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オンコタイプ DXについて

[管理番号:2752]
性別:女性
年齢:53歳
始めて質問させていただきます。
いつも乳癌プラザのQ&Aを拝見しています。
毎年都内病院の人間ドックを受けており、12月末に乳癌告知を受けました。
今年2月中旬に右胸の温存手術を受けました。
年齢53歳(閉経前)です。
施術前の細胞診ではHER1+で陰性だったのですが、術後の病理検査の
結果 HER2+の擬陽性になりfish法の結果待ちでした。
fish法では陰性になり、現在オンコタイプ DXを申し込んでお
り、その結果待ち(4月下旬に結果が出ます)の状態です。
病理組織結果および所見は下記の通りです。
組織分類
Invasive ductal carcinoma, papilloutubular carcinoma
(浸潤性乳頭線管がん?)
切除術:Bp+SNB 7.0×8.0×3.0
右upper-outer(c)領域
腫瘍径:1.00×0.70×1.10cm 腫瘍径 in situ ca含む
5.00×5.30×1.80cm
核異型スコア:2 核分裂スコア:2(6/10HPF)核グレード:2
ER8,P&R8,HER2:score2,強陽性0%、中等陽性10%、弱陽性20%
波及度gf、リンパ管侵襲:ly0、静脈侵襲:v0
断片:皮膚側-、深部側-、測方close 0.6mm in situ♯39 乳頭側

リンパ節転移:合計(0/2,i-)SNB(0/2)
Status primary,UICC 7th:pT1c pNO MO stage 1A, Jap 17th:pT1c pNO MO,Stage 1
Solid type, pagetoidなin situ病変を伴います。
——————-
術前の病理検査で Ki-67は27%との結果ですが、術後は聞いておりません。
ルミナルAタイプとBタイプのちょうど中間ではないかということでした。
そこで田澤先生にご相談です。
今オンコタイプを結果待ちで、その結果次第では抗がん剤を上乗せするべきか、
そのまま放射線治療に進むのか4月下旬に治療方針を決めることになります。
出来れば抗がん剤は避けたいと思っていますので、オンコタイプの結果が低スコアであった場合は迷わず放射線治療に入る予定です。
しかし中スコア以上の場合に、抗がん剤の副作用と再発リスクを天秤にかけて迷うと思います。
そこで田澤先生にご質問です。
1)上記の病理結果を踏まえてオンコタイプのスコアがどのくらいの値であった場合に、抗がん剤を上乗せしたほうがいいでしょうか?
2)オンコタイプの結果が出るタイミングが、術後約2ヶ月経過することになります。
今後の治療方針は即決しなければならないので
しょうか?それともまだ少しは猶予あるのでしょうか?
3)オンコタイプが中スコアであった場合、抗がん剤をやった場合と、やらなかった場合の再発率を教えてください。
抗がん剤をやることによってどれぐらいの上乗せ効果があるか知りたいと思います。
4)またその場合、田澤先生はどのような抗がん剤を勧められるでしょうか?
5)抗がん剤を受けた場合、癌には効果があったとしても副作用が心配です。
もちろん短期的な副作用も怖いのですが、体に対する長期的なダメージ(例えば肝臓や心臓に負担がかかるなど)その点が心配です。
癌はたたけても他の病気のリスクが上がるということもあるような気がします。
そのあたり再発率と副作用のバランスはどのように考えればいいのでしょうか?
6)Pagetoidという耳慣れない英単語が所見にありました。こちらはどのような癌でしょうか?
7)またpagetoidの予後は悪いのでしょうか?
乳癌告知以来、本を読み漁ったり、ネット検索もたくさんしましたが
不安になるばかりでした。
この乳癌プラザの田澤先生の Q&Aのみがなぜか読んでいて
落ち込まず不安な気持ちにもならず、客観的な乳癌の知識が増えたような気がします。
よろしくお願いいたいます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「1)上記の病理結果を踏まえてオンコタイプのスコアがどのくらいの値であった
場合に、抗がん剤を上乗せしたほうがいいでしょうか?」
⇒RS>30(高リスク)は(OncotypeDXをやったからには)当然と思います。
 問題は中間リスクですが、RSが「いくつ以上」というよりも、「中間リスクだっ
た場合には、どうするか?」ということだと思います。
 
○NewAdjuvant.comを用いると「化学療法による上乗せは僅か3%」となります。
 それを踏まえ「中間リスクは化学療法をしない=RS>30のときにのみ化学療法をする」という理解でいいと思います。
 
「2)オンコタイプの結果が出るタイミングが、術後約2ヶ月経過することになります。
今後の治療方針は即決しなければならないのでしょうか?それともまだ少しは猶予あるのでしょうか?」
⇒余裕はあります。
 
「3)オンコタイプが中スコアであった場合、抗がん剤をやった場合と、やらなかった場合の再発率を教えてください。抗がん剤をやることによってどれぐらいの上乗せ効果があるか知りたいと思います。」
⇒ホルモン療法のみで15%
 ホルモン療法+抗がん剤で12%
 
「4)またその場合、田澤先生はどのような抗がん剤を勧められるでしょうか?」
⇒3%の上乗せでは「勧めません」
 
「5)癌はたたけても他の病気のリスクが上がるということもあるような気がします。
そのあたり再発率と副作用のバランスはどのように考えればいいのでしょうか?」
⇒この辺りのバランスが「上乗せが2桁(10%以上)ならば、抗がん剤を勧める」という位だと思います。
 
「6)Pagetoidという耳慣れない英単語が所見にありました。こちらはどのような癌でしょうか?」
⇒これは「非浸潤性乳管上皮と基底膜との間に腫瘍細胞が入り込んで進展する像」のことです。
 癌が「乳管内進展」として「乳管沿いに拡がる」進展形式のひとつです。
 ★「浸潤癌が経乳管的に乳頭表皮に進展したもの をPagetoid癌」といいますが、それを指している訳ではありません。
 
「7)またpagetoidの予後は悪いのでしょうか?」
⇒予後とは無関係です。
 だたの「乳管内進展の形式のひとつ」を表す「病理用語」に過ぎません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は回答ありがとうございました。
こちらのサイトを拝見させていただくようになって、田澤先生の仕事に
掛ける情熱とプロ意識には本当に感激致しました。
私自身は乳癌を患っ
てから仕事への意欲や、健康への自信をすっかり失っておりました。

ルマラソンやホットヨガを趣味とし、常に健康に気を付け、今まで病気
をしたことがなかっただけに、受け入れるのにすごく時間がかかりまし
た。
ただ先生の仕事にかける情熱に刺激されて、また前向きに動き始め
ることが出来ました。
本当にありがとうございます。
再度ご質問です。
1)RS>30(高リスク)は(OncotypeDXをやったからには)当然と
思います。
という前回の先生の回答、「やったからには」というコメントについて
質問です。
私の病理結果の場合(1期、リンパ節転移なし、ルミナルAと
Bグレーゾーン)、先生であればオンコタイプは勧めなかったというこ
とでしょうか?主治医の先生に強く勧められた訳ではなく、そういう方
法もありますとご提案いただき自分で決めたことではあるのですが、本
当にそこまで調べるべきだったのか、今更ではありますが、先生だった
らどのようにアドバイスされるのか教えてください。
2)またオンコタイプDXが高リスクだったにも関わらず抗がん剤に踏み
切れず、放射線とホルモン治療のみ行った場合は、再発率や生存率はど
のように変わるのでしょうか?
3)乳がんに限らず病気になったのであれば、治療を粛々と行うことが
大事であると思っております。
と同時に精神的な気持ちの在り方が非常
に重要な気がします。
しかし告知から検査とその結果待ち、手術、術後
の病理結果、再発防止のための治療方針など、一つの数字にどうしても
一喜一憂してしまいます。
私は手術の恐怖や痛みより、精神的な面がと
てもつらく感じます。
先生はたくさんの乳がん患者を診ていらっしゃっ
たと思いますが、気持ちを強く持ってサバイブしている方もたくさんい
らっしゃるのではないでしょうか?その方たちに共通している心の持ち
方があれば教えていただけないでしょうか。
その方の受け止め方とか、
性格的な面が大きいとは思いますが、何かヒントをいただければとても
嬉しいです。
ピントが外れた質問でしたら、申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「やったからには」というコメントについて 今更ではありますが、先生だったらど
のようにアドバイスされるのか教えてください。」

⇒これは「アプローチの違い」です。
 Oncotype DXを否定しているつもりはありません。
 ただ、「Oncotype DXが絶対的な存在」と考えている訳でもありません。
 Oncotype DXも結局は(膨大な数の遺伝子の中で有る特定の集団を選択し、その集
団の変異のパターンと、そのパターンでの治療効果や予後を統計学的に処理」したも
のにすぎません。
 その意味では「NewAdjuvant.com」は「病理学的情報を用いた統計」ですから、 あくまでも「アプローチの仕方の違い」だけとも言えます。(ただOncotypeDXは個人の遺伝子情報を基にしている分、より個別化されており、真実に近い可能性があることを期待しているのです)
 ○「やったからには」というコメントの真意は…
  このように「病理学的因子からの統計」と「特定の遺伝子変異からの統計」のど
ちらを優先すべきか? 結論はでません。
  その上で、(保険適応のない)「高額な遺伝子検査を施行」したからには、「そ
の結果を優先」しなければ理に合わない(お金がもったいない)と思います。(最終
的には総合的に判断するとしても)
 
「2)またオンコタイプDXが高リスクだったにも関わらず抗がん剤に踏み切れず、放射線とホルモン治療のみ行った場合は、再発率や生存率はどのように変わるのでしょ
うか?」

⇒「NewAdjuvant. Comの数字」は前回、示した数字と変わりません。
 ただし、その場合「OncotypeDXでは、全く異なった数字」が出ている筈です。
 それはアプローチの仕方が異なるから、「統計学的な数字が異なるのは当然」であ
り、どちらを信用するのかの結論はでません。
 ただ、(話は元に戻りますが) せっかく高額な「アプローチ法」を選択したの
に、「その結果を優先」しなければ「無駄な検査」となってしまいます。
 
「その方たちに共通している心の持ち方があれば教えていただけないでしょうか。」
⇒いろいろな患者さんがいらっしゃいます。
 皆さん、それぞれに「病状や置かれている立場」が異なります。
 そのさまざまな異なる背景の方に共通する「魔法の言葉などない」というのが私の
結論です。
 ○最後は「時間が解決」します。
 どんなに「心配な状況にあり、また心配性気味の方でも」時間が経てば「克服でき
る」のです。