Site Overlay

母が乳癌と診断されました

[管理番号:409]
性別:女性
年齢:30歳
母が乳癌と診断され、とても不安でいろいろ調べていたところこちらのサイトを見つけぜひ先生のご意見を聞かせていただければと思い相談させていただきます。
昨年の秋頃から乳首~乳首横にただれ(出血なし)があり年明け1月に乳腺外科を受診。
・マンモ、エコーで異常なし。
・分泌液細胞診を二回実施しましたがグレーで癌細胞やパジェット細胞はでませんでした。
4月まで抗生物質の塗り薬で様子を見て月に1度の診察を行っていました。悪化はしていませんが良くもなりませんでした。
 
4月末に大きな病院を受診。
・エコーで腫瘍を発見
・MRIにて2、6センチのシコリを乳首下(ただれの下辺り)に発見。
・針細胞診にて悪性
・腫瘍マーカーでは上昇は見られず
・CT検査では他臓器転移なし、皮膚の浸潤あり、リンパ節に疑わしい所あり
との事でした。
 
①今まで毎年検診を受けておりましたが、乳首下とゆうのはこの大きさになるまで発見できないのでしょうか?
②細胞分泌液を二回してグレー、腫瘍マーカーでの数値上昇が見られない事もあるのでしようか?
③手術は月末に全摘を予定しております。このようなケースは手術後、抗がん剤や放射線治療も必要になるのでしようか?
どうぞ宜しくお願い致します。
(2015年5月の質問)
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 パジェット病については、「経験のある乳腺外科医」が、「パジェットを疑って生検」をしない限り今回のような3カ月も無駄な事となってしまいます。
 是非とも、この「QandAをみた」同じような症状の方の参考にもなってほしいと思います。
 そう簡単には「擦過(分泌)細胞診で陽性とはでません」

回答

「①今まで毎年検診を受けておりましたが、乳首下とゆうのはこの大きさになるまで発見できないのでしょうか?」
⇒乳頭下は確かに「検査しにくい」部位です。
 乳頭が邪魔になり、「超音波では見ずらい部位」です。
 ただ、「マンモグラフィーでは解る筈」です。
 
「②細胞分泌液を二回してグレー、腫瘍マーカーでの数値上昇が見られない事もあるのでしようか?」
⇒細胞分泌液とは「乳頭分泌があったのでしょうか?」
 私の想像では「じゅくじゅくしている皮膚表面をスライドガラスで擦ってする細胞診(擦過細胞診)」だと思うのですが?如何でしょうか?
 ただ「分泌液の細胞診」にしろ「擦過細胞診」にしろ、「大した参考にもならない検査であり、実際これらで陽性となることは稀」です。
⇒本当に「パジェットを知っている乳腺外科医」ならば、「視診で疑い」(そんなことはせずに)「生検」してしまいます。
 
 腫瘍マーカーですが、これは「かなりの誤解」があるようです。(実際、似たような事を患者さんから良く言われます)
 私の経験上、「乳癌での腫瘍マーカー (CEA とか CA15-3とかですが)は正常が当たり前」です。
 早期乳癌は勿論の事、「リンパ節転移が明らかな4~5cmもある乳癌」でも「腫瘍マーカーは正常」です。
★「服の上からでも解る程の大きな腫瘍」や「遠隔転移(臓器転移)」がある場合しか「腫瘍マーカーは異常値とはなりません。
⇒つまり「腫瘍マーカーが正常だから、乳癌では無い」なんて事は「とんでもない誤解」です。
 
「③手術は月末に全摘を予定しております。このようなケースは手術後、抗がん剤や放射線治療も必要になるのでしようか?」
⇒実は、「メール内容には、これを判断する内容が全く無い」のです。よって、どういう場合に必要になるのかを以下に記載します。
「抗癌剤が必要なケース」
サブタイプとして
1.トリプルネガティブ
2.HER2タイプ
3.Luminal B(所謂トリプルポジティブも含む)
◎サブタイプとは?
 組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
  エストロゲンレセプターの発現(ER)
  プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
  HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
  ⇒これらの組み合わせで
  ●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
  ● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
  ●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
  ●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
   ※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
 
「放射線治療が必要なケース」
リンパ節転移が1~3個(推奨度B:やった方が良い)
リンパ節転移が4個以上(推奨度A:必ずやるべき)
  
◎つまり「抗癌剤については、サブタイプで決める」「放射線については、リンパ節転移数(術後判明)によって決める」のです。
 

乳癌の治療

 乳がんの治療は「局所療法」と「全身療法」によって成り立っています。
「局所療法」
乳腺及び領域リンパ節の部分に対してだけの治療
手術と放射線照射があります。 ※手術なしで放射線照射単独はありえません。
①乳房温存術の場合 術後に必ず「温存乳房照射」を行います。
②乳房切除の場合 原則、「術後照射はありません」 しかし、「リンパ節転移陽性」の場合には「胸壁+鎖骨上リンパ節」照射を行うことが多い
 
「全身療法」 
血液の中に入って、全身に作用する治療
術前化学療法のように、「術前」に行う事もありますが(小さくしてから手術する)、殆どは術後に「再発予防目的で」行われます。
①ホルモン療法が効く場合⇒ホルモン療法
②ホルモン療法が効かない場合⇒化学療法
③HER2陽性の場合⇒ハーセプチン(分子標的薬)+化学療法
 実際には①の中にも化学療法も適応となる場合(luminal B)や①+③の場合(luminal B HER2陽性)などもあります。