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術後の抗がん剤使用について

[管理番号:3554]
性別:女性
年齢:58歳
両側乳がんと診断され、針生検で、進行癌 ⅡAということで、温存手術をいたしました。
術中のセンチネルリンパ節生検により左のみリンパ節郭清をしました。
術後の組織検査結果(左)
Scirrhous carcinoma,18x12x25mm,Locus D,fat
infiltration(+),ly(+),LN(5/7=レベルⅠ4/6+センチネル1/1)
6.5x5.5x3.0cmの検体。
皮膚2.3x1.0cm。
腫瘍、18x12x25mm大。
組織学的には膠原繊維性間質の増生を伴いつつ策状、小胞巣状、或いはばらばらと増殖、浸潤する腫瘍。
乳管内進展も見られ、その周囲の処々で浸潤性増殖を示す。
熱焼灼部に乳管内進展部、断端陽性と考える。
組織学的グレードⅡ(腺管形成3+核分裂像1+核多形成2)核グレード分類Ⅰ(核異型スコア2、核分裂スコア1)
ER3b、PgR3b、HER2 0、Ki-67標準率数%。
「リンパ節レベルⅠ」4/6
当初は放射線+内分泌療法の予定でしたが、リンパ節7個中5個陽性のため(3か月+3か月)の抗がん剤治療の追加の提案されました。
抗がん剤治療をするべきでしょうか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「リンパ節転移5個」というのが焦点となります。
「抗がん剤治療をするべきでしょうか?」

⇒「Ki-67標準率数%」というのは「一桁」ということでしょうか。
 それであれば「ルミナールA」となり抗ガン剤の効果はあまり期待できません。
(腫瘍径5cm以上やリンパ節転移陽性でもルミナールAでは抗ガン剤によるベネフィットはない SABCS 2015)
 ただし、「リンパ節転移個数による検討」がされているわけではありません。
 そうすると、質問者のような「5個」となると、St.Gallen(2015) のvoting結果
「リンパ節転移4個以上ではルミナールAでも化学療法を選択する意見が多数」からは「化学療法を選択することが一般的」だとは思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は唐突で失礼な質問にも関わらずご回答いただきありがとうございました。
ルミナールAということで、抗がん剤の使用は無意味と思っておりましたため、混乱してしまいました。
先生の「無意味です!」を期待しておりましたが、一般的には有りなのかと、今月末より抗がん剤投与を開始することにいたしました。
昨日、血管ポートを入れてきました。
FEC100とタキソテールを4回づつの予定です。
妥当でしょうか?
リンパ節5/7の私の場合
術後の補助療法としては期待できないが、すでに転移しているかもしれないし、再発等の可能性が高いので使用する。
という解釈でよろしいのでしょうか?
とすると、
どのようなタイプでも遠隔転移や再発の場合は抗がん剤を使用するということでしょうか?
変な質問で申し訳ありませんが、頭の中でスッキリ整理できないと進めないのでよろしくご回答お願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「FEC100とタキソテールを4回づつの予定です。妥当でしょうか?」
⇒アンスラタキサンですね。
 私であればTCと迷うところですが、「最も信頼性のある治療」としてはアンスラタキサンは妥当です。
「リンパ節5/7の私の場合術後の補助療法としては期待できないが、すでに転移しているかもしれないし、再発等の可能性が高いので使用する。という解釈でよろしいのでしょうか?」
⇒「術後補助療法」とは「すでに転移しているかもしれない癌に対しての治療」のことです。
 「再発予防」といっても(実際には)画像で見えないだけで「どこかに潜んでいるかもしれない」癌に対する治療なのです。(だから大部分の人にとっては無駄な治療となるのですが、その選別が現時点ではできないのです)
 
 ○リンパ節転移が多いことは「血行性転移として、どこかに潜んでいるかもしれない可能性が(リンパ節転移無と比べれば)多い」という解釈です。
  以下のように考えるのが妥当だと思います。ルミナールAでも(抗癌剤の効果が低いだけで)全く効かない訳では(当然)ありません。
  ルミナールAの中でも
   再発率が10%の人  抗ガン剤での上乗せ3%だとすると…
     〃 20%             6%
     〃 30%             9%
   このようにステージが挙がり「全体の再発率が上がると上乗せ効果も(割合は一緒だけど)上がる」わけです。(3%ならしない⇒9%ならするということです)
「どのようなタイプでも遠隔転移や再発の場合は抗がん剤を使用するということでしょうか?」
⇒その通りです。
 相手(癌)が大きければ大きいほど抗癌剤は必要なのです。