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卵巣がん克服からの乳がん発症

[管理番号:1047]
性別:女性
年齢:36歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1049「ki67高値と術前化学療法

 
 
背景:
 ・2010年12月(31歳):卵巣がん発覚 (類内膜腺癌1-C期) 片側切除
 ・2011年1月~:化学療法(マンスリーTC4クール、マンスリーDC2クール)
  副作用のため、途中で薬を変更
 ・定期的なマーカーフォローアップ(CA125,CA19-9):異常なし
 ・2013年6月:フォローアップCT(胸まで撮影問題なし)
 ・2014年6月:フォローアップCT(妊娠発覚によるキャンセル)
 ・2015年2月:出産
 ・現在(36歳)授乳中
 ・授乳マッサージの際(8/21)にしこりが見つかり、すぐに検査を行いました。
8/24に針生検とエコーを実施、8/31にMRIを実施。以下の結果となりました。
 ・浸潤がん
 ・大きさ:2.4cm(エコーの結果) MRIの結果は少々大きくなっているようにも見える。
 ・リンパ腫れ等:エコーからは明確な腫れは見当たらない。
 ・核グレード3(異系型:2、核分裂:3)
 ・Ki67:95%
 ・エストロゲンレセプタ:陰性
 ・プロゲステロンレセプタ:陰性
 ・HER2:ほぼ陰性2+(現在FISH検査待ち)
=> トリプルネガティブ(FISH結果により変わる可能性あり)
  ステージ2だろうとのこと。
[今後の検査&手術日程]
来週:授乳中であるためMRIの画像診断が難しく再度詳細なエコー及び骨シンチ、CTを撮る予定です。
再来週:化学療法開始または手術を実施する予定です。
[医師から提示されている治療方針]
医師から提示されている治療方法は以下のパターンです。
 パターン1:
– 術前化学療法(Weeklyタキサン系12回3ヶ月) => Monthly AC4クール3ヶ月 計6ヶ月
 *Ki67が高値であることから毎週腫瘍サイズを確認しながら手術に切り替えるか判断する
– 手術(部分摘出の場合には放射線)
 パターン2
– 手術(部分摘出の場合には放射線)
– 術後化学療法(Weeklyタキサン系12回3ヶ月) => Monthly AC4クール3ヶ月 計6ヶ月
[遺伝性乳がん・卵巣がんについて]
・親族の乳がん履歴もあることと若年での卵巣がんもあることからBRCA変異も疑われており検査を検討中です。
 *BRCA変異ありの場合、同側、反対側も乳癌にかかる可能性が4割と高いため(Haffty 2002論文による)
  検査結果によっては全摘も可能性としては排除しない方針です。
 
◆質問
[過去のCT実施状況とKi67]
・2013年6月(約2年前)まで半年に1回のペースでCTを受診しておりました。(卵巣がん経過観察のため)
 2年で2.4cmにまで大きくなるものでしょうか?
・授乳とKi67高値は関係してくるものでしょうか?
これらを知ったからといって何か対策を打てる訳ではないのは分かっておりますが、心のモヤモヤをとるためです。
[使用する薬剤と順番]
卵巣がんで用いた薬剤が奏功したことを踏まえてご教授頂けると幸いです。
(CA125値:術前108 => 術後:98 =>TC開始翌月:22 以降カットオフ値以下の10台をキープしております。)
・FISH検査によりトリプルネガティブと判断されたときにはどのような薬剤をどのような順番.期間で用いることを推奨しますか?
 そしてその理由を伺えると幸いです。
・FISH検査によりHER2となった場合にどのような薬剤をどのような順番,期間で用いることを推奨しますか?
 そしてその理由を伺えると幸いです。
[術前化学療法と術後化学療法]
先生が温存目的以外の術前化学療法を推奨していないことは理解した上でご質問させてください
・術後化学療法による効果判定は非常に難しいのではないかと感じております。奏功しているかどうか。
 奏功したかどうかは再発したかどうかが判断基準となるのでしょうか?
・逆に術前化学療法はその薬が効いているかどうかの指標になるとも思っております。
 腫瘍そのものを体内に残し続けるリスクと術後の薬剤奏功の是非とのトレードオフと考えればよろしいでしょうか?
[予後について]
・サブタイプがグレード3 Ki67:95%ということがやはり気になりますが予後はやはりステージで決まる物でしょうか?
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 5年前の「卵巣癌」から今回の「乳癌」お気持ちお察しします。
 cT2(24mm), cN0, cStageⅡA
 十分な早期乳癌です。
 この状況で「骨シンチは不要」と思いますが、「大学病院」でしょうか?

回答

「2年で2.4cmにまで大きくなるものでしょうか?」
⇒2年前に、「CTで描出できなかった」状況は十分あり得ます。
 超音波検査であれば、「数ミリで描出」した可能性はあります。
 
「授乳とKi67高値は関係してくるものでしょうか?」
⇒関係無いと思います。
 Ki67は「細胞分裂期にある癌細胞の割合」を示しています
 授乳とは無関係です。
 
「FISH検査によりトリプルネガティブと判断されたときにはどのような薬剤をどのような順番.期間で用いることを推奨しますか?」
⇒EC(もしくはAC)x4回(3カ月)その後weekly PTXx12回(3カ月)です。
 トリプルネガティブでは「アンスラタキサン」を推奨します。
 更に、トリプルネガティブでは「タキサンのメニュー」としてはweekly PTX > triweekly DTX > triweekly PTX というデータがあるからです。
 「アンスラサイクリンのメニュー」としてはACx4とFECx6が同等というデータがあります。
 ACとECの直接比較はありませんが、「CAF = CEF」というデータがあるのでECとACは同等と考えます。
 
「FISH検査によりHER2となった場合にどのような薬剤をどのような順番,期間で用いることを推奨しますか?」
⇒EC(もしくはAC)x4回(3カ月)その後DTX+HERx4回(3カ月)⇒HERx12回(9カ月)が最もエビデンスの高いレジメンです。
♯DTXの部分をPTX(weekly x12)に替えてもOKです・
 ただ、質問者が「リンパ節転移無」であることを考慮すると、
 「非アンスラサイクリン系レジメンである」以下のレジメンも考慮されますが、最強を狙うなら上記レジメンです。
 「DTX,カルボプラチン、HER」を6回⇒「HER単剤」で12回」
 「weekly PTX+HER」を12回⇒「HER単剤」で9カ月
 「DTX, エンドキサン、HER」を4回⇒「HER単剤」で9カ月
 
「術後化学療法による効果判定は非常に難しいのではないかと感じております。奏功しているかどうか。 奏功したかどうかは再発したかどうかが判断基準となるのでしょうか? 」
「逆に術前化学療法はその薬が効いているかどうかの指標になるとも思っております。」
⇒この辺のことを皆さんが考える気持ちは解りますが、おそらく『重要な事が抜けている』と思います。

術前化学療法について重要な点

①化学療法は術前に行っても、術後に行っても効果は同じ
②(術前術後に用いることができる)抗がん剤は「アンスラサイクリン」と「タキサン」しかない
③術前抗がん剤の奏功(効果)と予後の関係については「完全寛解では予後良好」ということしか解っていない
④(もしも、抗がん剤が効かないとしても)「術前に(大きな腫瘍がある状態で)効かない」ことと「術後で(腫瘍やリンパ節など目に見える癌が無い状態で)効かない」事では「意味するところが異なる」
 ⑤術前抗がん剤が効かない場合、「腫瘍が増大したり、転移が進行したりして、最悪手術不能となる」
 よく「抗がん剤の効果を知るために、術前に抗がん剤しましょう」という医師が散見されますが…
 ②の事実があるのです。
 『術前抗がん剤でアンスラタキサンが効かなかったから、別の○○を使いましょう』みたいなことができないのです。(保険上適応が無いし、有効性も不明)
 
★それでは「何のために、(術前に)抗がん剤の有効性を調べるのでしょうか?」
 「それでは、違う○○という抗がん剤を試しましょう」などとはできないのです。
 そもそも「大きな腫瘍に目に見える効果がなくても、(画像上見えないような)小さな病変に効果が無い」と言えるのでしょうか?(誰も証明できていません)
 以上より、「再発予防として、効果があるかもしれない」アンスラタキサンは行うべきと考えます。
 術前抗がん剤をすることで「アンスラタキサンが(目に見える腫瘍に)有効かどうかを調べているうちに」
 『有効ではなかった。 残念ながら腫瘍が増大して、手術不能となりました。今後はQOLを重視した治療としましょう』となったとしたら、それは意味のあることですか?
★結局トリプルネガティブ乳癌で行うべき(行う事ができる)治療は決まっているのです。
 「手術」「アンスラタキサン」です。(他の抗がん剤は再発しない限り適応はないのです)
 再発を極力なくすために「効果がどの程度あるかなんか調べている場合では無い」のです。
 できることが限られている以上、「やれる事は全てやる」という意識が重要です。
  
 術前抗がん剤をすることで以下のリスクが生じます。
・腫瘍が増大するリスク
・増大した腫瘍から、全身へ拡がるリスク
 手術後に行えば(どの程度有効なのかは不明ですが)
 上記のような(術前抗がん剤をすることによる)リスクは全くなくなります。
 「どの程度効くかなど試す事に意味がありますか?」そんな事よりも「再発を極力減らす最善の可能性にかけた方がいい」
 これが私の考え方です。
  
「腫瘍そのものを体内に残し続けるリスクと術後の薬剤奏功の是非とのトレードオフと考えればよろしいでしょうか?」
⇒私には全く「トレードオフ」になっているように見えません。
 「効果など解っても解らなくても、やること(できること)は同じなのだから」
 質問者は「何故、効果が知りたいのですか?」 「効果がなければ、違う薬剤を使えると思っているのでしょうか?」
 
「サブタイプがグレード3 Ki67:95%ということがやはり気になりますが予後はやはりステージで決まる物でしょうか?」
⇒サブタイプは「治療法の選択」にのみ使用してください。
 ステージが低ければ予後良好です。(同じステージ同士では、サブタイプにより若干の差はありますが…)サブタイプで予後を語るのは全くナンセンスです。