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MRIの広がり診断について

[管理番号:1402]
性別:女性
年齢:65歳
9月に針生検、MRIとCT等を行い、浸潤性乳管癌と診断されました。
エコーでの大きさ2.5cm弱、画像上のリンパ転移なし
ホルモン強陽性、HER2陰性、Ki-67<20%、悪性度低のルミナルAとの診断です。 画像所見から、大胸筋に接していると診断されました。 ただ、胸筋膜に接しているようではあるが、 画像からは大胸筋浸潤とまでは言えない。と言われました。 見せていただいた画像では、癌の場所ほど、 胸筋膜より内臓側に白く見えるものはないようでしたが、 大胸筋浸潤から胸壁浸潤へのリスクが大変不安です。 根治を目指すとは言っていただけました。 MRIでは乳房内の広がりと胸筋や他組織までの浸潤の程度は、 どこまで明確に判断できるのでしょうか? 胸筋膜はとても薄いと伺いましたが、 胸筋の厚さは、60代女性の場合どれくらいなのでしょうか? 手術は11月末で,医師からは1ヶ月1ミリ程度の進行と聞きましたが、 胸筋への浸潤もその速度と見てよいのでしょうか? 胸筋に接している状態と、大胸筋浸潤、胸壁浸潤までは どれくらいの速度で進行するのか教えていただけますと幸いです。 また、執刀のご経験から、胸壁浸潤の可能性と、 大胸筋の盆状切除で取りきれることはよくあるのか教えていただけますと幸いです。 盆状切除の説明を受けましたが、ステージの話をされませんでした。 胸壁浸潤の可能性を今、判断できないから言ってもらえなかったのか、 ステージが予後に関わると拝見したので不安です。 よろしくお願いいたします。  

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
一言で言うと「心配ご無用」です。
「大胸筋浸潤」はめったにおこりません。
私の経験上、胸筋浸潤は「MRIやCT, 超音波いずれの検査において腫瘍が深部にあ
り、胸筋に接している」場合の数パーセントもありません。
更に、(胸筋浸潤して)更にそれが「大胸筋を完全に超えて」胸壁浸潤する可能性は
「皆無」と断言できます。
○胸筋浸潤は「2.5cm弱、画像上のリンパ転移なし」という状況では「おそらく無
い」と思います。
 腫瘍径が5cmくらいあって、しかもリンパ節転移が画像上明らかであれば可能性
は出てきますが…
◎胸壁浸潤は「腫瘍が乳房全体を変形させて、皮膚を破り潰瘍形成している」場合で
もなかなか起こりません。

回答

「大胸筋浸潤から胸壁浸潤へのリスクが大変不安」
⇒「大胸筋に接している」という所見で「胸壁浸潤は無い」と100%断言できます。
 
「MRIでは乳房内の広がりと胸筋や他組織までの浸潤の程度は、どこまで明確に判断
できるのでしょうか?」
⇒「乳房内の拡がり」は「MRIでも正確に判断することは不可能」です。 病理診断
との乖離は「しばしばあること」です。
 手術の際には、「それを前提」として行います。
 「胸筋や他組織までの浸潤の程度」は「比較的良く」わかります。
 「大胸筋に接している」程度なのに、「胸壁浸潤など、到底ありえない」ことです。
 
「胸筋の厚さは、60代女性の場合どれくらいなのでしょうか?」
⇒2cm程度でしょう。(個人差が大きいですが)
 
「胸筋への浸潤もその速度と見てよいのでしょうか?」
⇒これは「全く違います」
 「乳腺内にできた乳癌」が「乳腺内で拡がっていくことは容易」ですが、「大胸筋
膜に浸潤することは、容易ではない」のです。
 
「胸筋に接している状態と、大胸筋浸潤、胸壁浸潤まではどれくらいの速度で進行す
るのか教えていただけますと幸い」
⇒「大胸筋に接していても」大胸筋膜に浸潤するには「数年かかる」でしょう。
 
 「胸壁浸潤は、そもそも考える必要なし」です。
 
「執刀のご経験から、胸壁浸潤の可能性」
⇒全くありません。
 0%と断言できます。
 
「大胸筋の盆状切除で取りきれることはよくあるのか」
⇒大胸筋膜に浸潤しているケースも「殆どありません」が、その場合には「大胸筋の
盆状切除」で完全に取りきれます。
 大胸筋の全層に「浸潤している」場合には、「術前に画像診断や触診での腫瘍の可
動性」でわかります。
 その場合には「大胸筋を超えて」肋間筋の切除や肋骨膜を削ることがありますが、
これは「滅多にないこと」なのです。
 
「胸壁浸潤の可能性を今、判断できないから言ってもらえなかったのか」
⇒そうではないでしょう。
 cT2(25mm), cN0, cStageⅡAとなります。
 ただし、それはあくまでも「術前の画像診断でのステージ」なので、「術後に変わ
る(センチネルリンパ節生検の結果とか浸潤径とかで)」ので敢えて言っていないだ
けでしょう。
 
★明らかに「過剰な心配」です。
 腫瘍が「乳腺の奥より」にあり、「大胸筋膜に接している」事など良くあることです。
 
◎大事な事は「執刀医が、大胸筋膜を意識した手術をする」ことです。 ご本人が心
配される必要は全くありません。