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乳ガン術後の診療について

[管理番号:2484]
性別:女性
年齢:50歳
初めて質問させていただきます。
12月○○日が初診で、
マンモやエコー、針生検を行い、翌月5日に乳ガン診断を告知されました。
その後、
MRIや体幹CTの結果
ER90%
Pgr40%
HER2ーFish 1.1 陰性
Ki67i 40%
CT2n0m0,ステージ2A
という結果でした。
今回先生に質問させていただきたいのは、術前の説明では、すぐに手術するのもあるが、増殖率たかいので、抗がん剤治療をしてからの手術でもいいけど、抗がん剤がきく確率が低いという説明だったので、手術をしました。
ところが、術前の説明のときに、別の先生が、手後は、抗がん剤治療をして、放射線治療をして、ホルモン治療です。
て、説明をされ、ショックをうけました、
抗がん剤が効かないタイプなのに、抗がん剤治療をしなくてはいけないのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
そもそも「術前抗がん剤の適応」に「サブタイプが、○○だから。抗がん剤が効きそうだから」などは誤りです。
あくまでも「小さくして温存」を目的として行う治療なのです。
cT2, cN0, cStageⅡA, luminal type
「増殖率たかいので、抗がん剤治療をしてからの手術でもいい」
⇒そもそも「ここが誤り」です。
 「増殖率が高いとか、抗がん剤が効き易いとかは全く無関係に」 術前抗がん剤の適応は「(そのまま手術をする場合には温存できない大きさである場合に)小さくして温存を希望」という場合のみです。
 
「抗がん剤がきく確率が低いという説明だったので、手術をしました」
⇒この考え方自体に「誤り」があります。
 Luminal typeだから「抗がん剤が、効きにくいだろう」という予測はありますが、
そもそも「そんな事は、手術先行とは無関係」です。
 
「術後は、抗がん剤治療をして、放射線治療をして、ホルモン治療」
⇒luminal B(Ki67=40%から判断)だから「抗がん剤が必要」ということです。
 
「抗がん剤が効かないタイプなのに、抗がん剤治療をしなくてはいけないのでしょうか?」
⇒luminal Bが「抗がん剤が効かない」わけではありません。
 他のサブタイプ(triple negativeやHER2 typeなど)に比較すれば「著効しない」という意味です。
 今週のコラム 15回目 「どうやって免疫染色だけでAとBに分けるか?」 を参照してみてください。
 更に、以下に「サブタイプについて記載」します。
◎サブタイプとは?
組織検査(針生検や手術標本)などで以下の3点を調べます。
エストロゲンレセプターの発現(ER)
プロゲステロンレセプターの発現(PgR)
HER2蛋白の過剰発現の有無(HER2)
⇒これらの組み合わせで
 ☆☆luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、☆☆luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い☆☆
● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う
※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
 ★質問者は☆☆に該当します。