Site Overlay

温存か全摘+再建か?

[管理番号:2670]
性別:女性
年齢:40歳
田澤先生
初めまして、よろしくお願いします。
同じような質問が多いとは思いますが、是非、先生のご意見を聞かせて頂きたく、質問させていただきました。
左胸、左下1/4の比較的近いところに7ミリと2センチ7ミリのシコリがあります。
7ミリ→2月中旬に「穿刺吸引細胞診」を行い、粘液癌と診断。
27ミリ→2月末に「細胞診」で粘液癌と診断。
「hypocellularなpatternと、hypercellularなpatternがみられ、壊死を伴います」
3月頭に大学病院に転院しました。
温存は可能ですが、かなり整容性は崩れるとのこと。
温存か全摘かギリギリのラインで、全摘+皮下温存同時再建は可能。
乳頭までは癌細胞はいってなさそうなので乳頭、どうしようかな?みたいなことをおっしゃっていました。
3月に血液検査、CT造影、骨シンチ、MRI検査を受け、次の診察は4月初旬です。
私としては、「粘液ガンは、想像以上に広範囲に広がっていることがある。」と、どこかのサイトで見たことがあり、2つもシコリがあるので、また再発しそう。
温存して、整容性が崩れ、放射線治療も痛いと聞くし、1か月毎日通院することを考えると、体力のある今のうちに、再建までしておいた方がいいのではないか?
小学生の娘と息子がおり、まだ一緒にお風呂に入っているので、手術の跡を見たときの子供達のショックが少ない方が良い。
もともと、胸も小さくBカップほどで、温泉に入るときに人目が気にならなければいいと思っています。
最悪、乳頭乳輪だけ温存出来れば良く、今のところ、可能ならば、乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘出+同時再建。
手術時にエキスパンダーを挿入、半年後、コヒーシブシリコンを挿入。
もし、ここでトラブルが出た場合は、お腹の組織を使おうかと思っています。
乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘出の場合でも、+放射線治療になることはありますか?
また、出来れば、全摘して、ホルモン治療も受けたくないです。
10年間、毎年マンモグラフィーかエコーでの診察していたのですが、「両胸石灰化で1年後要検査」で、今回のしこりは、細胞診で初めて乳がんだと分かりました。
マンモグラフィーでは映らないタイプのものらしく、全摘して再建した場合、再発が分かりにくいのではないかとも思います。
全摘の方が、放射線を受けていない分、再発・転移しやすかったりしないかとも考えます。
先生なら、温存か全摘+同時再建?どちらをすすめますか?
人間ドッグで、10年間、腹部に肝血管腫疑い(8ミリ)と肝血管脂肪腫疑い(4ミリ)がありますが、これは、乳がんとは無関係でしょうか?もう既に転移してたりってことはありますか?慢性の肩こりや、最近、1週間ほどの間に首の左側にリンパ線のぷくっとした腫れを見つけ、転移じゃないか?など、色々不安が募ります。
宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「3月に血液検査、CT造影、骨シンチ、MRI検査」
⇒術式を考えるのは「MRI結果を見てから」にしましょう。
 そのための「乳房MRI」なのです。(検査にはそれぞれ意味があるので、意味の有る検査を受け、その結果で判断することが重要です)
 ○本当に意味の有る検査なのか? 厳しい目が必要です。
 ○骨シンチは必要でしょうか?
  全く無駄な検査です。 遠隔転移の可能性など全くありません。
  医療被曝や経済的負担などがあります。  
  ♯トップページの「今週のコラム 6回目 無駄どころか有害なのです」を是非ご参照ください。
 
「乳頭乳輪温存皮下乳腺全摘出の場合でも、+放射線治療になることはありますか?」
⇒リンパ節転移によっては「適応」がでてきます。
 0-3個 推奨度B
 4個以上 推奨度A
「出来れば、全摘して、ホルモン治療も受けたくないです。」
⇒大きな勘違いをされています。
 「手術」はあくまでも「局所療法」です。(局所療法は手術と放射線、全身療法はホルモン療法や化学療法などがあります)
 乳腺をどうするか(全摘にするのか? それとも部分切除にして術後放射線照射にするのか?)と「全身をどうするのか?」は全く別問題です。
 つまり乳癌治療は「局所療法(手術±放射線)」+「全身療法」でなりたっており、それぞれは完全に独立しています(つまり手術術式の選択と全身療法は全く無関係なのです)
 ○温存しても全摘しても、(サブタイプに応じた)全身療法を行う事には「全くかわりはない」のです。
 
「全摘の方が、放射線を受けていない分、再発・転移しやすかったりしないかとも考えます。」
⇒これも完全に勘違いしています。
 放射線はあくまでも「局所療法」です。
 照射する部位(乳腺)には効果がありますが、(全身にかけるわけではないので)
「全身の転移を防ぐ働きはありません」
 
 ○温存して放射線照射をしても、全摘には敵わないのです(ただし、乳頭を残すと、その部分に乳管を残す事となります)
 
「先生なら、温存か全摘+同時再建?どちらをすすめますか?」
⇒画像所見がないので、整容性について「意見を述べる事は不可能」です。
 ただ、「乳房再建」は「想像以上に手間がかかる」ものであることの認識は必要です。
 
「人間ドッグで、10年間、腹部に肝血管腫疑い(8ミリ)と肝血管脂肪腫疑い(4ミリ)がありますが、これは、乳がんとは無関係でしょうか?」
⇒無関係です。
 
「もう既に転移してたりってことはありますか?」
⇒ありません。
 乳癌は初期治療の段階では「そう簡単には全身には転移しない」のです。
 だから「骨シンチは不要」といっているのです。
 
「慢性の肩こりや、最近、1週間ほどの間に首の左側にリンパ線のぷくっとした腫れを見つけ、転移じゃないか?など、色々不安が募ります。」
⇒1000%ありません。
 乳癌が(万が一)転移する場合には、典型的な部位があるのです。
 そんなところには転移は決してありません。
 ご安心を。