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今週のコラム142回目 サブタイプの不一致(針生検と手術標本での)

みなさん。お久しぶりです。田澤です。

先ほど、「お知らせ」に載せたようにようやく乳がんプラザが一部復旧して、この「今週のコラム」を掲載することができました!

異常な暑さ(東京で40℃!)が続いていますが、体調管理お気をつけください。

 

サブタイプの不一致(針生検と手術標本での)

『Q&A 2018年07月17日2 検査結果について』を回答していて、これは「今週のコラム」すべきだ! と感じました。

振り返ると、この「不一致」は今まで幾度となくQandAに登場し、その都度回答してきました。

いわば、その「まとめ」となります。

 

「ER, PgR, HER2, Ki67」をまず、「どの検査方法を(優先して)評価すべきか?」から理解しなくてはいけません。

評価法には

・IHC(immunohistochemistry)免疫組織染色

上記全て(ER, PgR, HER2, Ki67)が対象

上記蛋白に対する抗体を用いて(抗原抗体反応)検出

この蛋白が問題であり、「ホルマリン固定やパラフィン包埋」などにモタモタしていると変性してしまう可能性

 

・ISH(in situ hybridization)

HER2だけで行われている。

染色体上の遺伝子(DNA)のコピー数を検出する。

♯FISHとDISHの違いは『Q&A 2018年07月13日15 HER2陽性診断について』

の中で下記のようにコメントしています。

→どちらも「HER2遺伝子のコピー数を直接計測する」ISH法(in situ hybridization)です。

違いはFISHはF(fluorescence)蛍光標識したHER2のDNAプローブを用いて「蛍光シグナル」として描出するのに対してDISHはD(Dual color)2種類の酵素で標識して「通常の光学顕微鏡下で観察」するものです。

つまりHER2遺伝子のコピー数を検出する際に用いる標識の仕方なのです。

♯FISH方は染色「手順が煩雑」で(光学顕微鏡で見れないため)「病理組織と対比できない」などがあるが、現在最も一般的に用いられている。

 

 

・OncotypeDX

上記(ER, PgR, HER2, Ki67)を含む21遺伝子が対象

遺伝子(DNA)から転写されたm-RNAを検出

 

まず、上記のようにDNA→mRNA→蛋白という「転写(DNA→RNA)」と「翻訳(RNA→蛋白)」が行われますが、最終的に「遺伝子情報から(特定の)蛋白が作られる=遺伝子の発現」は、より下流である蛋白で見るのがいいのですが、(逆に)下流に行けば行くほど不安定(壊される)という問題もはらんでいます。

 

実際の考え方

 

1.ER,PgRについて

基本的に免染で見るしかありません(FISHはありませんが、OncotypeDXすると、転写レベルが数値化されます)

免染結果が不一致の場合

Case1 CNBで陽性→手術で陰性

この場合には「手術標本での固定不良(時々あり)」を疑います。

つまり、「陽性」と考えます。

Case2 CNBで陰性→手術で陽性

この場合には「CNB標本の固定が悪かった?(あまりない)」か「heterogeneity(病変の不均一性)の可能性(こちらの方がありそう)」となりますが、いずれ、病変の大部分(手術標本)で陽性なのだから「陽性」です。

 

♯基本的に固定不良となる可能性は「手術標本>>CNB標本」です。

・手術標本は(手術中なので)標本が(手術が終わるまで)「置き去り」にされるわけです。

・また、手術標本は大きい(特に全摘)ので、固定液の量が相対的に少なくなり均一に処理されない可能性を常にはらんでいるのです。

・(それに対し)CNB標本は「採取したら(時間差なく)その場で専用の容器に入れられるし、(小さいから)十分に均一な固定状態となるのです。

 

2.HER2について

これは(ER,PgRとは真逆に)FISHも有効に使うべきです。

原則として『不一致なら(両者とも)FISHすべきと』なります。

♯両者のFISHが不一致の場合には「病変のheterogeneity」と考えるべきです。

 

FISHが不一致の場合

Case1 CNBで陽性→手術で陰性

この場合、病変全体で考えると「HER2陽性<<<<HER2陰性」となります。

「膨大なコスト」のわりに「期待される効果は弱い」と考えるべきでしょう。

ただし、「僅かな効果でも!」と考える患者さんには適応はあります。(私は積極的には勧めません)

Case2 CNBで陰性→手術で陽性

この場合には病変の大部分がHER2陽性なのだから、当然「抗HER2療法するべき」となります。

 

3.Ki67(Mib1)について

これは免染しかありません。(OncotypeDXでは発現を定量化していますが、その値は公表されません)

病変全体(手術標本)で見るべきです。