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トリプルネガティヴ手術後の抗がん剤治療について

[管理番号:2343]
性別:女性
年齢:51才
田澤先生、はじめまして。
昨年11月に乳がんと診断されてから、こちらで勉強させていただいています。
不安な毎日の中、田澤先生のあたたかいアドバイスを読むことで、術前検査、手術を終えることができたと思っています。
さっそくですが、今月○日に右乳房全摘術を受けました。
(遺伝子検査でBRCA1変異があるため、全摘術を選択しました。)
先週、病理検査の結果と今後の治療方針について主治医より話があったのですが、自分では判断が難しく、田澤先生からぜひアドバイスをいただきたいと思っています。
病理検査の結果ですが
腫瘍径:1.00×0.70cm、腫瘍径in situ ca含む:1.50×1.10×0.80cm
組織分類:invasive ductal carcinoma, solid-tubular carcinoma
核異型スコア:3,核分裂スコア:3(11/10HPF),核グレード3
ER:Allred PS0 IS0 TS0, PgR:Allred PS0 IS0 TS0 HER2:score2, 強陽性:0%, 中等度
陽性:30%, 弱陽性:30%
波及度:g, リンパ管侵襲:ly0, 静脈侵襲:v0
断端:皮膚測,深部測,側方,乳頭側,マイナス
in situ ca++, EIC+, 娘結節-, comedo-,石灰化-,リンパ球浸潤+++
前治療なし
リンパ節転移:合計(0/1, i -)SNB(0/1)
UICC 7版:pT1b pN0 M0 stage IA, 規約17版:pT1b pN0 M0 stage I
中等大から大型のcarcinoma cellsが微小胞巣状, 個細胞性に増殖するinvasive ductal carcinoma がみられます。
生検での充実性胞巣状の増殖を参考としてsolid-tubular carcinomaとします。
周囲に小葉内進展の
in situ component がみられます。
腫瘍径はこの検体では♯1の0.7×0.5cmですが、生検で1cmに及んでいるため1cmとします。
病理所見は以上です。
最後の生検で1cm~というのは、針生検時は1cmだったということだと主治医から説明を受けました。
術前の針生検でトリプルネガティヴ、MRIでしこりは1.5cmくらいと言われていたため、術後の抗がん剤治療を覚悟していましたが、
主治医からNCCNガイドラインによると0.6~1.0cmの腫瘍は術後化学療法を考慮する。
化学療法は副作用もあるから、どうするか考えるように言われています。
(トリプルネガティヴであるから化学療法しか治療法がないことは説明されています)
母が卵巣がんで化学療法をした時の記憶があり、正直、化学療法は気が進みません。
でも「しない」という選択をして、もし再発してしまった時後悔しないだろうか?と考える自分もいて、先週からずっと悩んでおり苦しい毎日です。
やはり化学療法を受けるべきなのでしょうか?
主治医からは化学療法をするなら、AC療法の後、ドセタキセルかウィークリーパクリタキセルを考えている。
ウィークリーパクリタキセルの方が、副作用が軽い人が多いと言われました。
田澤先生はどうお考えでしょうか?
お忙しいなか申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(10mm), pN0, pStage1, NG3, BRCA1変異+
HER2 2+⇒(FISH中?)
「主治医からNCCNガイドラインによると0.6~1.0cmの腫瘍は術後化学療法を考慮する。」
⇒この辺の考え方は、私も全く同様です。
 ただし、「考慮する」となっていますが(私ならば)「積極的に勧める」方向で話します(70歳以上では勧めません)
 
「やはり化学療法を受けるべきなのでしょうか?」
⇒「悩む」のであれば「受けるべき」です。
 ○ルミナールタイプで(ホルモン療法に加えて)「+αとしての抗がん剤」の選択とは状況が異なります。
  トリプルネガティブは「抗がん剤が唯一の方法」であり、かつ「抗がん剤が効き易い(無論、全例ではありませんが)」ため、(やらないと、決めていないのであれば)やるべきです。
 
「主治医からは化学療法をするなら、AC療法の後、ドセタキセルかウィークリーパクリタキセルを考えている。ウィークリーパクリタキセルの方が、副作用が軽い人が多いと言われました。」
⇒この辺も、私も全く同感です。
 
「田澤先生はどうお考えでしょうか?」
⇒上術の如く
 主治医と全く同感ですが、(主治医よりは)強く勧めます。
 せっかく「早期乳癌」として治療ができた幸運なのだから、最後まで気を抜かずにいきましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、さっそくの返答をありがとうございました。
お忙しい中返答いただいて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
やはり化学療法が必要なのですね。
どちらかというと体力がない方なので、副作用がとても不安ですが
前向きに考えてみたいと思っています。
ところで田澤先生の返答でHER2 2+ ?(FISH中?)とありましたが、それについては主治医からの説明はありませんでした。
これから治療をすすめていく上で、主治医に確認した方がよいのでしょうか?またHER2 2+でもトリプルネガティヴという認識でよいのでしょうか?
また手術を受けた病院が遠方であるため、化学療法は地元の病院で受けることを考えています。
病院をかえることで、なにか不都合はありますか?(化学療法の薬が変更になるなど)
再度の質問で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「HER2 2+ ?(FISH中?)とありましたが、それについては主治医からの説明はありませんでした。これから治療をすすめていく上で、主治医に確認した方がよいのでしょうか?またHER2 2+でもトリプルネガティヴという認識でよいのでしょうか?」
⇒私は当然「FISH中」だろうと思ってのコメントでした。
 HER2は「0/1+」は陰性、「3+」は陽性です。
  ここで「2+」は『必ずFISHで確認しなくてはならない』のです。「FISH陽性ならばHER2陽性、FISH陰性ならばHER2陰性」となるのです。
 ○トリプルネガティブとなっていることからは「FISHで確認している筈」ですが、念のため「担当医に確認すべき」です。
  もしも「FISH陽性」となれば、「抗HER2療法」の適応となり、全く様相が変わります。
 
「また手術を受けた病院が遠方であるため、化学療法は地元の病院で受けることを考えています。病院をかえることで、なにか不都合はありますか?(化学療法の薬が変更になるなど)」
⇒特にありません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、前回も質問にお答えいただきありがとうございました。
田澤先生にご指摘いただいた「FISH検査」ですが、主治医に確認したところ陰性ということで、やはりトリプルネガティヴでした。
化学療法は通院しやすい病院で・・・と考えていたので、先日紹介された病院を受診してきました。
主治医から抗がん剤はEC+タキサン系を提案され、来週から治療が始まります。
前の病院ではAC+ウィークリーパクリタキセル、またはTC療法単独でのデータについての説明はありましたが、ECについては説明がなかったので混乱しています。
(田澤先生からもAC+ウィークリーパクリタキセルというアドバイスをいただいていたのでなおさらです)
ACとECは同じ効果があるという理解でよろしいのでしょうか?
お忙しい田澤先生に再度の質問は心苦しいのですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「田澤先生にご指摘いただいた「FISH検査」ですが、主治医に確認したところ陰性ということで、やはりトリプルネガティヴでした。」
⇒了解しました。
 
「ECとECは同じ効果があるという理解でよろしいのでしょうか?」
⇒その通りです。
 因みに江戸川病院では「ACではなく、ECを行っています」
 E:ファルモルビシン
 A:アドリアシン
  どちらもアンスラサイクリンです。