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術後5年目のリンパの腫れについて

[管理番号:3325]
性別:女性
年齢:44歳
はじめまして。
39歳の時に右乳房に乳癌が見つかり、温存手術の後、放射線治療(26回)を受けました。
詳細は下記のとおりです。
浸潤性導管癌,病理径:
70mm×50mm(全体)・
5mm×4mm(浸潤部),
StageⅠ,Grade2,リンパ転移
なし,ルミナールAタイプ、断
端陰性(ただし、一部、病変が断端と近接していたようです)
術後すぐにタモキシフェンによるホルモン治療も始めましたが、1年3か月で止めています(妊娠を希望していたためです。
結局叶いませんでしたが、薬も再開していません)。
放射線治療後は3か月ごとに定期検診を受け、幸いこれまで異常なく過ごしてきましたが、先週行った超音波検査でリンパに変異が見られたようで、その場で細胞診となりました。
先生によるとリンパに「腫れ」があり癌の可能性があるとのこと。
しこりはありません。
詳細はあまり語ってくださらず、その他の可能性などもはっきりうかがえませんでした。
結果が出るまでの2週間、不安でたまりません。
というのも、1か月ほど前から、右腕を伸ばした際などに時々ピリッという電気刺激のような感覚を覚えることがあったからです。
最悪の場合の心の準備はしていますが、私のような癌のタイプで、数年後にリンパに再発する可能性はどのくらいあるのでしょうか?また、その場合、どのような治療が必要となるのでしょうか?検査当日は生理2日前でしたが、リンパの状態に影響はしないのでしょうか?癌以外の可能性があれば教えていただきたいです。
長くて申し訳ありません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
術後5年目でのリンパ節腫大ですね。
質問者の場合にはまだ「転移性リンパ節なのか確定していない」わけですが、ここでは「転移だった場合」を想定して(縁起でもないですが、話をすすめるために)説明しましょう。
2つのケースがあります。
①純粋な「腋窩リンパ節再発」
 (手術時にはセンチネルリンパ節生検で陰性だったと思いますが…)「癌細胞が潜んでいた」リンパ節が存在していて、それが徐々に増殖してきた(5年かかっているとすれば、かなり大人しいと言えます)
②全身再発の中での「腋窩リンパ節再発」
 例えばPETを撮影してみたら「全身にも転移がある」ケース(つまり腋窩リンパ節はあくまでも「氷山の一角」である場合です)
 ただ、質問者は「超早期」ですから「これの可能性は無い」と思います。
「私のような癌のタイプで、数年後にリンパに再発する可能性はどのくらいあるのでしょうか?」
⇒殆どありません。
「また、その場合、どのような治療が必要となるのでしょうか?」
⇒上記①だと仮定すると…
 とにかく「局所治療」となります。
 局所治療とは「手術(つまり腋窩郭清)」となります。(放射線照射は最初の温存照射と照射野が重なることが多く適応外となります)
 ○全身療法は必要か?
  基本的には不要です。
  ただし、質問者は「ホルモン療法を中止」しているので「ホルモン療法再開」は勧められます。
  ここで、「物事の本質を良く考えない医師」だと、「再発=抗がん剤」みたいな短絡的思考から「抗がん剤を勧めれれそう」ですが、①の場合には不要です。
「検査当日は生理2日前でしたが、リンパの状態に影響はしないのでしょうか?」
⇒ありません。
「癌以外の可能性があれば教えていただきたいです。」
⇒反応性腫大(手術している訳ですから、当然影響があります)です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
先日は丁寧なご回答をありがとうございました。
昨日、細胞診の結果を聞きにいったところ、乳がんの再発とのことでした。
そこで、申し訳ありませんが、再度質問させてください。
1.全身に転移があるかの検査はCTと骨シンチで行うとのこと。
PETじゃなくて良いのでしょうか?
2.腫れは10mm程度とのことですが、そんなに大きくなるまで見付けられないものなのでしょうか?3か月前にも超音波を行っていたのですが…。
3.リンパだけで収まっている場合、リンパの郭清でよいのですよね?
実は、今の先生は執刀医とは異なるため(術後に引越しをしているためです)執刀医にも連絡を取ったのですが、状況によっては放射線だけでも良いと言われました。
田澤先生から伺ったかぎり、放射線照射は最初の温存照射と照射野が重なることが多く適応外と思っていたので、少し困惑しています。
4.リンパにガンがあると言うことは、ステージはⅢになるのでしょうか?ネットで調べた限り、10年生存率は50%まで下がるようですが、かなり危険な状況なのですか?
もともと再発のリスクはかなり低いと言われていたのでショックが大きく、落ち込んでいます。
度々申し訳ありませんが、再度ご回答いただけたらありがたく存じます。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
まずは前回の3325を読み返して「重大な誤りを発見してしまったので」まずは「訂正して、お詫び」をいたします。
「⇒上記②だと仮定すると…」は誤りであり、(正しくは)「⇒上記①だと仮定すると…」となります。
「1.全身に転移があるかの検査はCTと骨シンチで行うとのこと。PETじゃなくて良いのでしょうか?」
⇒これは「CT+骨シンチ」≒「PET」となります。
 特に問題ありません。
「2.腫れは10mm程度とのことですが、そんなに大きくなるまで見付けられないものなのでしょうか?3か月前にも超音波を行っていたのですが…。」
⇒想像ですが…
 徐々に増大したので「変化に気付き難かった」のではないかと思います。
「3.リンパだけで収まっている場合、リンパの郭清でよいのですよね?」
⇒そうすべきです。
「状況によっては放射線だけでも良いと言われました。」
⇒手術(郭清)は最低限必要です。
「4.リンパにガンがあると言うことは、ステージはⅢになるのでしょうか?」
⇒違います。
 前回の回答を参照してください。
 もしも「初回手術での取り残し(前回の回答①)」ならば(おそらく、CT及び骨シンチの結果でそうなると予想しています)、ステージとは無関係となります。
「かなり危険な状況なのですか?」
⇒前回の回答を参照してください。
 前回の回答①に相当するのであれば、「危険でも何でもない」のです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

その節はご丁寧な回答を大変ありがとうございました。
その後の治療を決めるうえで大変参考になりました。
この場を借りてお礼申し上げます。
その後、遠隔転移は見られなかったものの、転院先で行った造影剤CTで右乳房に小さな
腫瘍が見つかり、結局、全摘+リンパ郭清手術を行いました。
病理検査の結果は以下の通りです。
●リンパ節転移数:15/16
●乳房内腫瘍:
 ・0.5×0.5cm
 ・組織異形度Grade1、核異形度Grade1
 ・ER/PgR + 、 HER2 -
 ・Ki67 3.9%(前回は5.0%)
●今後の治療方針
AC(1回/3週×4回)→パクリタキセル(1回/週×12回)→放射線(前回、鎖骨や腋窩に
照射されていなければ)+ホルモン治療
質問させていただきたいことは次の通りです。
1.リンパに転移した癌については、確実に乳房内が原発であると想定できるため、
詳細な検査はしていないと言われました。
前回と今回ではGradeも異なることもあり、癌の性質を詳細に知ることは抗がん剤の選択にもかかわるのではないかと思ったのですが、
それによって治療方針は変わらないとのこと。
このQ&Aで何度か目にした「節外浸潤」についても不明のままなのでなんとなく腑に落ちません(但し、血管外、リンパ管外への浸潤はないとのことでした)。
希望すれば再度検査はできるそうですが、主治医が言うように知る必要はないのしょうか?
2.ルミナールAにはパクリタキセルよりドセタキセルの方が効果が高いという記述を多く見かけます。
また、ACよりTCの方が若干効果が高いと書かれているものもありました。
あえてAC+パクリタキセルを使用するのには何か理由があるのでしょうか?
ご多忙のなか、このような場を設けてくださっていることに改めて感謝いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
経過は了解しました。
リンパ節転移が15個あったのですね。(それであれば、術後化学療法を選択せざるをえないと思います)
「癌の性質を詳細に知ることは抗がん剤の選択にもかかわるのではないかと思ったのですが、それによって治療方針は変わらない」
⇒これはその通りです。
 抗ガン剤の選択には(HER2陽性でも無い限り)選択に違いはありません。
「2.ルミナールAにはパクリタキセルよりドセタキセルの方が効果が高いという記述」
⇒これには賛成しません。(エビデンスが不十分です)
「あえてAC+パクリタキセルを使用するのには何か理由があるのでしょうか?」
⇒これには深い理由はないと思います。
 単純に、(golden standardである)「アンスラサイクリン+タキサン」を選択したのでしょう。
 
 ○アンスラサイクリン
  ①EC
  ②AC
  ③FEC(やや古い)
 ○タキサン
  ④(3週に1回の)ドセタキセル
  ⑤(毎週投与の)パクリタキセル
  ⑥(3週に1回の)アブラキサン ♯再発乳癌では適応となります。