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乳がんの温存手術

[管理番号:1073]
性別:女性
年齢:55歳
右の乳房に直径1.6cmと9mmの2つのがんが見つかり、
来週乳房温存摘出手術の予定です。
その後、放射線治療をする予定ですが、気になる事があります。
放射線治療を行うと、皮膚が弱くなるので、
万一再発→全摘手術→乳房再建となった場合、
皮膚がもたないので、再建できないと聞いたことがあります。
それは、本当でしょうか。
それを考えた場合、最初から全摘手術→乳房再建にした方がいいですか。
胸に異物を入れるのも抵抗がありますが。
また、温存手術にした場合、放射線治療は、今の病院ではできません。
設備が無いからです。
放射線治療から、先生の病院でお願いすることはできますか。
その場合、トモセラピーが有効なのでしょうか。
なるべく体に負担のない放射線治療を希望しています。
ご回答くださいますよう、よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 放射線照射後の乳房再建は皮膚の問題があるので困難となることは事実です。
 ただ、自家組織による筋皮弁再建など影響を比較的受けにくいものもあります。
 形成外科医によっても若干の考え方の違いが有るようです。

回答

「それを考えた場合、最初から全摘手術→乳房再建にした方がいいですか。」
⇒ご本人次第です。
 乳房内再発を最初から想定されるのは「乳腺外科医」としてはつらいところです。
 実際のところ、私自身は「乳房内再発は極めて少ない」と認識しています。
 
「放射線治療から、先生の病院でお願いすることはできますか」
⇒可能です。
 その場合は「担当医から直接、当院放射線科紹介」となるでしょう。
 
「トモセラピーが有効なのでしょうか。なるべく体に負担のない放射線治療を希望」
⇒それこそ、トモセラピーが理想的です。
 照射の自由度(かけるべき部位に必要なだけの線量を、そしてかけたくない部位には極力線量が入らないようにする)こそが、トモセラピーなのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

いつも丁寧なご返答、ありがとうございます。
9月9日に右乳房2か所の癌切除、乳房温存手術をうけて、病理組織検査がかえってき
ました。
それをふまえた今後の治療について、教えていただきたくお願いします。
1右側B領域
腫瘍径:15×15mm(浸潤癌成分15×10mm)
組織型:浸潤性乳管癌・充実腺管癌
乳管内進展:(+)乳頭側方向、約5mm
波及度:g(+)、f(+)、ly(+)
リンパ管侵襲:ly1
静脈侵襲:v0
断端:側方(-)、5mm確保
   深部(-)、5mm確保
   皮膚側(+)、露呈(焼灼された乳管内進展成分)
異型度分類:核グレード:Grade1
2右側C領域
腫瘍径:10×7mm
組織型:浸潤性乳管癌・硬癌(広義)
乳管内進展:(-)
波及度:g(+)、f(+)
リンパ管侵襲:ly0
静脈侵襲:v0
断端:側方(-)、5mm確保
   深部(-)、5mm確保
   皮膚側(+)、5mm確保
異型度分類:核グレード:Grade1
non-sentinel LN(1/3)
ER:0、PgR:0、Ki―67 LI≒30%
HER2:陰性(1+)
Ki-67は高いところで、およそ30%の陽性率です。
B領域の病変は一部でアポクリン様の異型細胞を見る浸潤性乳癌(充実腺乳癌)です。
軽度のリンパ管侵襲や乳頭側方向への乳管内進展が認められます。
皮膚側断端に接する焼灼された乳管内進展と判断する成分が認められ、断端陽性と記載。
C領域の病変近辺に初回切除の断端があり、焼灼の影響で評価がやや困難となっています。
広義の硬癌に相当する成分と判断します。
腫瘍近傍に非浸潤性乳管癌に相当する成分がありますが、浸潤径を大きく超える進展
はなし。
観察し得る範囲では、脈管侵襲は明らかではありません。
追加切除された検体を以て断端陰性と判断しました。
(切除時途中で露出したため軌道修正、検体が途中で分かれたので補修したそうです。)
non-sentinel LNとして提出された検体のうち1個にB領域病変に由来する
転移が認められます。(間質反応を伴った直径4mm)
――――――――――
温存手術でしたが、B領域、皮膚側断端陽性でした。
主治医の先生は、皮膚側には乳腺がもう伸びていないので、問題ないと判断されました。
「腫瘍近傍に非浸潤性乳管癌に相当する成分があります」という一文も気になります。
追加切除する必要は、本当にないと思われますか?
放射線は、先生の病院のトモセラピーでお願いするつもりでいますが、
そのブースト照射が、効果があったりするのでしょうか。
トリプルネガティブでしたので、抗がん剤を先にするのですが、
主治医の先生からは、TC4回を勧められました。
私は田澤先生のQ&Aを見ていて、アンスラタキサンはどうかと聞いてみましたら、
「AC4回+T12回と、TC4回どちらでもいいので、金曜日までに決めて」と言われました。
田澤先生なら、どちらを勧められますか?
少しでも効果の高いほうは、AC4回+T12回になりますでしょうか。
その場合、放射線治療は、半年以上先になりますが、問題ないですか。
AC4回+T12回をするなら、後遺症の末梢神経障害がとても気になるのですが、
先生のご経験上、どれぐらいの後遺症が出ているとお感じになりますか。
いろいろと聞いてしまい、申し訳ありませんが、金曜日までの決断ができずにいます。
田澤先生の思われる最上の治療をお教えいただければ幸いです。
何卒、よろしくお願いたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

回答

「皮膚側には乳腺がもう伸びていないので、問題ないと判断」「追加切除する必要
は、本当にないと思われますか?」
⇒担当医と同意見です。
 病理医は「手術について知らない」ので、そのようなコメントを出すことがありま
すが、きちんとした手術をしていれば「皮膚側断端陽性」などありえまえん。
 
「そのブースト照射が、効果があったりするのでしょうか」
⇒「断端陰性」と判断しますが、「Boost照射がより有効」であることは間違いあり
ません。
 
「少しでも効果の高いほうは、AC4回+T12回になりますでしょうか。」
⇒その通りです。
 トリプルネガティブの標準治療はアンスラタキサンと思います。
 
「その場合、放射線治療は、半年以上先になりますが、問題ないですか」
⇒全く問題ありません。
 化学療法⇒放射線の順番が「標準治療」です。
 
「AC4回+T12回をするなら、後遺症の末梢神経障害がとても気になるのですが、先生
のご経験上、どれぐらいの後遺症が出ているとお感じになりますか」
⇒あまり問題ありません。
 weekly PTX(全12回)がTCのドセタキセルの4回より強いことはありません。
 タキサンの副作用としてはweeklyPTXはもっとも軽いと考えてください。