腋窩郭清の必要はなかったということなのでしょうか。
(術前にリンパ郭清の条件について選択肢を与えられており、自身で選んだこと
なので納得はしています。)
⑤田澤先生は、リンパ浮腫が起こるかどうかは実は技術に依ると書かれています。
また、技術が高い方だと術後のドレーンは不要とも書かれていますが、
実は私はほかの入院患者に比べてもドレーンが取れるのが遅くて、術後2週間かかりました。
これは、リンパ浮腫が起こる可能性も高いということでしょうか…。
本質問をするにあたって、先生のコラム第10回をじっくり読み直しました。
街道と関所に例えた説明はとてもわかりやすかったのですが、関西出身の私には、地名と地図のにらめっこが大変でした。(笑)
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「細胞診は2回行いましたが陰性でした。」
⇒結果、「微小転移」だったのだから、「細胞診で陰性」であっても矛盾しません
(単に細胞診で上手く細胞が採取できなかっただけの可能性もありそうですが…)
 
「腫れの部分はいわゆる腋の下だったのですが、ここはレベル2にあたる部分で、だからレベル2まで郭清になったのでしょうか。」
⇒そうだと思います。
 追加の郭清は(術前の)「画像診断を参考」にするのです。
 
「②結局この腫れは癌とは関係なかったということでしょうか。もしそうだとしたら、よくあることなのでしょうか。」
⇒その「画像を実際に見ていない」ので「どの程度の腫れなのか判断不能」ですが、
「画像診断との乖離自体は珍しくない」事です。
 
「オスナ法?という方式なら、転移巣のサイズがはっきりとはわからないものなのでしょうか。」
⇒その通りです。
 リンパ節を溶かして「遺伝子を増幅させて検出」するものです。
 つまり「リンパ節を実際に見て、転移が○○mm」という診断ができないのです。
 
「また、250倍の意味がよくわからないのですが、本当に微小転移と考えていいのでしょうか。」
⇒これは「遺伝子の増幅の数値」と「転移巣の大きさ」に相対関係が成り立つ事を前提とした評価です。
 一般的な解釈としては「十分、微小転移の範囲内」です。

「④結果論ですが、私のようなケースは腋窩郭清の必要はなかったということなのでしょうか。」
⇒そのようになります。
 
「⑤田澤先生は、リンパ浮腫が起こるかどうかは実は技術に依ると書かれています。
また、技術が高い方だと術後のドレーンは不要とも書かれていますが、実は私はほかの入院患者に比べてもドレーンが取れるのが遅くて、術後2週間かかりました。これは、リンパ浮腫が起こる可能性も高いということでしょうか…。」

⇒それは考えても仕方が無いことです。
 担当医を信じましょう。