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ステージ2bにおける治療方法について

[管理番号:3988]
性別:女性
年齢:73歳
母親(73歳)が乳癌と診断され、10月上旬に摘出手術※を行ないました。
※リンパは摘出しなかったです
そして、先日その手術結果と今後の治療方法を聞きにいったのですが、
アドバイスをいただければと思います。
長文で失礼します。
母親からの電話の又聞きでして、医療用語等の使い方が間違っている
可能性がありますが、ご了承ください。
【癌の状況報告】
 ■リンパ転移無し → 有り
  手術中の簡易検査?では「転移無し」との判断で、リンパの摘出を
  しなかったのですが、後日の詳細検査にて、3つ採取したリンパの
  うち、1つのリンパにて 2mm強の転移があったとのこと
 ■摘出した癌細胞 → 進行性のあるもの
  HER2 陽性(高め),KI67 高め と診断書に記載されており、進行性の
  あるもので、今後の治療は必要とのこと
■ステージ 当初1から2 → 2b
【医師からの提案】
 ■リンパ除去の再手術について
  ⇒若干の転移であるが再手術をしますか否か
 ■今後の治療方法について
  案① 抗がん剤(AC療法→ドセタキセル→ハーセプチン)
  案② ホルモン療法
  ⇒どちらを選択しますか
  ※参考として、70歳付近での生存率を教えてもらいました
   案① 5年:85%,10年:64%, 案② 5年:80%,10年:55%
【アドバイスいただきたいこと】
 医師からは「どうしますか?、家族/ご自分で判断してください」
 との状況になっております。
 
 (1)リンパ除去の再手術をしたほうが良いか
 (2)抗がん剤 or ホルモン療法の選択
 を踏まえて、どのような対応がよいのでしょうか?
 今までの医師コメントでは「転移無し」「大丈夫」のようなで軽めの
 言い方を理解していたのですが、先日の結果では「転移有り」
「進行性」になり、不信感もでてきてしまっています。
 アドバイスいただき、判断の参考にさせていただきたく思います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
要点は2つですね。
1.センチネルリンパ節生検について
 術中迅速診断で転移無⇒2mm強のmacrometastasis
①micrometastasis(微小転移)が後日見つかる事はありますが、macrometastasis(肉眼転移)が見つかる事はかなり稀です。
 ②(通常、macrometastasisの場合には追加郭清が推奨されますが)施設によっては(そもそも)リンパ節転移が2個以内ならば(放射線照射を前提として)腋窩郭清を省略するところもあります。
   ♯ASCO(2014)ガイドラインでは2個以内の転移の場合には(術後照射を前提として)腋窩郭清省略を提言しています。
2.術後補助療法について
 質問者(の母)は(抗HER2療法やホルモン療法を勧められていることより)luminalB(HER2陽性タイプ)だと推測されます。
 ③70歳以上の術後補助化学療法の有効性の証明はされていない
 ④ただし、抗癌剤治療そのものが(高齢者でも)有効であることは間違いない(要は有害事象とのバランスです)
 ⑤66歳以上ではアンスラサイクリンによる心毒性(うっ血性心不全)のリスクが高まる
 
「HER2 陽性(高め),KI67 高め と診断書に記載されており、進行性のあるもの」
⇒この表現には賛成しません。
 まるでHER2陽性だと(他のサブタイプに比べて)悪者だという印象(KI67も含め)ですが、そんなことはありません。
 何もかわるところはありません。
(1)リンパ除去の再手術をしたほうが良いか
⇒2mm強の転移であれば、(実質)micrometastasisと何ら変わりが無いありません。
 センチネルリンパ節として3個取っているのであれば十分だと思います。
 ♯②のように術後放射線照射をするという方法もあります。
(2)抗がん剤 or ホルモン療法の選択
⇒これは「どちらかではなく」(ホルモン療法に)『抗ガン剤(抗HER2療法)を上乗せするかどうか?』です。
  ♯いずれにしろ、luminal type(ホルモン療法が有効)であれば、ホルモン療法は必須です。
 ・73歳なので通常の抗ガン剤であれば不要です。  ③より
 ・ただし抗HER2療法(ハーセプチン+抗ガン剤)はとてもいい治療(再発率を半分にする)なので、是非検討していただきたい。
  ○抗HER2療法は(担当医が推奨している)アンスラサイクリン+タキサンを用いるレジメン(ACのAがアドリアマイシン:アンスラサイクリンです)がgold standardですが、⑤より非アンスラサイクリンレジメンとすべきでしょう。
 非アンスラサイクリンレジメン
 ⑥weekly PTX + HER
 ⑦TC+HER
 ⑧TCH
  毎週通院が苦でなければ⑥をお勧めします。(3週に1回なら⑦もしくは⑧となります)
   
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生。
お世話になっております。
先日、母親(73歳)の治療方法についてアドバイスをいただいたものです。
担当医との治療方針に対する意識合わせが十分でなかった中、田澤先生のアドバイスにて、理解が深まり、大変心強くなり助かりました。
ありがとうございます。
そんななか、追加で質問させていただきたく思います。
まずは、状況をお伝えします。
 ※以前は、母親からの口頭での状況でしたが、病理結果をもらいました。

 □母親(73歳)の状況
 ・サブタイプ   :ルミナルHER2型(ER陽性,HER2陽性)
 ・グレード    :2(中間)
 ・Ki67      :高い(口頭で30%だった気が・・)
 ・リンパ節転移  :1個
 ・病理学浸潤径  :3.3cm
 ・HER2状況    :陽性
 ・腫瘍周囲脈管侵襲:広域
 ・最終病期    :T2N1M0 stage2b 
 □提案の治療方法
 ・ホルモン療法
 ・化学療法(アンスラサイクリン・タキサンを含む抗がん剤)
 ・ハーセプチン療法
 ・放射線療法
 ※病院からいただいた薬剤説明パンフは 以下4種でした
  ドキソルビシン・シクロフォスファミド
  ドセタキセル・トラスツズマブ
【お伺いしたいこと(先日のアドバイスへの追加質問)】
[1] 先日、以下のアドバイスを頂きました。
 (a)73歳なので通常の抗ガン剤であれば不要です。
 (b)ただし抗HER2療法(ハーセプチン+抗ガン剤)はとてもいい治療
  (再発率を半分にする)なので、是非検討していただきたい。
 ⇒(a)の「通常の抗ガン剤」と(b)の「ハーセプチン+抗ガン剤」の
  「抗ガン剤」というのは、同じもの指しますか?
  同じものだとすると、不要(a)/必要(b)なのかでしょうか?
  また、担当医提案の「アンスラサイクリン・タキサンを含む抗がん剤」
  は、上記の(a)か(b)のどちらに該当されるものでしょうか?
[2] 先日、以下のアドバイスを頂きました。
 抗HER2療法は(担当医が推奨している)アンスラサイクリン+タキサンを 用いるレジメンがgold standardですが、⑤より非アンスラサイクリンレジメンとすべきでしょう。
  非アンスラサイクリンレジメン
  ⑥weekly PTX + HER,⑦TC+HER,⑧TCH ※毎週通院可なら⑥推奨
 ⇒先生からご提案いただいた⑥~⑧についてお伺いします。
  上記の⑥~⑧療法は、担当医推奨の療法に比べて、心臓等への影響は少ないと理解しましたが、効き目の強さ・その他の副作用(吐き気・神経・脱毛等)について、いかがでしょうか?
   ※母親(73歳)は「吐き気は自信無いなあ・・」と不安がっていました。
   ※母親は、糖尿病でもあり、ジャヌビア・メトグルコを服用しております。
[3] 放射線治療の提案を受けました
 ⇒上記の療法にプラスしてですが、効果および副作用はどの程度あると考えると  よいのでしょうか? 意味はありますか?
 ⇒センチネルリンパ節生検での3個中1個(2mm強)のmacrometastasisへの対処というものなのでしょうか?
まだまだ勉強不足で、変な内容/質問かもしれませんがご了承願います。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
前回の回答に「一般論」を多く記載してしまったので、(かえって)質問者を混乱させてしまったようです。(申し訳ありません)
(一般論は前回の回答に置いておくとして)今回は「質問者(の母)に対しての記載」に留めます。
物事はシンプルに考えましょう
①術後療法について
73歳(しかもリンパ節も2mmが1個程度)であれば「アンスラサイクリン」は勧められません。
是非 1.TC+HER
   2.Weekly PTX+HER
 このうち(毎週通院が苦にならないなら)2を、そうでないなら1を選択しましょう。
 ちなみに(gold standardである)アンスラ+タキサンと上記1,2などの直接比較はありません。
 ♯担当医が推奨しているドキソルビシンがアンスラサイクリンです。
②術後放射線について
かけなくてもいいと思います。
♯2個以内なら照射を前提として追加郭清不要とはASCOのガイドラインを引っ張ってきたものであり、2mm程度の質問者に当て嵌める必要はありません。