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紡錘細胞がん

[管理番号:794]
性別:女性
年齢:46歳
教えてください。困っています。
6月上旬に細胞診でがんと告知されました。左胸に二つ2cm以下のしこりがある多発乳癌。
7月上旬に左乳房全摘手術を受けました。
7月下旬に病理検査の説明を以下の通り受けました。
[病理組織学的診断]
1: Spindle cell carcinoma g1 d1 S0 P0 ly1 v0 n(SLN)0/4 of left breast
2: ER score3b 90%
3: PRG score3b 80%
4 HER2 score2+ 40% 中程度、全周性 equivocal
[組織所見]
①12×9㎜のcancer,結節性ですが、周辺のductal spreadを含めると16×9㎜大。主に多稜形細胞によるscirrhous caであるが、部分的にspindle cellとなり、d因子、f因子、ly因子ともに陽性。
②DCIS。異形を伴うDHが共存している。
主治医から、「1000人に一人の珍しい型のがんです。予後不良。」「補助療法はホルモン剤をすぐに始めましょう」「ハーセプチンはfishで陽性だったら飲みましょう。抗がん剤との併用はしなくてもいい。」「抗がん剤はどうしても飲みたければ飲み薬タイプで」と言われました。
私はものすごく不安で眠れません。
私のがんは本当に紡錘細胞がんなのでしょうか。怖いです。
その割に、主治医の提案してきた補助療法がいい加減なものに感じられて不安です。
主治医は、「うちの病理の先生、紡錘細胞がん好きなんだよね」
とも言ってました。
私は、病理の先生にもっと確認していただけないか、と頼んだのですが、お金の関係と病理の先生の気位が高すぎて、主治医は何も言えない、と言って 行動を起こしません。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 紡錘細胞癌ですね。
 病理所見で「主にscirrhous caであるが、部分的にspindle cellとなり」とあり、全体ではないことがわかります。
 こういう特殊型で言われている「予後が○○」みたいなものはあてにはなりません。
 数が少ないものは「予後不良の症例がピックアップされているだけ」の可能性も十分あるのです。
 それよりもg1というのはグレード1の略のようですし、ERもPgRも高く(HER2はFISHの結果が不明ですが…)大人しい癌のようにも見えます。
 それにpT1c(16mm), pN0, pStage1という早期なのです。

回答

「ハーセプチンはfishで陽性だったら飲みましょう。抗がん剤との併用はしなくてもいい」
⇒これは勘違いです。
 ハーセプチンは「点滴」です。
 しかも「抗がん剤と併用しない」ハーセプチン単剤は全く勧められません。(単剤での有効性は否定されています)
 (FISHが陽性となったら)迷わずに「化学療法+ハーセプチン」とするべきです。
 
「抗がん剤はどうしても飲みたければ飲み薬タイプで」
⇒術後の補助療法としては「経口抗がん剤」は勧められません。
 術後の抗がん剤として唯一適応があるのは「UFTだけ」ですが、これは「生存率向上」を証明できていません。
 また(古典的、点滴抗がん剤であるCMFに対して)非劣勢を証明できませんでした。
 標準治療としては、やはり点滴抗がん剤が推奨され、TCやEC⇒taxaneなどが一般に行われています。
 ただし、質問者の場合には「ホルモン療法単独」で再発率は10%程度と考えられ、(そこに化学療法を追加しても)その『上乗せ効果は4%以下』と考えられます。
 
「私のがんは本当に紡錘細胞がんなのでしょうか」
⇒「早期」だし「大人しいタイプ」だし、「治療方針に影響がない」ことから、「紡錘細胞癌かどうか?」は無意味な議論です。
 質問者は「ホルモン療法の適応」だし、(もしもFISHで陽性ならば)「化学療法+ハーセプチンを追加する」という『ブレの無い、術後療法をすれば心配無い』状況だと思います。
 
○紡錘細胞癌かどうかをどうしても追求したいのであれば、「病理のセカンドオピニオン」を行っている病院はあります。○研○明もやっていたようですが…