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術後の抗がん剤について

[管理番号:1736]
性別:女性
年齢:45歳
はじめまして。宜しくお願いします。9月に温存手術を行い放射線治療に入ったところです。
4月に乳癌と判明した時の腫瘍の大きさは1㎝、転移なし、ホルモンレセプター強、Ki67高値につきルミナールB判定でした。この時点では術後も抗がん剤は多分不要だろうとの事で安心していましたが病理診断の結果、Ki67が思ったより下がらなかったという理由で抗がん剤を勧められ戸惑っています。
術中に非浸潤癌も見つかり所見によると拡がりがあるとのですが、それも抗がん剤を勧める理由の一つなのでしょうか。
フルタイムで仕事をしておりまた同居の母(癌患者)もしばらく休んでいた抗がん剤を来月から再び開始することになっておりこの現状にとても困惑しています。
オンコタイプDXも検討していますがまずは先生のご意見をお伺いしたいと思いました。以下は術前と術後の結果です。
1)4月:右乳房針生検の結果:
Invasive ductal carcinoma (solid-tubular carcinoma) Nuclear atypia; score 3 Mitotic counts; score 2 Nuclear grade ; 3 ER : (+), 100% PgR : (+), 90%
HER-2 score: 1+
Ki-67: 37.3%
強い核濃染を呈する大型の細胞が、充実性胞巣を形成する、浸潤性乳管癌が認められます。
一部に中心壊死がみられます。充実腺管癌に相当します。硬癌に近い像もみられます。
2) 5月~9月:術前ホルモン療法(ノルバデックス&リュープリン)によりエコ―検査
で腫瘍が7mm強まで小さくなっていました。
3)9月:術後の病理診断:
Invasive ductal carcinoma (solid-tubular carcinoma) Site : B Size : 0.8×0.5
×1.5 cm(invasive carcinoma)
    0.8×0.8×1.5 cm(invasive and non-invasive carcinoma)
Macroscopic type : intermediate
Nuclear atypia; score 2
Mitotic counts; score 2
Nuclear grade ; 2
ER : (+), 50%
PgR : (+), 1%
HER-2 score: 3+(→再検査により陰性)
Ki-67: 30.5%
Invasion to extramammary adiposed tissue: f (+)
Invasion to skin : s (-)
Intraductal spreading (DCIS component) : (+)
Lymphatic permeation : ly0
Vascular invasion : v0
Surgical margin : (+)
Lymph node metastasis : (-)
術中迅速Sentinel : 0/1
pT1cNO (UICC第7版、2009、乳癌取り扱い規約第17版、2012)
Therapeutic effect : Grade 1a
Mastopathy (apocrine metaplasia)
小型の浸潤癌で周辺にはDCISが拡がっています。部分的にはヘモジデリン沈着を伴った瘢痕形成も認められその部分は治療効果の可能性が考えられます。
乳頭側追加断端の頭側の迅速診断(#11) 後の永久標本(⑲)では、やはりDCISの像が認められるため断端陽性と判断されます。
以上、どうぞ宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
質問者の主旨とは「外れます」が、「閉経前の術前ホルモン療法は臨床試験でのみ行われるべき」乳癌診療ガイドライン 推奨度C2です。

回答

「4月に乳癌と判明した時の腫瘍の大きさは1㎝、転移なし、ホルモンレセプター強、Ki67高値につきルミナールB判定」「この時点では術後も抗がん剤は多分不要だろうとの事」
⇒この時点で「抗がん剤の適応」があります。
 
○一番問題なのは「術前ホルモン療法の結果、Ki67が思ったより下がらなかったという理由で抗がん剤を勧められ」というコメントです。
 そもそも「抗がん剤の適応」は「治療前の状態で決めるべきもの」です。
 万が一「術前ホルモン療法でKi67が低値となった」場合でも「抗がん剤の適応から外すべきではない」と思います。
 「術前抗がん剤もそうですが、手術前に治療が加わった場合には治療方針は術前治療の前の状況を基に決めるべき」なのです。
 
「術中に非浸潤癌も見つかり所見によると拡がりがあるとのですが、それも抗がん剤を勧める理由の一つなのでしょうか」
⇒違います。
 非浸潤癌は「抗がん剤の使用には無関係」です。
 
○ルミナールBなので化学療法の適応があります。