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治療方針について

[管理番号:2844]
性別:女性
年齢:28歳
乳がんと診断されてからこのサイトを拝見し勉強させていただいております。
2年ほど前から、しこりを自覚しており乳腺外科を受診したところ触診、エコーをおこない乳腺線維腺腫と診断をうけました。
まだ若いからとマンモグラフィーはしませんでした。
当時の大きさは1センチ弱ほどでした。
その後半年後と1年後に同じ病院で、診察をした結果も特に大きくはなってないので、エコーをとる医師によって多少誤差がでるけども、大丈夫とのことでした。
そして、結婚し、妊娠を望んだところ念のためと違う病院を受診したところ乳がんと診断されました。
病理結果
浸潤性乳菅癌
腫瘍の最大浸潤径は約14mm
明らかなリンパ菅侵襲、静脈侵襲、神経周囲侵襲は指摘できませんが、
郭清された腋窩リンパ節材の9個のリンパ節のうち1個にmicrometastasis
をみます。
深部断端から1.5㎜の所まで腫瘍の浸潤を見ます。
invasive ductal carcinoma 14×10㎜ f,pt1c,pn1mi(1/9) nuclear grade 2 (nuclear atypia2:mitotic counts2) histological grade 2 (glaundular or tubular differentiation 3:nuclear pleomorphism 2:mitotic counts 2) ER total score PS+IS=5+2=7 pgr totalscore PS+IS=4+2=6
ki67index=31パーセント
HER2タンパク発現(免疫染色):0+
HER2遺伝子増幅(FISH) :(-)HER2/ch17=1.353 (HER2 2.3/ch17 1.7)
センチネルリンパ節 2つ陽性
#1では4切片中2切片、#2では、5切片中3切片において異型細胞が浸潤小胞巣状に増殖しています。
#2では周囲脂肪織に浸潤しています
という結果でした。
全摘してます。
今後の治療として、放射線 胸壁、鎖骨上
抗ガン剤EC療法×4 ドセタキセル×4回
ホルモン剤 タモキシフェン10年
受精卵凍結
といわれています。
わたしは、妊娠、再建を強く希望しております。
そこで、先生に質問です。
1、最近の研究で、リンパ転移が1つでもあると放射線をしたほうがいいといわれました。
放射線終了後1年以上たって皮膚の状態がよければ
再建できることもあるとのことでした。
私はテープかぶれをよくします。
胸の喪失感は想像以上で、再建したいです。
放射線治療はするべきでしょうか。
2.妊娠を強く希望しています。
この場合の抗ガン剤をする理由は、リンパ転移しているからですか?
ki67がやや高めだからでしょうか。
3先に出産をしてから、治療も可能でしょうか。
このサイトをみて、先に妊娠を、勧められてる方はリンパ転移なしの方ばかりですよね?
2年前から自覚はあり、しこりは小さかったもののリンパ転移が気になります。
4.妊娠後の治療、放射線治療からの出産して治療、放射線.化学療法から出産して治療とする場合で、再発率は大幅にかわりますか?
5.先生だったら、どのような治療法を提案していただけますか?
たくさん質問して申し訳ないですが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
2年間「癌と診断されずに」経過観察されていたのですね。
大変お気の毒に思います。
(勿論、画像上も線維腺腫らしき大人しい像ではあったのでしょうが)その当時の「26歳という年齢」が判断を誤らせたのだと推測します。
医師が何人か「替っている」ようですが(私の勘違いかもしれませんが)、「最初の医師が誤った診断」をしてしまうと、「その後の医師」は「それに引きずられて」しまったのだと思います。
「大学病院か何かその手の病院」でしょうか?
医師が複数入れ替わる事により、「自分が最後まで責任を持つ」という診療とはならない傾向にあります。(どこかの「有名大病院」も同様です)
今更、言っても仕方がありませんが、閲覧している他の人の参考になればと思い記載しました。
 
「その後半年後と1年後に同じ病院で、診察をした結果も特に大きくはなってないので、エコーをとる医師によって多少誤差がでるけども、大丈夫」
⇒これはエコーを「医師がとっているのか、技師がとっているのか」不明ですが、困ったものです。
pT1c(14mm), pN1, luminal type
まだ早期です。
2年間の経過を考えると「幸い」でした。
 
「HER2タンパク発現(免疫染色):0+ HER2遺伝子増幅(FISH) :(-)HER2/ch17=1.353 (HER2 2.3/ch17 1.7)」
⇒私にはこの記載が気になります(細かいですがI
 HER2が0なのに、FISHは適応外です。
 ♯本来はHER2が2+の時にFISHの適応があるのです。
  保険診療でこのような出鱈目なことをしていては「国の医療財政の破綻を招く」ことになります。(余計な事を言って、すみません)
 
「今後の治療として、放射線 胸壁、鎖骨上 抗ガン剤EC療法×4 ドセタキセル×4回 ホルモン剤 タモキシフェン10年」
⇒間違ってはいないかもしれませんが…
 やや過剰治療に感じます。
 もしかすると「年齢」と「2年間の経過」も加味しているのかもしれませんが…
 
「放射線治療はするべきでしょうか。」
⇒しなくてもいいと思います。(少なくとも私自身の患者さんには勧めません)
 センチネルリンパ節陽性で「追加郭清」して、「郭清したリンパ節にはmicrometastasis1個のみ」であれば、「腋窩リンパ節に関しては十分」だと思います。
 リンパ節転移4個以上ならまだしも「局所療法は(郭清したことで)十分」と思います。
 「リンパ節転移1個でも放射線照射が予後を改善」とは、「全身療法が発達している現在には、おそらくあてはまらない」と思います。
 
「この場合の抗ガン剤をする理由は、リンパ転移しているからですか?ki67がやや高めだからでしょうか。」
⇒担当医の考えている事は私には必ずしも解りませんが…
 Ki67=31%は、いちおうluminal Bとしても誤りではありません。
そうすると「抗がん剤の適応」が出てきます。
 
「3先に出産をしてから、治療も可能でしょうか。このサイトをみて、先に妊娠を、勧められてる方はリンパ転移なしの方ばかりですよね?2年前から自覚はあり、しこりは小さかったもののリンパ転移が気になります。」
⇒妊娠先行でも構わないと思います。
 但し、「化学療法を本当にすべきか?」という疑問があります。
 もしも化学療法するなら (卵子凍結)「化学療法」⇒「妊娠出産授乳」⇒「ホルモン療法」
   化学療法しないなら 「妊娠出産授乳」⇒「ホルモン療法」でいいと思います。
 
「4.妊娠後の治療、放射線治療からの出産して治療、放射線.化学療法から出産して治療とする場合で、再発率は大幅にかわりますか?」
⇒順番は「あまり影響ない」と思います。
 放射線の有無も「殆ど影響ない」と思います。
 化学療法の上乗せがあるかどうかです。
 
「5.先生だったら、どのような治療法を提案していただけますか?」
⇒このQandAで「OncotypeDxを勧めた」ことは無かったですが、このケースでは勧めます。
①OncotypeDXで低リスクの場合
 妊娠出産⇒ホルモン療法(タモキシフェン+LH-RHagonist)
②OncotypeDXで「中間リスク以上」の場合
 (卵子凍結)化学療法⇒妊娠出産⇒ホルモン療法(タモキシフェン+LH-RHagonist)
 ○何故、中間リスクの場合でも化学療法を勧めるのかというと、「NewAdjuvant.comでの化学療法上乗せが11%あるから」です。  
 
 

 

質問者様から 【質問2】

以前、質問させていただいたものです。
質問後、前向きにと考え、受精卵凍結し、抗ガン剤治療をしています。
放射線治療はしないと決めました。
抗ガン剤治療後、妊活に入ろうと思っています。
1.抗ガン剤治療後、どのくらいの期間をあければ、妊活していいでしょうか。
どこかの質問で三カ月と記載してあるのを拝見しましたが、受精卵凍結してある場合も同じでしょうか。
体から抗ガン剤が抜けるのが三カ月ですか?
主治医は生理が再開したらとのことでしたが、生理は今のところまだとまっていません。
(現時点で、ドセタキセル1クール終了後生理あり)
2.以前の病理結果から、わたしの場合の再発率を教えてほしいです。
宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1.抗ガン剤治療後、どのくらいの期間をあければ、妊活していいでしょうか。」
「どこかの質問で三カ月と記載してあるのを拝見しました」

⇒その通りです。
 3カ月です。
「受精卵凍結してある場合も同じでしょうか。体から抗ガン剤が抜けるのが三カ月ですか?」
⇒その通りです。
 「抗ガン剤を代謝する臓器(肝臓、腎臓)に3カ月程度」残っていると言われています。
「以前の病理結果から、わたしの場合の再発率を教えてほしいです。」
⇒(ホルモン療法+化学療法を行う事で)16%となります。