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乳がんの疑いとの診断

[管理番号:421]
性別:女性
年齢:35歳
ここ数日、左胸乳房脇に定期的にズキンズキンという痛みが走っておりました。
「生理前だからかな?それにしてもいつもより痛いな」と思っていたところ、5/13朝に痛みで目が覚め、ふいに乳房を触ったところ、5cm程あるしこりに気づき、同日慌てて乳腺外科を受診しました。
病院に行ってから思い出したのですが、
昨年10/21に同病院で乳がん検診をして、下記の結果をいただいておりました。
乳腺エコー:左乳房に低エコー域を疑います
総合的に乳腺症と考えます。
3ヶ月後に乳腺超音波検査を予約してください。
 
5/13日
触診とエコーをして、先生から言われました。
「リング形状型のしこりが確認 できます。真ん中が真っ黒いのは、汚水が溜まっていると思われます。痛みはしこりが何らかの炎症を起こしてくるものでしょう。7ヶ月でこんなに大きくなるしこりは悪いものかも知れないので、明日さっそくマンモグラフィ、造影剤を使ったMRI、針生検をしましょう。」
 
5/14日
・マンモグラフィの結果
「乳がんの場合に多く見られる石灰化は確認できません。」
・MRIの結果
「造影剤投与後1分で造影剤が集まってきています。造影剤投与後2分以降、さらに造影剤が集まっています。がんの場合は2分以降から造影剤が周囲に逃げて行くパターンが多いのですが…現状ではなんとも。」
・針生検
5/22に結果が出ます。
 
しこりの大きさは3.7cmでした。
がんの疑いが拭いきれない理由を聞きました。
1.造影剤が集まって来ているということ。
2.乳がんでない場合、見当がつく病気が稀であること。
 
【補足】
今年1/31に子宮頸部の円錐切除手術を行いました。
子宮頸部高度異形性(CIN3)
術後は順調で、現在は半年間隔の様子見となっております。
 
昨年の乳がん検診結果「3ヶ月後に乳腺超音波検査を予約してください。」の頃はちょうど手術をしており、言い訳ですがそれどころじゃなかった…というのと、まさかね…と甘く見ておりました。
手術後に乳がんの疑い、なぜ私ばっかり…と浮き沈みの激しい毎日です。
子どもを強く望んでおり、なかなか妊娠せず、ちょうど不妊検査を始めるところでした。
がんの場合、子どもを望めないのか…と絶望感で溢れています。
5/22 の検査結果がとても怖いです。
お伺いしたいのは、乳がんである可能性と、子宮頸部高度異形性との関係性です。
 
お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご回答どうぞよろしくお願いいたします。
(2015年5月の質問)
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「急に大きくなった」しこりですね。
 (7か月前の)「左乳房に低エコー域を疑います」が参考になりそうです。

回答

「乳がんである可能性」
⇒参考にしたいのは、
「7か月で3.7センチ」「リング型のしこり、真ん中が真っ黒い」「7か月前の左乳房に低エコー域」
⇒やはり乳癌が疑われます。
 ただ、MRIの造影パターンで「2分以降=後記相」にも漸像していたとすれば、「やや?」がつきます。
 
 増殖スピードの大きな腫瘍として他の候補として

  • 「葉状腫瘍」もありますが、 『7か月前の乳腺症を疑う低エコー域が今回増大した』とすると、「葉状腫瘍は除外」されます。
     葉状腫瘍は「明らかな腫瘍」としか見えないので「乳腺症と疑われる」事は無いのです。
     
  • 「肉芽腫性乳腺炎」
     これは、良性病変(自己免疫が関与する炎症性疾患)なので「MRIの所見」も「痛みを伴う点」も矛盾はしません。
     画像上、乳癌を疑われることも多い。
     ただ、「結構稀なので」可能性が高いとは言いにくいのです。(針生検では区別がつきます)
     ⇒肉芽腫性乳腺炎の場合には「ステロイドによる治療」となります。 
     「肉下種性乳腺炎」を診療したことの無い医師であると「誤診や、それに伴う誤った治療」が行われるので注意が必要です。

「子宮頸部高度異形性との関係性」
⇒これは全く関係ありません。
 「乳腺と子宮」は「卵巣からのエストロゲンの影響を受ける点」では共通ですが、実は全く関係ありません。
 むしろ関係があるのは(遺伝性乳癌卵巣がん症候群があるように)卵巣がんなのです。
 
◎頻度からして「乳癌を強く意識した」診断が必要なことは言うまでもありません。
 しかし、「針生検で乳癌でなかった」としたら、「肉芽腫性乳腺炎」なども考えなくてはなりません。
 その場合には「経験豊富な乳腺外科医」でないと、誤った治療をされることがあるので(実際に他院『有名な亀○総○病院』でとんでもない診療をされていた患者さんを私は今診療しています)注意が必要です。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2 乳がんⅡb 治療方針】

先生、お忙しいとろご回答ありがとうございます。
針生検の結果、乳がんⅡb(しこり4.3ミリ、おそらくリンパ転移1)の結果でした。
現在PETの結果待ちで、6/2に治療方針を決める予定になっています。
急速成長しているため化学療法が有効の可能性あり、現時点では化学療法の後、手術が望ましいと言われています。
疑問や不安がたくさんあり、今回も先生の助言をいただけると幸いです。
発覚から現在に至るまで、左乳房に刺すような激痛が続いています。
また左脇の下、左腕にかけてヒリヒリ・ジンジンとした感覚が治まりません。今では痛くない時を忘れてしまいました。
眠れない時は処方してもらった痛み止め(ロキソニン)を飲んでいます。
痛みを伴うことについて医師には「炎症によるもの」と言われておりますが、激痛が走るたびにしこりが大きくなり、そして浸潤、転移しているのではと、とても不安です。
また、将来出産を望む場合、受精卵の凍結についてもお話をいただきました。
子どもをあきらめ一刻も早く治療を開始するべきか、ひとつの可能性をたくしがんの進行に目をつぶるべきか、2つの選択で揺れています。
伺いたいことは下記の6つです。
1 激痛が走る症状はめずらしくありませんか。
2 激痛が走る症状は、がんがだいぶ進行しているということでしょうか。
3 急速成長しているため、浸潤・転移も早いのでしょうか。
4 治療を遅らせると、その分がんが進行するのでしょうか。
5 治療を1ヶ月遅らせた際のリスクを教えてください。
6 化学療法の後手術という治療方針に、先生のご意見お聞かせください。
たくさん質問して恐縮ですが、ご回答どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 私の経験では結構ある状況です。
 担当医からは「化学療法を先行して、癌の勢いを止めてから」手術をした方がいいと言われがちです。
 本当に「担当医を信じていいのか?」
 注意が必要です。

回答

「急速成長しているため化学療法が有効の可能性あり、現時点では化学療法の後、手術が望ましいと言われています」
⇒かなり「怪しげな」コメントです。
 「昨年10/21の『総合的に乳腺症と考えます』とされた所見が本当は乳癌だった」とすれば、別に「急成長」ではなく、ただ単に「診断が遅れた」という事だと思います。
★「術前化学療法の適応」はあくまでも「術前化学療法により、腫瘍を縮小させて温存手術を狙う」だけなのです。
 本当に「急速成長」しているのであれば、(本当に効くか保障のできない)化学療法をするよりは、「手術で切除する」方が確実なのです。
 
「1 激痛が走る症状はめずらしくありませんか。」
⇒珍しくはありません。
 特に「悪いことを想像」する必要はありません。
 
「2 激痛が走る症状は、がんがだいぶ進行しているということでしょうか。」
⇒違います。
 そのように考える方が多いことは「このQandAだけではなく」日常診療から承知しています。
 ただ、私は「あまりにも多くの患者さんを診療しているので、知っているのですが」乳癌は「全身に進行するのは」相当な時間が必要なのです。
 質問者は「ステージⅡB」との事ですが、その状態で「遠隔転移など」は全く考えられません。安心してください。
 
「3 急速成長しているため、浸潤・転移も早いのでしょうか。」
⇒この「急速成長」というのが「かなり怪しい」と思います。
 「昨年10/21の『総合的に乳腺症と考えます』とされた所見」が「乳癌」だとすれば、「特に急速成長とは言えない」と思います。
 ただ、(不幸なことに)診断が遅れたという事だと私は考えています。
 
「4 治療を遅らせると、その分がんが進行するのでしょうか。」
⇒癌は「進行性」なので、「無意味に遅らせる」のはお勧めできません。
 
「5 治療を1ヶ月遅らせた際のリスクを教えてください。」
⇒全く問題は無いと思います。
 「○研○明」などのブランド病院はそもそも「手術は2か月待ち、3か月待ち」となってます。(正しい選択とは思いませんが…)
 それを考えれば「1か月遅らせる」事が「乳癌の手術には、あまり影響がない」事がわかります。
 担当医は「急速成長」という言葉を使っていますが、私が思うには「10月にすでに所見があったけれど、診断されなかった」だけで、特に「急速成長」だとは思いません。
★乳癌に「急速成長」なものなど、見たことがありません。
 
「6 化学療法の後手術という治療方針に、先生のご意見お聞かせください。」
⇒私は(安易な)術前化学療法には反対です。
 「術前化学療法の絶対的適応は、化学療法により縮小させて乳房温存術を狙う」だけです。
 『急速成長しているから』という理由は全く賛成できません。
 もしも「化学療法が効かなかったら?」どうでしょうか?
 「手術不能」となってしまいます。
 もしかしたら、「治療が効かない間に」リンパ節転移が広がったりするかもしれません。
 「化学療法は効くはずだ」という前提は間違いです。
 「化学療法が効かなくて」手術が出来なくなるくらいに増大してしまった例を経験してしまうと「安易に術前化学療法を勧めることができなくなる」のです。
 
★もしも質問者が「術前化学療法をして4.3センチの腫瘍を小さくして、乳房温存術をしたい」という可能性にかけたいので無ければ「手術先行」とすべきです。
 術前化学療法が『「化学療法が効く筈」という根拠の無い賭け』であることに注意が必要です。