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術後の病理結果の変化と治療の変更

[管理番号:875]
性別:女性
年齢:35歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:633「ステージⅡaの閉経前乳癌」

 
 
田澤先生お世話になります。
先日の田澤先生のご丁寧なお返事をいただき、それを踏まえて8月5日に左乳房全摘出+エキスパンダー挿入、センチネルリンパ生検を施行していただきました。
幸い術後の経過も良く、ドレーンも順調に抜けて8月15日に退院します。
本日、病理結果が出て、主治医より説明と今後の治療方針を聞きました。
①まず、センチネルリンパ生検で術中に陽性のためレベルⅠのリンパ節を8個、レベルⅡのリンパ節を2個採取 → うちレベルⅠの3個に転移あり、レベルⅡは0個
②腫瘍形は術前は3cm大だったが、実際に術後の病理では→もやもや周りにある大きいところの最大4.5cmの浸潤性乳管癌
③細胞タイプ→AllredでER7、PgR7、HER2:+1(陰性)、ki67:70%
以上から、ルミナールBのため以下の治療が望ましいが、何もしなければ五年以内に30%が再発及び転移すると、主治医より説明ありました。
①化学療法→術後2ヶ月程度で開始。アンスラ系(4クール)+タキサン系(6クール)で半年間
②ホルモン療法 →ゾラデックス(2年)+タモキシフェン(5年)
化学療法のあとホルモン療法をしていくと。
私の妊娠希望もあり、当初はルミナールAだと聞いていたため、半年間の 妊活後に妊娠しなければ受精卵を凍結保存した上で二年間のホルモン療法予定でした。
主治医には、予定通り半年間の妊活後、化学療法して妊活、ダメならホルモン療法開始でと希望を伝えましたが、『ki67が高いので、先に化学療法してから妊活した方がいい』と言われました。
術後のリンパ節転移もショックでしたが、更にショックでした。
田澤先生でしたら、どう治療していかれますか?ご指導お願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT2(45mm), pN1, luminalB(Ki67=70%)ですね。
 妊娠・出産希望もありますね。

回答

「田澤先生でしたら、どう治療していかれますか?」
⇒TC療法を行います。
 「luminal type」の術後「補助化学療法」としては
 ①TC ドセタキセル+エンドキサン(3週間に1回を4回)3カ月間
 ②アンスラタキサン 質問者の提示されているもの 6カ月間
 以上①②がありますが、質問者には①でいいと思います。
 もしかすると「担当医は35歳という年齢から」②を推奨しているのかもしれません
 但し、「化学療法→術後2ヶ月程度で開始」という意味が解りません。
 通常は2カ月空ける理由はありません。
 
「化学療法のあとホルモン療法をしていくと」
⇒これも、「QandAの方達は殆ど化学療法とホルモン療法を併用していないことに疑問をもっています」
 唯一の根拠は「アンスラサイクリンとタモキシフェンの併用は良くない」という大昔の文献だけです。
 少なくとも「タキサンとなってからはホルモン療法は併用するべき」と私は思います。
○TC療法を選択すれば、ホルモン療法(タモキシフェン)は最初から併用します。
 そして、「TC終了後に生理が止まっていれば」LH-RHagonist(ゾラデックスやリュープリン)を追加します。
○但し、「質問者は妊娠希望」なので、
 TC(タモキシフェン併用)⇒終了後3カ月空けて⇒妊娠・出産⇒タモキシフェン再開(年齢的に化学療法閉経となる可能性は低いので)最初からLH-RHagonist併用します。
 タモキシフェンは10年間、LH-RHagonistも長め(できれば5年位)継続すべきです。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生お忙しい中、御丁寧に御回答いただき毎度のことながら大変恐縮です。
予防投与としての乳癌抗がん剤のフルコースでショックを受けていましたが、田澤先生の治療方針をお聞きして少し落ち着くことができました。
本当にありがとうございます。
さて、私の乳癌の場合『35歳』というので若年性乳癌というのがいつでも付きまとうのですが、自分も家族も気になっていたこともあり、じつは遺伝子検査を手術前にしました。
私の場合、遺伝子として両親や家系で関わる方々に誰も乳癌や卵巣がん、膵臓がんがおらず、27歳での経産婦ですし、トリプルネガティブでもなく、初潮も平均的でした。疑問に思うことが多く、遺伝子検査をした次第です。
結果、BRCA1(検出されず)・BRCA2(検出されず)でした。
そのため、現在わかる範囲での乳癌の原因としてホルモン陽性タイプのルミナールBですが、生活習慣と低容量ピルを6年間飲み続けていたことしか思いつきませんでした。
①若年性でもこういった原因があるのでしょうか?
また、抗がん剤治療について主治医より「アンスラ系4クール+タキサン系6ク-ル」だけど、若いしがんばれるから「dose dense」で濃い目の抗がん剤でできる限り短期間でいきたいと考えている。と言われましたが、治療効果に変化はあるのでしょうか?
是非、乳癌専門医のスーパードクターに意見をお伺いしたいです。
宜しく御願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 pT2(45mm), pN1, luminalB(Ki67=70%)ですね

回答

「若年性でもこういった原因があるのでしょうか?」
⇒勿論です。
 「遺伝性」でなければ、通常の乳癌のようない「ホルモン環境が最も強いファクター」だと思います。
 そこには年齢は無関係です。
 
「若いしがんばれるから「dose dense」で濃い目の抗がん剤でできる限り短期間でいきたいと考えている」「治療効果に変化はあるのでしょうか?」
⇒差はあります。
 しかし、「ホルモン受容体陰性」の方がより「差がある」ことも解っています。
 質問者は「ホルモン受容体陽性」なので、「それ程効果的では無い」と思います。
 しかも「副作用が強い」し、場合によっては「輸血」もしなくてはならないかもしれません。
 質問者は「大学病院」でしょうか?
 なかなか一般病院では「この強い副作用で敢えて」行う事は困難だと思います。
 ○dose dense は「ルミナールタイプ」で敢えて行うべきではないように思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

いつもお忙しい中御回答いただき、心より感謝申し上げます。
さて前回、田澤先生からお返事をいただいてから一週間あまり、昨日今後の治療方針の決定ということで某大学病院の乳腺外科へ行ってまいりました。
そこで主治医から、乳腺外科と化学療法部での合同カンファレンスにより以下の方針になったと。
①10/15スタートでアンスラ系4クール+タキサン系4クール、アンスラ系に関してはdosedenceで2週間おきに施行し、ジーラスタをケモ翌日に注射していく。(大学病院の臨床研究対象)
②タキサン系4クールに関してはタキソテールについては3週間おきに4回・タキソールであれば週に1回を12回
③リンパ節転移3個だが化学療法終了後25回照射で放射線治療を左乳房全摘出した患部と左鎖骨周囲に照射していく。
以上のことから、当初の治療方針からガラッと変わったのもあり、かなりショックでしたが通院に五分とかからないことや、家族の後押しもあり承諾しました。
田澤先生のアドバイスもあり、タキサン系の際にはホルモン治療も併用できると他のドクターから御指導いただいた旨を説明しましたが、『たぶんうちの大学では前例がないけど聞いてみます』と同年齢の女医さんが答えてくれました。
上記を踏まえ、妊娠希望もあるので9月初めと10月はじめに受精卵の凍結をしてから抗がん剤治療→放射線治療開始にすることにしました。その後は3ヶ月ほどインターバルをおいて受精卵を戻して妊娠を経てからホルモン治療開始の予定になりそうでうす。
なんだか治療がどんどん変わって不信感も募りますが病理結果ゆえしかたないのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「dose dense」は、やはり「大学病院」でしたね。
 そもそも「効果が不確定な」ルミナールタイプに「dose dense」をすることは、どうなのでしょうか?
 前回も回答したように、「輸血の可能性もある (担当医から話をされていますよね?)」とすると、私には「本来の補助療法の主旨とは離れてしまう」危惧をもってしまいます。
 せめて「ホルモン受容体陰性」に対象を絞るべきだと思うのですが…
♯逆にホルモン受容体陽性でも効果があるのか?」みたいな目的で行っているかもしれませんが(患者さんに対する利益という意味では、正しいのでしょうか?)
 大学病院は「臨床研究」対象が欲しいのでしょうが…

回答

「妊娠希望もあるので9月初めと10月はじめに受精卵の凍結をしてから抗がん剤治療→放射線治療開始にすることにしました。その後は3ヶ月ほどインターバルをおいて受精卵を戻して妊娠を経てからホルモン治療開始」
⇒この流れでいいと思います。
 
「なんだか治療がどんどん変わって不信感も募りますが病理結果ゆえしかたないのでしょうか?」
⇒「dose dense」を行う理由として「若年」とか「リンパ節転移3個」を根拠としているのかもしれませんが、私には「納得のいく根拠」とは思いません。