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術前:Low grade DCIS →術後:浸潤1mmと6mm(リンパ管・静脈侵襲像ありでki-67が21,8%)

[管理番号:4076]
性別:女性
年齢:41歳
田澤先生、こんにちは。
先日は妻の温存手術で、お世話になりました。
(診察券番号○○○○です。)
2泊3日の入院を経験してみると、入院が短いということは家族にとっても本人にとっても、本当に負担が少なく、ありがたいものだと実感しました。
入院中は、先生が何度も様子を確認しに来ていただいたことも、心強かったようです。
私は現在仕事で海外におり、病理結果の日にも同席できず、まだ直接、結果のレポートを見られていません。
妻からの報告だけでは理解できないところがあるので、教えてください。
<術前病理>
マンモトーム生検で、広い範囲を取っていただいた結果、
HE染色では判別がつかず、免疫染色での判定でLowGradeDCIS。
0期。
(別の病院で病理のセカンドオピニオンもしましたが、ADHかDCISか迷うような病変との結果でやはりLowGradeDCISとの判定でした。)
<手術>
病巣は非浸潤で限局なので温存。
浸潤の疑いはなく、後日の二期的SNBも可能とのことで、SNBは省略。
<術後病理>
病巣のほとんどの部分がLowGradeDCISであるが同時に1mmと6mmの浸潤がんあり。
1期。
→リンパ節転移の可能性は低いので、二期的SNBを行う必要はない。
このようなケースは珍しいと聞き、驚きました。
別の病院で6年間、経過観察しましたが、変化のない良性腫瘍と診断されており、江戸川病院に転院する直前の細胞診でも、良性でした。
江戸川病院でも、所見では良性腫瘍のように見えるということでしたが、
念のために受けたマンモトームでDCISが判明。
手術を受けて、その結果、中に浸潤がんがあったということは本当に驚きです。
転院していなければ、DCISどころか、6㎜の浸潤がんもあったのに、経過観察してしまうところでした。
湿潤がんに関しては、手術して頂き、とれたのだから、運が良かったのだと頭を切り替えて、浸潤がんでの治療について自分もこれから勉強し、サポートしなければと思っています。
質問です。
(質問1).二期的SNBを希望した場合、今後のスケジュールはどのように変わりますか。
SNBは局所麻酔でしょうか、全身麻酔でしょうか。
入院が必要になりますか?
放射線治療は、SNBの病理結果次第で変わりますか?
(追加廓清があった場合と不要だった場合とで違いがありますか。)
(質問2).浸潤がんで、二期的SNBを省略できるデータがあれば、教えてください。
SNBの省略を決めた際には、
日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインを参考に、
妻の場合には
「限局した非浸潤で浸潤の疑いがなく、温存手術のため、二期的センチネルを行うことも可能である」として、省略を希望しました。
今度は、
「外科的生検後の詳細な病理検査の結果、二期的SNBを省略できる場合」
を知りたいのですが、これについてはガイドラインを見つけられませんでした。
SNBにはリンパ浮腫のデメリットが少ないながらもあるので、
経験豊富な先生が、不要と判断される状況であることは、大変心強く思いますが、
一方で、SNBを省略できるかどうかのガイドラインに準じて考えるならば、6㎜の浸潤がんは、二期的SNBをするのが標準治療にあたるのではないかと考え、
「レアケース」を想定して、実施した方がいいのではないかとも思います。
*レアケース:エコーでは確認できなくても、微小とはいえない転移(2㎜以上)があり、追加廓清が必要な場合のことを考えています。
ただ、「微小転移なら追加廓清不要」のデータも、
「微小転移のあるセンチネルリンパを切除している」
ことが予後のプラスにつながっているのであれば、微小転移まで含めて、二期的SNBを行うメリットと考えます。
(質問3).二期的SNBをすることのメリット・デメリットの認識は以下であっていますか?
メリット:リンパ節への転移の有無を確認でき、必要な治療を追加できる。
デメリット:リンパ浮腫のリスクがある。
二期で行うため、再手術の費用と時間がかかる。
この他に、2期で行うということで、1期と違い、センチネルリンパの同定が難しく、検査の精度が落ちるとか、余分にリンパをとらなければならないというようなリスクがありますか?
(質問4).オンコタイプDXの検査を受けることはできますか。
ルミナルAなので、抗がん剤によるベネフィットはなし。
放射線とホルモン療法単独ということですが、
Ki-67が14%以下の低値ではなく、21.8%あること、
また、浸潤が1mmと6mmと大きくないのに、リンパ管・静脈侵襲像あり(ly1、v1)であることから、再発・転移リスクが高いタイプなのではと気になります。
日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインでは
ルミナルAかBかを判断する上で
Ki-67値を用いることの推奨グレードがC1・C2とあまり高くなく
オンコタイプDXを用いることの推奨グレードがBと高いので、
オンコタイプDXで抗がん剤のベネフィットがないことを確認したい気持ちがあります。
先生がオンコタイプDXを推奨するのはKi-67が30%以上の場合だと理解していますが、
「珍しい」という状況が妻に関しては続いて起こったこともあり、
「Ki-67(20~29)でのHighRiskは20%以下」であっても、その「20%」の中に妻がまた入る可能性も考えます。
私は早期発見・治療を重視しつつ、過剰医療に注意喚起する先生の姿勢にも、非常に共感していますので、
抗がん剤を積極的に使いたいと思っているわけではありません。
ただ、妻のケースが、乳腺専門医の先生が長い間良性と考える所見であったことも、
浸潤の疑いを持たなかったものであることも考えると、
絶対はない、ということも痛感しており、検査・治療の選択に悩みます。
先生のQ&A(管理番号737「浸潤性癌の治療法」)を読み
「初期治療(手術~術後補助療法までを言います)は大変重要なところです。」
と書かれているのを拝見し、
このタイミングで時間と費用を惜しまずに、
検査して確認するのも、大事なのではないかと悩んでいます。
(質問5).オンコタイプDXを受けるにあたって、メリット・デメリットは以下の認識であっていますか?
メリット:検査を受けるのに、健康面でのリスクがない。
化学療法の効果予測が出来る。
(効果があるとわかれば、放射線の治療の前でも後でも、化学療法を追加することが検討出来る。)
デメリット:検査費用が高額。
以上です。
長文になってしまい申し訳ありません。
勉強不足で誤った知識があるかもしれませんが、ご指導よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
海外に赴任中なのですね。
病理結果には御心配だったと思います。
メール内容は、非常に整理されており正確な理解をされています。
「センチネルリンパ節生検」も「サブタイプ」についての理解もその通りです。
「(質問1).二期的SNBを希望した場合、今後のスケジュールはどのように変わりますか。」
⇒この場合、「温存乳房照射が延期」され、「二期的SNB」が先行となります。
「SNBは局所麻酔でしょうか、全身麻酔でしょうか。」
⇒全身麻酔です。
 局所麻酔でも「物理的には可能」ですが、「乳輪部の色素注入」も「腋窩小切開での(センチネル)リンパ節の摘出」もかなり痛い操作です。(余程の覚悟で、希望されない限り全麻で行っています)
 
「入院が必要になりますか?」
⇒全身麻酔なので、(前回の手術同様に)前日入院、翌日退院の2泊3日となります。
「放射線治療は、SNBの病理結果次第で変わりますか?」
⇒ありえないことですが…
 リンパ節転移が4個以上となると「照射野が鎖骨上領域にまで拡大」されます。
「(質問2).浸潤がんで、二期的SNBを省略できるデータがあれば、教えてください。」
⇒ありません。
 ただし、私が「省略を勧めた根拠」はあります。
 私自身の経験で「術前画像診断で浸潤癌を疑わせる画像形成がない」もので、「術前組織診断で浸潤癌だったもの」のセンチネルリンパ節生検を行い「陽性であったケースがない」のです。
 
 勿論この場合は全て「intermediateもしくはhigh grade」の場合でした。(low gradeではそもそも浸潤癌が見つかるケースそのものが稀です)
 ○「intermediateもしくはhigh grade DCIS]では当然、センチネルリンパ節生検を行うわけですが、陽性となったことはなかったと思います。
  私自身の手術経験は多く、(更に言えば、石灰化に対するステレオガイド下マンモトーム生検の経験数も、非常に多いので)、私自身の経験則で十分だと判断したわけです。
   ♯「術前組織診で非浸潤癌⇒手術標本で浸潤癌」というのは圧倒的に「石灰化病変で多い」のです。
「経験豊富な先生が、不要と判断される状況であることは、大変心強く思います」
⇒更に「早期乳癌の比率が高い」理由は下記①~③があります。
 ①(上記で挙げたように)ステレオガイド下マンモトーム生検を多数行っているので、非浸潤癌の発見が非常に多い
 ②(乳頭異常分泌に対する)乳管区域切除(他院では殆ど行われていない)も多いので、やはりそこから発見される非浸潤癌も多い
 ③(QandAを介して全国から)小さな病変の方が多く受診し、それに対してマンモトーム生検をしての非浸潤癌発見が多い
 これら①~③で「術前に非浸潤癌」として手術し、術後「浸潤癌と判明」することも稀ではありませんが、「センチネルリンパ節生検では当然の如く陰性」なのです。(実際のところ)
「(質問3).二期的SNBをすることのメリット・デメリットの認識は以下であっていますか?」
⇒合っています。
「2期で行うということで、1期と違い、センチネルリンパの同定が難しく、検査の精度が落ちるとか、余分にリンパをとらなければならないというようなリスクがありますか?」
⇒精度は殆どかわりません。(私自身の経験)
「(質問4).オンコタイプDXの検査を受けることはできますか。」
⇒できます。
「オンコタイプDXで抗がん剤のベネフィットがないことを確認したい気持ちがあります。」「Ki-67(20~29)でのHighRiskは20%以下」であっても、その「20%」の中に妻がまた入る可能性も考えます。」
⇒そういうことなら、行った方がいいでしょう。
「先生がオンコタイプDXを推奨するのはKi-67が30%以上の場合だと理解しています」
⇒その通りです。
 ただ、積極的に「希望される」場合には勿論行います。
「(質問5).オンコタイプDXを受けるにあたって、メリット・デメリットは以下の認識であっていますか?」
⇒その通りです。
 OncotypeDXは「費用の問題がなければ」ルミナールタイプの全ての人に勧めたいというのが本音なのです。(費用対効果でみると、30%以上とはなりますが)