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抗癌剤とハーセプチン

[管理番号:854]
性別:女性
年齢:46歳
はじめまして。
7月に温存手術しました。
病理の結果
浸潤径 1.1cm
センチネルリンパ節 陰性
血管・リンパ侵襲 なし
ER95% PgR85%
Her2+2(fish陽性)
組織グレード2
ki-67 3%
断端近くに陽性
her2陽性だったので、抗がん剤TC療法+ハーセプチンを奨められています。
針生検を3か所した際は、ホルモン陽性でher2については何も言われませんでした。
her2があった範囲が広くなかったということでしょうか?
血管にもリンパにも侵襲がなく、リンパ節も陰性で、ki-67も低い中、抗がん剤をする決心がどうしてもつきません。
無治療よりはハーセプチン単独投与の方が少しでも再発防止になると思うのですが、期待できるものでしょぅか?
単独投与の効果に関してデータが無いのも、抗癌剤も併用したら効果があるのは分かってるのですが。。
抗癌剤をしなかった場合、再発率はどのくらいでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT1c(11mm), pN0, luminalB(HER2陽性)
 十分な早期ですが、抗HER2療法という「絶対的治療」は強く推奨されます。

回答

「針生検を3か所した際は、ホルモン陽性でher2については何も言われませんでした」「her2があった範囲が広くなかったということでしょうか?」
⇒違うと思います。
 考えられる理由は2つです。
①(その病院では)針生検ではそもそも「HER2を測定していない」可能性があります。
 特に質問者の場合は「浸潤径11mm」なので「針生検の段階では不要」と判断されていた可能性もありそうです。
 
②染色性が悪い可能性(標本の処理が悪いとか、試薬の劣化などで)
 手術標本でも「2+」であり、最終的にFISHによる判定での陽性となっています。(十分な染色性があれば3+となります)
 もしくすると「針生検の標本では(染色性が悪く)ぎりぎり1+に落とされた」可能性もあります。
♯これらは針生検の病理レポートを確認すれば「確認」できます。
 「範囲の問題」ではありません。
 
「無治療よりはハーセプチン単独投与の方が少しでも再発防止になると思うのですが、期待できるものでしょぅか?」
⇒期待できません。
 「ハーセプチン単剤」は誰もが考えることですが、「有効性の証明が無い=適応外使用」となるのです。
 まずはTCなりを1回してみることです。
 
「抗癌剤をしなかった場合、再発率はどのくらいでしょうか?」
⇒15%となります。(無論、ホルモン療法は行っての数字です)
 抗がん剤を使うと、これが5%程度になると思います。
 

trastzumab(ハーセプチン)補助療法の衝撃

 HERA試験の衝撃… ハーセプチン術後補助療法で24%もの「生存率改善」効果を認め「世界を震撼」させました。
 
 2008年の「ハーセプチン補助療法への適応拡大」以降、抗HER2療法をしない事は「国民皆保険制度である」日本ではありえないでしょう。